巨人・堀田賢慎投手が抜群の安定感を見せている。7日のヤクルト戦(東京ドーム)、1点ビハインドの8回からマウンドへ。先頭の増田を三ゴロ、沢井を中飛、古賀を投ゴロと、わずか9球でテンポ良く打者3人を打ち取った。
これで6月9日の楽天戦から数えて15試合連続無失点。防御率は驚異の0.37だ。抜群の安定感でブルペンを支えるキーマンへと変貌を遂げたが、ここに至るまでのプロ生活は、常に挫折と焦燥感の隣り合わせだった。
青森山田高から2019年ドラフト1位で入団したものの、直後に右肘のトミー・ジョン手術を受け、育成選手への降格も経験。支配下に復帰してからも目立った結果を残せず、1軍と2軍を行き来する日々が続いた。「ドラ1」という重圧を背負い続けて迎えた今シーズン、堀田は自らに強い覚悟を突きつけていた。
悲壮な覚悟で挑む堀田がオフに向かったのは、リリーフエース・大勢のもとだった。自主トレをともにする中で堀田が学んだのは、大勢が徹底しているコンディショニングと試合への準備術だった。
実はそれまでの堀田には、「投げる前は疲れないように、動かしすぎないように」と無意識にセーブする癖があった。しかし、大勢のメニューを取り入れたことでその概念は180度覆される。
「今年からは、もう体が温まるくらいやって、ブルペンに待機するようにしています」
毎日同じルーティンを徹底することで、「どこが硬い」「どこがちょっと張っているな」という微細な身体の変化を感じ取れるようになった。試合前にトレーナーのマッサージを受けたり自分に必要なケアを施すことで、コンディションに不安のない状態で試合に臨めるようになったのだ。
「期待しすぎないでください」内海コーチへ言い放った脱力マインド
メンタル面での劇的な進化も、思わずクスッと笑ってしまうような割り切りから生まれていた。
以前の堀田は「抑えたい」という気持ちが強すぎるあまり、マウンド上で力んでボールが抜けたり、引っ掛けたりして自滅するパターンが多かったという。そこで今年から導入したのが、「自分自身に期待しすぎない」という脱力思考。内海哲也投手コーチに対し、自らこう言っているという。
「いつも内海さんには『期待しすぎないでください』って自分から言って」。コーチからの期待というプレッシャーを自分から和らげるかのような、ユーモアあふれるアプローチだ。
「自分も自分自身に期待しすぎないように。もちろん3者凡退とか3者三振で取りたいとか、やっぱり欲は投げてるうちに出てきてしまうので。その欲をマウンドではひたすら抑えて、“最低でいいから”っていう最低限のことを思い浮かべながらマウンドに立っています」
あえて完璧を目指さず、「最低限でいい」と割り切る。内海コーチへの発言に象徴されるこの脱力こそが、ピンチでも動じない鉄の心臓を作り上げた。
「今年ダメならクビだ」と自分を極限まで追い詰めて始まったシーズン。大勢に学んだ準備術で自分の身体をコントロールし、「中学、高校で投手を始めてから何も変わっていない」というチェンジアップを配球で生かし、内海コーチに「期待しすぎないで」と言い放つ脱力メンタルを手に入れた。
「僕が最初2軍スタートだった時も、(井上)温大だったり竹丸(和幸)だったり、西舘(勇陽)が1軍で投げていた。それがすごい刺激になったんで。刺激になって頑張ることができたからこそ、今こうやって1軍で投げられている」
悲壮感を圧倒的な成績と心のゆとりへと変えた背番号91。自分に期待しすぎず、目の前の1球に全力を注ぐ遅咲きのドラ1右腕が、巨人のブルペンで頼もしい光を放っている。