広島に“帰ってきた”大道温貴「やっぱり懐かしい」 新天地で戸惑いも…現ドラ移籍のヤクルトで目指す再起

今季からヤクルトでプレーする大道温貴【写真提供:産経新聞社】今季からヤクルトでプレーする大道温貴【写真提供:産経新聞社】

由宇に現れた元広島の大道温貴、昨オフに現役ドラフトでヤクルト移籍

 突然現れた大道温貴を思わず呼び止めた。広島2軍はファーム交流戦でヤクルトと3連戦。初戦となった4日、2軍の本拠地・由宇球場のバックネット裏にある管理棟から、“赤”ではない練習着を着た右腕が駆け出してきた。思わぬ“再会”に驚きつつ、足を止めてくれた大道に話を聞いた。

 大道は2020年ドラフト3位で広島に入団。プロ1年目から1軍で24試合に登板し、4勝4敗3ホールドを記録した。3年目の2023年には48試合に登板し、3勝1敗10ホールドで防御率2.72。リリーフとして“居場所”を確立したかに見えた。しかし、翌年以降は低迷。2025年オフ、現役ドラフトでヤクルトに移籍となった。

 新天地で迎えた春季キャンプ。怪我の影響でリハビリ組でスタートとなった大道は、広島とは違うチームの雰囲気を感じたという。「ヤクルトに来て驚いたのは、選手の準備の仕方。カープの選手に比べて、ヤクルトの選手はめちゃくちゃ(準備に)時間を取っていたんです」。移籍したからこそ知った発見だった。

「もちろん選手によって差はありますが、キャンプにしても試合にしても、ヤクルトの選手は、2時間から3時間くらいは準備の時間をとっている印象です。初めてのキャンプでも驚きました。みんな早くから準備するんだなと」

 リリーフを務めることが多かった大道は、広島で登板を見越した準備の“リズム”を確立していた。これまでとは違うサイクルで動くヤクルトの選手を目にし、少しずつ新天地の空気に慣れていった。

鍛錬を重ねた由宇より暑かった戸田「ほぼ無風です」

 ただ、ヤクルト加入後は思うような成績を残せていない。1軍登板は1試合のみ。5月28日、神宮球場で行われた西武との交流戦で、移籍後初登板を果たした。3点をリードされた8回から2番手で登板。この回を無失点に抑えたものの、回またぎとなった9回に5失点(自責3)。6月1日に登録抹消となった。

ヤクルト移籍後、1軍登板は1試合のみ。2軍で調整が続く【写真:加治屋友輝】ヤクルト移籍後、1軍登板は1試合のみ。2軍で調整が続く【写真:加治屋友輝】

 そこからファームでの調整が続く。本人にとっては不本意かもしれないが、今季からファームが1リーグ3地区となったことで、昨年まではなかった広島とヤクルトのカードが実現した。

「やっぱり懐かしいですね」

 久しぶりに戻ってきた“原点”といえる場所で、大道は思わず声を漏らした。山口県にある由宇球場は、広島若手の育成拠点。自然に囲まれる一方、夏場は日差しを遮るものがないため、とにかく暑い。試合開始は通常なら12時半だが、暑さを考慮し、今季は6月下旬から10時半に変更された。

 この日も35度を超える暑さだったが、大道は「たぶん戸田(ヤクルト2軍本拠地)のほうが暑いですよ」と苦にしていない様子。「こっちは自然に囲まれている感じがありますが、向こうは日差しだけが入ってくる感じで(苦笑)。しかもほぼ無風です」と、笑みを浮かべながらヤクルトでの日常を明かした。

 広島での“ラストイヤー”となった2025年、春季キャンプ中に大道と話す機会があった。短い時間ではあったが、その日、右腕のトレードマークでもある笑顔は影を潜めていた。

凱旋登板は1回1失点も…大道の笑顔に感じた期待

 さらなる飛躍を期した2024年は4試合の登板に終わり、防御率は10.38。再起をかけて臨んだキャンプだった。このとき、大道は「簡単なことじゃないけど、やっぱり1軍の戦力になりたい。でも今は1軍の映像は見ないようにしています。自分のやるべきことに集中していきたい」と意気込みを語った。

 表情を崩すことなく言葉を紡ぐ右腕の姿が、印象に残ったのを覚えている。復活が期待された2025年、1軍での登板はキャリア最低の1試合に終わり、オフに広島から生活拠点を移した。

 約1年半ぶりに会った大道は“笑顔”だった。右腕が登場曲として使用しているB’zの「ultra soul」に話を向けると、「神宮で1回流れて、ファンの方も盛り上がってくれた感じだったのですが、僕がピッチングで盛り下げたので、プラマイゼロですね」と、表情を緩ませながら、大切にしている登板儀式について話してくれた。

2025年春季キャンプ、広島時代の大道温貴(右)【写真:小林靖】2025年春季キャンプ、広島時代の大道温貴(右)【写真:小林靖】

 4日の試合、大道の登板はなかったが、試合後には待っていた広島ファンの呼びかけに足を止めると、自ら由宇球場のコンコースまで上がり、サインに応え続けた。試合前はもちろん、球場をあとにする際にも、お世話になった広島の先輩や球団関係者に挨拶をして回っていた。大道“らしい”空気感を醸し出していた。

 翌日5日の試合では待望の凱旋登板。同点の8回にマウンドへ上がり、結果は1回2安打1失点で負け投手となった。ただ“帰ってきた”右腕を、広島ファンは温かい拍手で迎えた。その光景は、きっと大道の胸にも焼きついたはずだ。

 由宇球場での登板以降、大道は無失点登板を続けている。見る者を魅了する躍動感あふれる投球フォームでの快投をもう一度――。背番号は「12」から「46」に変わり、ユニホームの色も変わったが、復活を願わずにはいられない。

(真田一平 / Ippei Sanada)

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