松井秀喜氏に注がれるNYの歓声 愛され続ける「55」…気になる“ユニホーム”の行方

「オールドタイマーズ・デー」に参加して背番号「55」のユニホームを着用する松井秀喜氏【写真:佐藤直子】「オールドタイマーズ・デー」に参加して背番号「55」のユニホームを着用する松井秀喜氏【写真:佐藤直子】

松井秀喜氏が日本時間9日、ヤンキースの「オールドタイマーズ・デー」に参加

 8月2週目の週末、メジャーでは球団史を彩ったOBたちを称える「レジェンズ・ウィークエンド」を開催する球団が多かった。マリナーズではイチロー氏が本塁打競争に出場したり、村上宗隆内野手の所属するホワイトソックスでは世界一に導いたオジー・ギーエン元監督の背番号「13」が永久欠番となったり。そして、ヤンキースでも8日(日本時間9日)、「オールドタイマーズ・デー」が開催され、伝統のOB戦に松井秀喜氏も参加した。3年ぶりに姿を現した伝説の“ゴジラ”を待ち受けていたのは、ヤンキースファンの大歓声だった。

 1960年代に活躍し、巨人でもプレーした元外野手のロイ・ホワイト氏、1977、78年の連続世界一に貢献したバッキー・デント氏、2000年代に豪華投手陣を支えた元捕手のホルヘ・ポサダ氏、史上最多652セーブを誇る殿堂右腕のマリアーノ・リベラ氏などなど。誇り高き伝統球団の歴史に名を刻む錚々たるレジェンドたちが、快晴の空の下、ヤンキースタジアムに集結した。

 午後1時に始まるオールドタイマーズ・デーのセレモニーとOB戦に先駆け、午前11時半から1時間、フリー打撃の時間が用意されていた。グラウンドにはピンストライプに身を包んだ往年の名選手たちがズラリ。久しぶりの再会も多かったのだろう。あちらこちらで近況報告会が立ち上がり、記念撮影の輪が広がった。松井氏もにこやかな笑顔で挨拶を交わしたり、フリー打撃に備えて準備体操的な動きをしてみたり。次の瞬間、日本人報道陣の姿を見つけると言った。

「え、わざわざこのために来たの? 来なくていいのに」

 その言葉とは裏腹に、少し上がった声のトーンと満面の笑みから嬉しさが漏れている。「まあまあ、そう言わずに」と言いながら、改めて思ったことがある。やはり、松井氏にはピンストライプが似合っている。大きな背中の、気持ちちょっと上かなぁという位置に「55」をつけた立ち姿。絵になるのだ。

打撃練習で快音を響かせるヤンキースOBの松井秀喜氏【写真:佐藤直子】打撃練習で快音を響かせるヤンキースOBの松井秀喜氏【写真:佐藤直子】

ヤンキースタジアムで沸き起こった大歓声…色褪せぬ2009年ワールドシリーズMVP

 貴重なヤンキースタジアムでの外野守備を拝めるかも、と期待しながら聞くと、52歳の松井氏は「今日はDHだって聞いてるけど。この中では若い方なんだけど、DHでいいのかなぁ?」と苦笑い。きっと守備に就きたいOBがたくさんいるのだろう。

 ようやく始まったフリー打撃では、打ち損じに苦しむ諸先輩方とは一線を画して若さをアピール。鋭い打球をいくつか放つと、6スイング目にはライト席に飛び込むホームランを放った。「やっぱり野球教室の成果が出てますよね。年に何回か、(子どもたちの目の前で)ホームランを打とうと思って頑張ってるから(笑)。それが今日は生きましたね」と嬉しそう。一度ケージの外に出ると、しばらく他のメンバーのスイングを見守っていたが、リベラ氏が打撃投手を始めると再びバットを握ってケージの中へ。「記念なんで。マリアーノからなかなか打つことはできないから」と、OB戦ならではの“対決”を楽しんだ。

