遠ざかる登板…現実になったサイ・ヤング賞争いからの「脱落」
ドジャース・大谷翔平投手は左膝の不調を訴え、すでに3週間以上にわたり先発登板から遠ざかっている。加えてオールスター以降はDHとしての打撃に陰りも見えている。米国内でもメディアは連日、大谷の“変調”を伝えている。
ESPNのMLBインサイダー、ジェフ・パッサン氏が「スポーツセンター」に出演。大谷の回復について、球団と本人がとっている慎重な姿勢について語った。パッサン氏はまず、2週間前のオールスターブレーク中にデーブ・ロバーツ監督から聞いたコメントを紹介した。
「これがポストシーズンの試合なら、大谷翔平はマウンドに立っていたはずだ」
その上でパッサン氏はこう指摘した。「ドジャースという組織そのものと、球団が怪我の管理にどう取り組んでいるかを、独自の視点で捉える必要がある。例えば、ブレイク・スネルはタイガースのタリク・スクーバルと同じ手術を受けたにもかかわらず、今年は一度もマウンドに立っていない。一方、スクーバルは1か月の欠場にとどまった。エドウィン・ディアスも肘の手術からの回復に時間をかけ続けている」。
さらに「ドジャースはプレーオフ進出がすでに決まっているため、怪我には慎重になるだろう。彼らが本当に望んでいるのは9月中旬までに選手を万全の状態に戻し、10月に3年連続のワールドシリーズ制覇を目指す準備を整えることだけだ」 と続けた。
ドジャースも大谷も、10月のポストシーズンでの成功を最優先しているため、回復に時間をかけるつもりなのは明らかだ。とはいえ、この怪我をめぐる議論はナ・リーグのサイ・ヤング賞やMVP争いに与える影響へと移っている。
少ない投球回…専門家の見解「CY賞の候補から外れることになる」
MLBネットワークの「Foul Territory」で司会を務めるトリシア・ウィテカー氏は、共同司会のトッド・フレイジャー氏(元メッツなど)とケビン・ピラー氏(元ブルージェイズなど)に、「この怪我によって、大谷はサイ・ヤング賞の候補から外れることになるか」と尋ねた。
フレージャー氏の意見は以下の通りだ。
「そう思うよ、間違いなくそうだ。投げるしかないんだ。投手として結果を出さなきゃいけない。早いうちにマウンドに戻らなければ、その座は他の誰かに渡ってしまうと思う。正直なところ、今の彼にはそれほど重要ではないと思う。彼は100%の健康状態を取り戻し、もう一度ワールドシリーズを制覇したいだけだろう。でも、ファンとしてわがままを言えば、引き続き活躍し、サイ・ヤング賞を狙ってほしいと思う。しかし、結局のところ100%の健康状態ではないし、そのせいでサイ・ヤング賞の争いから脱落することになる」
ピラー氏も次のように語った。
「残念ながら、間違いなくサイ・ヤング賞争いから脱落することになると思う。成し遂げたら素晴らしい偉業だっただろうが、現実には受賞に必要な投球回数を積み上げられない。シーズン序盤にはサイ・ヤング賞のことを考えていたと思うが、今は気にしていないだろう。ワールドシリーズ連覇を経験し、4度のMVP、2度の本塁打王に新人王など数々の功績を考えると、サイ・ヤング賞こそ本当に狙っていた最後のタイトルだったと思う。
今年の健康状態を巡る一連の出来事については、少なからず失望しているはずだ。しかし、キャリアを通じて成し遂げてきた、誰も成し遂げたことのない数々の偉業を考えると、いずれは体に負担がかかるのは避けられない……むしろ、もっと怪我をしていないことの方が驚きだ」
米メディア「The Athletic」の敏腕記者ケン・ローゼンタール氏も、膝の負傷により、大谷が今季のサイ・ヤング賞争いから脱落することになると語る。「単純に投球回が足りない。率直に言って、健康でいたとしても、投球回数は確保できなかっただろうね。6人ローテーションで登板し、余分な休息を取っていたため、すでに後れを取っていた」。
さらに同氏は、大谷の投球回が85回2/3で、ナ・リーグのイニング数ランキングでトップ100から脱落した一方、ブルワーズの24歳天才投手、ジェイコブ・ミジオロウスキー(防御率1.58、 WHIP0.75、120回で185奪三振)やフィリーズのクリストファー・サンチェス投手(防御率2.73、WHIP1.20、138回2/3で157奪三振)といった有力な候補者が台頭していることに触れ、さらに一歩踏み込んだ。
「大谷が今年残りの期間、あまり登板しないと仮定すれば、カブスのピート・クロウ=アームストロング外野手(愛称はPCA)のような選手がMVPを争うことになるかもしれない。大谷がこれまで通りの投球を続ければ間違いなくMVPに輝くだろうが、今のところ情勢は混迷を極めている」
24歳のPCA、23歳のウッド…MVP争いでも台頭する若手
同氏は、大谷とPCAのWAR(Wins Above Replacement:代替選手を上回る勝利数)を比較。24歳のPCAが6.5を記録し、大谷を上回ってナ・リーグ首位に立っている。さらに大谷よりも高いOPSを記録しており、センターでの卓越した守備でも知られ、現時点で野手全体でトップとなる20のOOA(平均を上回るアウト数)を記録していることも伝えている。
元ツインズのトレバー・プルーフ氏も、Jomboy Mediaの「Baseball Today with Chris Rose」で、PCAがナ・リーグMVP争いで大谷に挑むだろうという見解に同意した。
「今年はPCAが大谷に挑むと思う。大谷は投手としても多くの成果を上げているが、打撃で再び調子を上げなければ、PCAの打撃と守備が彼を上回る可能性がある」
プルーフ氏はさらにOPS、四球、得点でナ・リーグ首位(30本塁打で同リーグ3位)に立つナショナルズの23歳、ジェームズ・ウッド外野手も候補に名を連ねると付け加えた。
左膝の不調から調子を落とした大谷の現状は、短縮シーズンとなった2020年を思い起こす。その年、大谷が残した成績は以下の通りだった。
投手:2試合、投球回数1回2/3、0勝1敗、防御率37.80
打者:44試合、153打数29安打、7本塁打、24打点、打率.190
この年、投手としては2018年オフに受けた1度目のトミー・ジョン手術のリハビリ過程だったが、同時に左膝の不調を抱えながら打者出場を続けた。そして、オフを迎えると同時に左膝の手術を受け、翌2021年の投打二刀流での大活躍(9勝&46本塁打)に繋げた。左膝の不調は、サイ・ヤング賞どころかMVPの危機にも繋がっている。
(笹田大介 / Daisuke Sasada)