5月のトレードで加入した尾形崇斗「アドバンテージとしては大きい」
DeNAで最近よく聞く話がある。「あの人のトレーニングがすごい」と。5月にソフトバンクから電撃トレードで加入した尾形崇斗投手のことだ。
2023年、同僚となったロベルト・オスナ投手の取り組みを見て、本格的にトレーニングの勉強を始めた。「一緒にやって、実際に肩周りのトレーニングをしたらスピードが上がったりしたので、そういうところから始まりました」と説明する。
書き込んだノートのページはどんどん増えた。平均球速は毎年1.5キロほど上がり、最速は159キロまで達した。結果として表れていることにも喜びを感じ、さらに深く取り組むようになっていった。
果たして、フィジカルは正義なのか。
「やはりエンジンがデカくなるので、そこはアドバンテージとしては大きいですね。抑えるということの選択肢が試合の中で広がってくると思うので。ここはもうちょっとコントロールを意識しようとか、それはエンジンが大きいからこそ調整できるものがあるので。フィジカルっていう部分ではすごく助かっています。圧倒できるなという打者がいればコントロールを気にせず勝負できるし、できることが広がってきたと感じます」
先発の楽しさは…目を輝かせて「そういう魅力を感じていたので」
そう言って胸を張った尾形は、いつも以上にたくましかった。あの電撃トレードから3か月。プロ9年目で初めて1軍で先発登板し、現在はローテーションの一角を担う。初めてのセ・リーグで、初めてまっさらなマウンドに上がる。新鮮すぎる毎日は、刺激、成長、発見……さまざまな感情が行き交っているという。
井上朋也内野手とともに、山本祐大捕手とのトレードで横浜にやってきた。話題を呼んだ移籍だったが、尾形は新天地で先発としての起用を見込まれていることを聞き、「いつかやりたいと思っていたので」と胸が高鳴った。その思いについて、目を輝かせて語る。
「1試合を通して長い時間試合に携わって勝ちに導きたいという思いがすごくありました。昨年までパ・リーグで過ごして、例えば伊藤(大海)くん(日本ハム)、今井(達也)くん(アストロズ)、高橋光成さん(西武)、モイネロ(ソフトバンク)、有原(航平)さん(日本ハム)だったり。そういう魅力を感じていたので、中継ぎをやりながら、それができるように準備していました」
今春こそソフトバンクでは先発調整を行っていたが、開幕後は救援。直球とフォーク、直球とスライダーといったツーサイドピッチが基本だった。「中継ぎだとゲームの中で強弱をつけることがあまりなかったんですけど、先発ではそういうわけにはいかない。カーブだったりいろいろな球を使いながら、カットボールも覚えましたし、シンカーやチェンジアップを使ってのコンビネーション。あとは配球のチョイスが先発になってすごく変わりましたね。小杉(陽太1軍チーフ投手戦術・育成)コーチ、入来(祐作2軍チーフ投手戦術・育成)コーチ、いろいろな方がサポートしてくださるので、ゲームの中で思い切ってチャレンジできています」と充実感をにじませる。
8月4日の阪神戦(横浜)では、昨季最多勝利、最多奪三振、最高勝率のタイトルを獲得した村上頌樹投手と投げ合い、7回5安打無失点の好投。6回4安打1失点の村上に土を付け、感情を昂ぶらせた。
「相手のエースと1試合を通して盛り上げられるような試合をつくりたくて。あのときみたいに、相手のエースと高め合える試合をしていきたいと思っています。プロ野球ファンも子どもたちも盛り上がるようなピッチングをしていきたいので」と振り返るように、“転機”となる一戦だった。
横浜スタジアムで浴びる「屋台の匂い、観客がいる感じ、空が見える…」
先発としての楽しさを味わいながら、思い描くのは“究極の姿”だ。
「先発もできる、中継ぎもできる、クローザーもできる。どこに必要とされてもフィットしていける投手っていうのは、12球団を探してもなかなかいないと思うんです。中継ぎをやって先発をやってというと西武の平良(海馬)くんがいますけど、やっぱ貴重じゃないですか。もしかしたら短期決戦で後ろにフィットするかもしれないし、必要とされたところで力を発揮することに関して、自分の可能性を含めて、全部できるのはなかなかないことなので、そこは思っていました」
新たな戦いの場となった横浜スタジアムでは、全身でその空気を吸い込む。「個人的に屋外球場が好きなんです」。パ・リーグでは屋外球場が本拠地のチームは2球団だったが、セ・リーグは4球団もある。「屋台の匂いとか、観客がいる感じとか、空が見えるのとか。五感が研ぎ澄まされるような感じで過ごせています。だから横浜スタジアムも好きです」と穏やかに笑った。
「最終的には9回投げ切れるような、1年間回ったら170から180イニング、しっかり戦っていけるようなピッチャーになりたいですね」と先を見据える。ソフトバンク時代から知る入来コーチが「トレーニングを見ていると、とんでもない重量を上げますよ」と明かすほど底知れぬポテンシャルを秘め、先発としてはまだ発展途上。その姿は、ベイスターズに新たな風を吹き込んでいる。
(町田利衣 / Rie Machida)