横浜・織田翔希に芽生えた“ゆとり” 4度目の甲子園で初めての表情…記者が見た「大怪物」への道のり

昨夏Vの沖縄尚学相手に好投した横浜・織田翔希、マウンドを降りる際には笑顔もあった【写真:加治屋友輝】昨夏Vの沖縄尚学相手に好投した横浜・織田翔希、マウンドを降りる際には笑顔もあった【写真:加治屋友輝】

明らかに増えた笑顔…甲子園自己最速154キロ

 大きな変化に驚かされた。第108回全国高校野球選手権は大会第6日の10日、甲子園球場で1、2回戦の4試合が行われ、第2試合で横浜(神奈川)が連覇を狙った沖縄尚学に7-2で快勝して初戦を突破。プロ注目の157キロ右腕・織田翔希投手(3年)は8回2/3を2失点に抑え、12三振を奪った。最速は甲子園自己最速の154キロを計測。最後の夏に確かな成長を示した中、記者が気になったのは以前より豊かになった表情だった。

「初戦を勝ち切ることができて凄くうれしいです。自分の投球内容としては良くなかったところがあると思うんですけど、悪いなりに抑えることができました。相手は昨年の王者ですし、素晴らしいチームに勝つことができて凄くうれしい。もう最後の夏ですし、しっかりとこのチームを最後の最後まで、勝たせられるような投球をしたいと思います」

 お立ち台でも、その後の囲み取材でも、引き締まった表情を時折崩しながらコメント。普段のキリッとした精悍な顔つきも格好いいが、ニコッと頬を緩める表情もチャーミングだ。マウンド上でも何度も笑顔を見せ、勝負を心から楽しんでいる様子が伝わってきた。

甲子園の大観衆を味方につけ力投した【写真:加治屋友輝】甲子園の大観衆を味方につけ力投した【写真:加治屋友輝】

 早くから横浜の先輩である松坂大輔氏と比較され「松坂2世」などと高い期待を受けてきた、全国屈指の強豪校のエース。村田浩明監督からは“怪物・松坂”を超える“大怪物”になることを命じられている中、そんなプレッシャーさえ楽しんでいるように見える。

 今までもしっかりと受け答えするが、表情はいつも硬かった。初めて単独で話を聞いたのは、昨春のセンバツ甲子園の決勝戦前日。織田からすれば、面識のない記者からの質問に身構えた部分があったのかもしれない。「球速にこだわりはありません。それよりしっかり抑えること、自分の球をしっかり投げることだけ考えています」。そう話す表情はこわばっているように感じた。

 当時は2年生。上級生がいる手前、ニコニコするのに抵抗感があったのではないかと思う。以降もマウンドではポーカーフェイス。取材の際も笑っている姿を見ることはほとんどなかった。最上級生となって迎えた今春のセンバツ甲子園は初戦敗退。負けた責任を背負い込み、笑顔を見せることはなかった。

末吉との投げ合い「楽しかったです」

 迎えた最後の夏。昨年の健大高崎・石垣元気投手(現ロッテ)らが記録してきた甲子園歴代最速155キロにあと1キロと迫る154キロをマークしたため、当然のように球速の質問が続出した。「球速よりもしっかりと空振りを取ることができたので、そっちのほうが嬉しい。特に球速にこだわることはなかった。球速は見ないです」。球速に関心を示さないのは相変わらずだが、その直後にニコリとする姿は、今までとは、まるで別人だ。

 試合中も笑顔が多かったことについては「野手が点を取ってくれて、安心して投げることができましたし、投げていて凄く楽しかったです」と話してまた笑顔に。4季連続での出場でもあり「景色も、マウンドの感触も慣れていますし、過去3回の経験のおかげだと思う。いい意味で精神的に余裕が出てきている部分はあります」という説明は本音だろう。

 意識し合う沖縄尚学・末吉良丞投手(3年)との投げ合いも、笑顔が増えた一因だ。「昨年の優勝投手ですし、自分も学ぶところもありました。お互い投げていて楽しかったです」。試合後には歩み寄って「ありがとう」と声をかけると、末吉からも「ありがとう。頑張れよ」とエールを送られたという。

織田は沖縄尚学のエース末吉と健闘を讃えあった【写真:加治屋友輝】織田は沖縄尚学のエース末吉と健闘を讃えあった【写真:加治屋友輝】

 甲子園では初めて外野の守備にも就いた。9回2死から右翼の守備に回り、最後は中飛で試合終了。右中間への飛球だったため、カバーに入るため中堅方向へ動いており、外野の最深部から整列に加わったため、少しバテたような表情も見せた。「甲子園のあそこまで行けて、直線で走って戻って、景色も見ながら帰れたので良かったです」。マウンドから整列に向かっていた今までとの違いに、少しおどけるような表情を見せる余裕も出ている。

 喜怒哀楽を素直に出し、楽しんでプレーする。これが本来の織田なのかもしれない。今夏の神奈川大会で最速157キロをマークした世代No.1の剛腕は、心身ともに大きくなったように見える。甲子園歴代最速の155キロ更新にも「別にですね」と最後まで興味を示さなかった。頭にあるのは、自分が3年生としてチームを引っ張り、優勝することだけなのだろう。この夏の織田には、とんでもないことを起こしてくれそうな雰囲気がある。

(尾辻剛 / Go Otsuji)

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