「さすが大阪桐蔭出身だよ」 コーチも唸るオリ森陽樹の凄み、まだ近寄れぬ山下舜平大との“距離感”

2軍で鍛錬を重ねるオリックス・森陽樹【写真:橋本健吾】2軍で鍛錬を重ねるオリックス・森陽樹【写真:橋本健吾】

オリックスのドラフト2位・森陽樹投手の現在地

 一つ一つの課題を明確にし、1軍への成長曲線を描いていく。真夏の太陽が照りつける中、マウンドに上がり打者と対峙する。150キロの直球を弾き返されても焦りはない。「いかにバッターと勝負して、自分が持ってる力がどれだけ通用するかをテーマとしてやっています」。オリックスのドラフト2位・森陽樹投手は淡々と口にし、自らを客観的に分析している。

 最速153キロの直球を武器に鳴り物入りでプロの世界へ飛び込んだが、7月31日時点で2軍での成績は4試合に登板し1勝0敗、防御率7.50(練習試合は除く)。数字だけを見れば、プロの高い壁に無残に跳ね返されているように映るかもしれない。しかし、19歳の表情に悲壮感は微塵もなかった。

「まだ1年目なので、結果とか何点取られるとか、気にする立場じゃないのかなと。求めているのは、ストレートでいかにバッターを押せるか。自分の持ち味である角度があって伸びのあるストレートで、どれだけバッターを押せるか、空振りを取れるか。そういうのを一番追求していますね」

 アマチュアとプロの差も感じ取っている。威力ある高めの直球は空振りやファウルを奪えるが、低めになると相手打者はバットを振ってくれない。「低めの制球力という部分がまだ足りていない。アウトローに決め切る真っ直ぐ、それがまだ足りない。球数が増えたり、四球を出す原因なので改善しないといけない」。

平井2軍投手コーチ「さすが大阪桐蔭出身だよ」

大阪桐蔭からドラフト2位で入団した森陽樹【写真:木村竜也】大阪桐蔭からドラフト2位で入団した森陽樹【写真:木村竜也】

 全国からエリートが集う名門・大阪桐蔭高校出身。190センチの長身から投げ下ろす150キロを超える直球が最大の武器だ。プロの世界に足を踏み入れ、最初に打ちのめされたのは、打者のスイングスピードでもパワーでもなかった。それは、マウンドでの“空気感”だという。

「高校とかだったら全員が声を出して、自分がうまくいってない時とか、野手が『頑張れ』とかベンチからも色んな声をかけてくれるんですけど。プロになったらやっぱり静かっていうか、本当にマウンドは孤独なところ。個人、個人で結果を出していかないといけないのがプロ野球だなと感じます」

 壁にぶつかりながらも、森の心は折れていない。そこには、明確な目標と強力なライバルたちの存在がある。同期の藤川敦也(ドラフト1位)、佐藤龍月(同3位)も同様に2軍で登板を重ねている。“高卒トリオ”の存在に「どうせやるんだったら同期入団なんで、負けたくない気持ちは強いです。自分がその3人の中でしっかり上回れる投手になりたい。やっぱり最終的には勝ちたい」と、力を込める。

 チームは故障者が相次ぎ、特に投手陣は苦しい状況が続いている。週に2度、ブルペンデーを採用することもあり、2軍で結果を残し続ければ、今季中の1軍登板も現実味を帯びてくる。

 現役時代は「鉄腕」と称された平井正史2軍投手コーチも切磋琢磨する3人を評価。森については「体が強いし出力がある。それをどうやってマウンドで表現するかはこれから。1球だけ160キロを投げることができてもプロでは通用しない。1年間通して投げられる体力も技術も必要。高卒1年目で“投げられる、練習できる”ことをクリアできているのは素晴らしい。さすが大阪桐蔭出身だよ」と目を細める。

■憧れの山下舜平大はトミー・ジョン手術を受け2軍でリハビリ中も…

 2軍には途方もなく大きな背中がある。憧れの先輩、山下舜平大だ。入団後に「自分が求める、超えたい投手。追いつきたい」と、目標に掲げた先輩右腕は5月にトミー・ジョン手術(TJ)を受け、2軍施設でリハビリ中。すぐにでも教えを乞いたいのではないか――。そう尋ねると、意外なほど冷静に首を横に振った。

「フォームの事とかいっぱい聞きたいことがあるんですけど、今はまだ違うかなと。舜平大さんとか長く活躍する選手ほど、準備を入念にやっているので、今はそういう姿勢を観察しながら、自分で意識して練習に取り組んでいます。アドバイスをもらえる“土俵”に立つため、この1年はやりたい。いつか自主トレを一緒にやってみたいと思っているので、そういう機会があれば聞いてみたいです」

2軍ではここまで4試合に登板し1勝をあげている【写真:橋本健吾】2軍ではここまで4試合に登板し1勝をあげている【写真:橋本健吾】

 今はまだ、そのレベルにない。だからこそ、自分の力で這い上がり、いつか堂々と「同じ土俵」に立ってみせる。焦らず、腐らず、マウンドで静かに牙を研ぐ19歳。「この1年でどれだけ成長できるか。高卒らしく、がむしゃらに取り組んでいきたい」。未完の大器は、プロ野球界を席巻する存在へ覚醒するため、焦ることなく着実に、自分だけの成長曲線を描いていく。

(橋本健吾 / Kengo Hashimoto)

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