劇的2本塁打で2年連続「30-30」達成、球団史上初の快挙
8月も後半となれば、話題になるのが賞レースの行方だ。米メディアはこぞって独自の予想を展開しているが、今季のナ・リーグは2選手の一騎打ちだと見られている。一人は、言わずもがなのドジャース・大谷翔平投手。そしてもう一人が、カブスが誇る若きスター、ピート・クロウ=アームストロング外野手だ。
名前の頭文字をとって“PCA”の愛称で親しまれる24歳。「1番・中堅」を定位置とする。17日(日本時間18日)の本拠地ホワイトソックス戦では、初回に初球をとらえて29号先頭打者アーチをかけ、延長10回には30号2ランを右翼席に叩き込み、劇的なサヨナラ勝利を演出。自らのバットで華々しくファンファーレを鳴らし、自らのバットで豪快に締めくくるという、離れ業を演じた。
本拠地リグレーフィールドにこだましたのは「M-V-P」コールならぬ「M-V-Pete」コールだ。劇的サヨナラ弾が今季30号だったため、31盗塁と合わせて「30-30」に到達。昨季(31本塁打・35盗塁)に続く2季連続の達成は、100年以上続くカブスの歴史の中でも初めてで、24歳以下で30-30を複数回達成したのはフリオ・ロドリゲス外野手(マリナーズ)、ボビー・ウィットJr.内野手(ロイヤルズ)に続き、MLB史上3人目の快挙だという。
「今日のリグレーフィールドは魔法のような夜だった。併殺を崩そうと全力で走ったり、みんながむしゃらにプレーしていたけど、こういう試合は楽しくて仕方ない。僕自身もフルスロットルだった。スイングに強い確信のようなものを感じた時は、恐れずにスイングすること。シンプルだけど、それが一番大事」
この日の先発だった今永昇太投手は、PCAの活躍について「彼が素晴らしいプレーをすること自体には驚かないんですけど……」と切り出すと、こう続けた。
「もっと素晴らしいと思うのは、ファンの皆様だったりチームメートが期待するパフォーマンス以上のものを発揮していること。我々の想像をまた、さらに超えてくるプレーをしてくれるのが、まあ本当にすごい選手だなと思いましたね」
183センチ、83キロ。決してそびえ立つような体格ではないが、備えた技術の高さや勝負強さでアマチュア時代から注目されていた。周囲の期待を一身に背負うことには慣れている。今年3月の第6回WBCに米国代表として出場し、大活躍したことが記憶に新しいが、米国代表のユニホームはU-12、U-15、U-18でも袖を通し、国際大会で戦ってきた。
怠らないファンサービス…“近所のお兄さん”の気軽さで子どもたちに対応
2020年ドラフト1巡目指名(全体19位)でメッツに入団し、2021年のトレード期限が迫る7月30日にハビアー・バエス内野手(現タイガース)とトレバー・ウィリアムズ投手(現ナショナルズ)との2対1のトレードでカブスにやってきた。メジャー初出場は2023年。時には失言したり、ビックリするようなエラーをしたり、若さが先立つこともあるが、デビュー4年目らしからぬ肝の座り方が魅力だ。
地元では「シカゴで一番有名なスポーツ選手」と言われているが、スーパースター然としない立ち居振る舞いも評価が高い。メディア対応もしっかりするし、ファンサービスも怠らない。
劇的な2本塁打で勝利を呼び込んだ翌日、18日(同19日)のこと。試合前のダグアウトには球場に招待された子どもたちとPCAの姿があった。子どもたちに視線を合わせるどころか、かなり下げた位置に座ると、一人ひとりの質問に丁寧に答える。その様子は、まるで近所のお兄さんの気軽さだ。
「みんなゴメン。もっと話していたいんだけど、今日の試合の準備をしてくるよ。また会おうね!」
キラキラと目を輝かせる子どもたちに別れを告げた2時間後、この日も2戦連続となる先頭打者ホームランを右中間スタンドに一閃。子どもたちにとっては一生の思い出になっただろう。
シカゴの地元メディアはPCAの活躍と同じくらい大谷の動向が気になる様子。大谷がホームランを打てば、記者席にはすぐさまニュースが駆け巡る。MVPはPCAか、大谷か……。そんな周囲の一喜一憂する姿を、当のPCAは面倒くさがるのではなく、むしろ楽しむ余裕も見せている。
レギュラーシーズンは残すところ約1か月。PCAと大谷の一騎打ち、とことん楽しませてもらおう。
(佐藤直子 / Naoko Sato)