「フィールド・オブ・ドリームス」の物語を継承するイベントへ 常設球場で4年ぶり公式戦…変わる開催意義【マイ・メジャー・ノート】
トウモロコシ畑に豪快弾を叩き込んだカイル・シュワーバー【写真:アフロ】米アイオワ州ダイアーズビルで行われた特別公式戦…続々顔を見せたレジェンド
1989年公開の映画『フィールド・オブ・ドリームス』(日本では1990年公開)にちなんだフィリーズとツインズの特別公式戦が13日(日本時間14日)、映画の舞台となった米アイオワ州東部の田舎町ダイアーズビルで行われた。映画は、他界した往年の名選手たちがトウモロコシ畑を切り開いて造られた球場に現れる名シーンで知られ、今回も両チームの選手たちはそのシーンさながらにトウモロコシ畑を通ってフィールドに登場した。4年ぶり3回目の開催となった特別な1試合の開催意義、さらには映画が着想を得た原作者W.Pキンセラの実像を追う。【全2回の前編】
試合当日の朝、激しい雷雨に見舞われた。カーラジオの緊急速報はアイオワ州の一部地域で竜巻が起きる可能性を伝えていた。試合の開催は危ぶまれたが、雨は開始時刻の3時間前には止み、試合は当初より3分遅れて午後6時33分にプレーボールとなった。
4年前、カブスの鈴木誠也外野手が活躍したこの球場は、記者席が鉄パイプを組んで作られるなど仮設であった。その後に、コンクリートを基盤にした8000人の観客を収容できる常設球場に生まれ変わった。有難かったのは、下水道整備が行われ記者席の後方には水洗トイレが完備され、汗ばむ手を洗えるようになった。こうした変化がある状況になっても「映画に登場する特別な舞台で試合が行われた」という誤報が出たのは不思議だ。
ここで、整理する。
映画『フィールド・オブ・ドリームス』で、主役を演じたケビン・コスナーが所有するトウモロコシ畑をつぶして造った伝説の球場そのもので試合が行われたわけではない。夢の球場が使われない理由は明快。“狭い”のだ。内野の塁間、マウンドから本塁までの距離は問題がないものの、両翼、左右中間、中堅までの距離がMLB規格に届いていないため、公式戦は行えない。それで、隣接する場所に特設の球場が設けられた。ファンにはスリリングなトウモロコシ畑の中を通って両球場を行き来できる夢の道が用意されている。
新球場のフィールドには、試合前から聖地ならではの活況があった。
打撃練習中、ケージのすぐ横では輪ができ、正真正銘のレジェンドたちが笑顔で思い出を語り合う。そこに現役選手も次々と顔を出した。輪の中心を見ると、アルバート・プホルス、バリー・ボンズ、アンソニー・リゾら錚々たる顔ぶれで、選手たちが代わる代わる立ち寄り、しばし語らいに加わった。
プホルス氏、ボンズ氏、リゾ氏(左から)ら錚々たる顔ぶれが登場した【写真:木崎英夫】4年ぶりのフィールド・オブ・ドリームス…過去2回とは異なる意味合い
『フィールド・オブ・ドリームス』は、八百長事件で追放となった“シューレス”・ジョー・ジャクソンら往年の名選手が、トウモロコシ畑を切り開いて造られた球場に現れる名シーンで知られるが、試合前のセレモニーでは、この名場面へのオマージュとして、26人の殿堂入り選手が右翼のトウモロコシ畑から姿を現し、名作映画の情景が見事に蘇った。試合では、フィリーズの強打者カイル・シュワーバーが1打席目からの2連発をトウモロコシ畑に打ち込み、物語の世界を演出した。
野球ファンの聖地、アイオアのダイアーズビルに4年ぶりに戻って来たメジャーリーグの一戦。過去2回と変わることなく情緒豊かな場所で記憶に残る戦いが展開されたが、常設球場になって初めて行われた「MLB at フィールド・オブ・ドリームス」は、これまでとは意味合いが異なる。
(木崎英夫 / Hideo Kizaki)
