“14年間不在”のタイトルを浦田俊輔は獲れるか? 走塁の達人・鈴木尚広コーチが託す思い「巨人にもいるぞと」

2年目ながら盗塁王を争っている巨人・浦田俊輔【写真:加治屋友輝】2年目ながら盗塁王を争っている巨人・浦田俊輔【写真:加治屋友輝】

通算228盗塁の鈴木コーチが語る浦田俊輔

 巨人の2年目、浦田俊輔内野手がブレークしている。昨年10月に股関節の手術を受けた吉川尚輝内野手に代わり開幕スタメンの座を掴むと、広い守備範囲とスピードを生かしたプレーで、瞬く間にレギュラーに定着。特に盗塁数ではヤクルト・岩田幸宏外野手とリーグトップを争っており、巨人の鈴木尚広2軍外野守備兼走塁コーチは「持ち味が十分に生きている」と目尻を下げた。

 4日に行われたファーム・リーグ、DeNA戦後のジャイアンツタウンスタジアムの通路。着替えを終えて帰路に就く鈴木コーチに「浦田選手の盗塁についてお話しを聞かせていただいてもいいですか?」と声をかけると、「あ、今日も盗塁決めていましたね」と、まだ1軍のナイターの途中だったが、しっかりとチェックしていた。

 同日時点で27盗塁。岩田も中日戦で28個目をマークしたため、1差は変わらなかったが、現在のペースでいけば「30」は目前。巨人の選手で“大台”到達となれば、2008年の鈴木コーチ以来となる。

 浦田は九産大からドラフト2位で入団。ルーキーイヤーの昨年、イースタン・リーグでは2位タイの20盗塁として、非凡なセンスを発揮していた。

 同年も2軍で指導していた鈴木コーチは「1年目から思い切りの良さをもって、とにかくスタートを切る、という姿勢を持っていた。これが今のいい結果につながっていると思うので、その辺はすごく評価できますよね。ひるまないというか、果敢に攻めるというか」。

 鈴木コーチといえば現役時代に12年連続2桁など、通算228盗塁を誇る。そのうち代走で132個という驚異的な数字を記録した。巨人を代表する「走のスペシャリスト」は23歳の走塁技術をどのように見ているのか。タイトル獲得へ向けて、必要な要素を語った。

心構えは「迷いを断ち切って、それを信じた気持ちでいけるかどうか」

現役時代の巨人・鈴木尚広2軍外野守備兼走塁コーチ【写真提供:産経新聞社】現役時代の巨人・鈴木尚広2軍外野守備兼走塁コーチ【写真提供:産経新聞社】

 後半戦に入り、場面によってはひとつの盗塁の成否が試合の勝敗、さらには順位争いにも影響する可能性も出てくる。鈴木コーチは「これからいろいろと“怖さ”も知ってくると思いますので、その怖さの中で彼の持ち味は消さないようにしてほしいですね」と願う。

 盗塁には瞬時の判断、反応が求められるだけに、重圧がかかる場面では難易度は増す。「この時期、優勝がかかってくる大事な試合というものが毎日続きますので、そういったところでも、今の自分の信条というかね、強みを出してくれることを望んではいます」。

 今や出塁すれば、相手バッテリーは警戒度を高める存在。張り詰める緊張感のなか、思い切りのよいスタートが求められる。

「いかに走れる材料を見つけられるか、だと思います」

 鈴木コーチも代走で出場することは、盗塁することを意味していた。相手と駆け引きしながらも「迷いを断ち切って、それを信じた気持ちでいけるかどうかですね」。スペシャリストの境地を明かす。

「迷いとか、若干の疑問という心理が働いてしまうと動けなくなる。僕もそういう経験はあるので、とにかく準備を大事にする。そこをクリアにした状態で構えるのと、準備しないで構えるのでは相当な差がつくのではないかと思います。今は、そういったところができていると思います。(準備が)生きているんじゃないですか。盗塁はヨーイ、ドンだけではないので」

巨人の盗塁王は2011年の藤村大介が“最後”

 鈴木コーチの視線は浦田のリード幅にも向けられた。極端に広いわけではないが「1軍に行ってすごく勉強しているという話も聞いていますし、ピッチャーによって幅も変えているでしょうから、そういったアレンジ力はついていると思います。リードの幅が大きい、イコール成功する、というわけでもない世界でもあるので。彼の持ち味が生きる幅を求めてやってもらいたいですね」。

2年目でレギュラーに定着。飛躍の年に【写真:加治屋友輝】2年目でレギュラーに定着。飛躍の年に【写真:加治屋友輝】

 巨人の盗塁王は2011年の藤村大介(28個)を最後に、14年間遠ざかっている。2年目の浦田がタイトル獲得となれば、チームへ大きな効果をもたらす。

「またそういう選手をね、どんどん上に押し上げたい。今もファームのコーチという立場で、そういう選手を育てたいと思いますし、浦田がそういう背中を見せてくれると、僕たちも若い選手も身近に感じて、よりいい意味でモチベーションにもつながると思いますので、もう獲ってほしいです、はい。獲れる時に獲らないといけないので、獲れるんだったらもう獲ってほしいですよ」。笑顔で繰り返した。

 もはや走るだけではない。打率.275を残し、広い守備範囲で二塁だけではなく遊撃、三塁もこなすユーティリティ性も光る。大型補強で大砲、エース級を獲得する印象が強い巨人で、躍動する171センチの小兵の存在感は際立っている。

「ジャイアンツにもそういう選手がいるぞっていうところをね、どんどん見せてほしいなと思っています」

 鈴木コーチが“愛弟子”に思いを託す。チームのため、ファンのために、浦田はまだまだ走り続ける。

(湯浅大 / Dai Yuasa)

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