 午後1時に始まったセレモニーでは、ヤンキースでの功績とともに名前を呼ばれたレジェンドが一人、また一人と登場。総勢40人を超えるレジェンドが集まったが、「2009年ワールドシリーズMVP、ヒデキ“ゴジラ”マツイ!」とコールされると、一際大きな歓声が客席を埋めたファンから沸き起こった。 

 多少の贔屓目は入るが、最も歓声が大きかったのは4度世界一に導いた名将のジョー・トーリ氏、2番目は殿堂右腕の“Mo(モー)”ことリベラ氏、3番目が松井氏とポサダ氏の同着。首位打者がいる、盗塁王がいる、ゴールドグラブ賞がいる、功績が燦然と光る面々の中にあっても、松井氏が2009年ワールドシリーズで残したMVP受賞のパフォーマンスは色褪せないということだろう。

 ヤンキースでは7年プレーし、通算打率.292、140本塁打、760打点を記録。在籍最後の年となった2009年ワールドシリーズでは13打数8安打、3本塁打8得点と大暴れし、9年ぶりの世界一奪回に貢献した強烈なインパクト。名門球団で積み上げた信頼と実績は、そう容易くは崩れない。

 OB戦では「ボンバーズ」の3番打者として打席に立つと、第1打席で中堅手の頭上を越える二塁打を放ち、続くバーリー・ウイリアム氏の左翼線二塁打で先制のホームを踏んだ。やはり、みんなの注目が集まる試合では、持ち前の勝負強さや強心臓ぶりが発揮されるようだ。

 ただ、自らの二塁打で一塁ベースを蹴った後はヨロヨロになりながら二塁へたどり着き、休む間もなく放たれたウイリアムズ氏の二塁打に「まいったな……」という表情を浮かべながら、やっとの思いで三塁ベースを踏んでホームへ生還したのは、ここだけの話。DHと告げられながら右翼守備に就いたのも「まさか」の展開ではあったが、動ける“若手”に輝ける場を与えたいという先輩方の配慮だったのかもしれない。

ケージで見守るヤンキースOBの松井秀喜氏【写真:佐藤直子】ケージで見守るヤンキースOBの松井秀喜氏【写真:佐藤直子】

指導者としてユニホームを着ることへの思いは…「どうでしょう?」

 現在、松井氏はヤンキースでGM付き特別アドバイザーを務め、折に触れて傘下マイナー球団で指導している。「今はもうあまり行ってない」とは言うが、「若い選手がマイナーシステムから上がっていく姿、マイナーでプレーする選手っていうのは、もうそれだけで応援したくなりますよね」と楽しんでいる様子。指導者としての未来は、どのような青写真を描いているのか気になるところだが……。「ユニホームを着ることへの思い」を聞かれると、こう返答している。

「どうでしょう? いや、こうやって(オールドタイマーズ・デーのような)機会があって着ているからね。いいですよ。それだけでも十分。毎日? 毎日着るのは困りますよ、やっぱり。毎日、20年着てたんで(笑)」

 指導者になる気はない、と額面通りには受け取らない方がいいだろう。もし何か決まっていたり、話が進行中であったりしても、おいそれとは認めるわけもない。ただ、松井氏が次のステップとして何を選ぼうとも、こうしてヤンキースタジアムに戻ってくれば万雷の拍手で迎えられることは変わらないだろう。

 日本であれ、メジャーであれ、いつの日か松井氏が指導者としてユニホームを身にまとい、伝統球団を率いる姿を見たい人は多いだろう。実現するかは、まさに運次第。松井氏に監督就任のオファーを出す球団があり、松井氏にオファーを受ける準備が整った時――。機が熟するその日まで、焦らず待ちたい。

取材に応じるヤンキースOBの松井秀喜氏【写真:佐藤直子】取材に応じるヤンキースOBの松井秀喜氏【写真:佐藤直子】

(佐藤直子 / Naoko Sato)

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