11年目で主将に立候補…日本通運・北川利生が起こしたチームの変化、共有する「ヤバい」感覚

日本通運OB、木南了さんが現役選手の心の内を深掘りする特別対談・最終回
社会人野球の頂点を決める「第97回都市対抗野球大会」が26日に東京ドームで開幕する。12年連続51回目の出場となる日本通運(さいたま市・南関東第1代表)が目指すのは、1964年以来となる62年ぶりの優勝だ。
51回目の出場で目指す62年ぶりの頂点…OB辻発彦氏と澤村幸明監督が語った日通野球と都市対抗
都市対抗野球の常連ながら、なかなか優勝が遠いシーズンが続く中、今季のチームは「変化」を求めた。日本通運で2024年までプレーし、侍ジャパン社会人代表捕手としても活躍した木南了さんをナビゲーターに迎え、選手たちの変化を探る全3回シリーズ。最終回は、11年目にして初めて主将を務める北川利生外野手だ。「今が一番弱い」と危機感を抱き、行動した理由とは……。
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昨秋、日本通運野球部では異例の形で新体制が始動した。例年通りであれば首脳陣から指名されるキャプテンに、ベテランの北川が自ら手を挙げたのだ。社会人野球日本選手権大会の予選で敗れた後の10月末、澤村幸明監督と話し合って決まった。立候補は、危機感から生まれた行動だった。
木南:利生とは長く一緒にプレーしてきたけれど、主将になった経緯と目指す方向性を教えてください。
北川:この2、3年は、自分が在籍してきた中で明らかに「今が一番弱いな」と思っていたんです。日本選手権出場を2年連続で逃すほど、チームが落ちた時に何かしたかった。キャプテンをやるやらないで、実はそんなに立ち位置は変わりません。でも、他の人がキャプテンになったら、やりにくいだろうなと思ったんです。自分が言うべきことを飲み込んでいたらチームは変わりませんし。だったらと、監督に「こう変えていきます」とプレゼンをしました。「絶対僕がやったほうがいい」と。

リトルリーグ以来となる主将就任、伝え続ける「全力でやっていこう」
木南:これまでキャプテン経験は少ないと思うけど、やってみての難しさはありますか? 強いチームと比べて何が足りていないのでしょう。
北川:創価大では副主将でしたが、主将はリトルリーグ以来ですよ(笑)。勝ち続けているチームは、自分たちから崩れないと思うんです。そのためにまず「100パーセントできることから全力でやっていこう」と話しました。練習ではウォーミングアップを自分で考えて行う。シートノックから全力で声を出すとか、そういう細かいところから完璧にしよう、と。その上で「最後は実力で勝負できるようになろう」と掲げて、みんなに伝えました。で、最初は誰でもやるんですよ。
木南:そうだね。その先も続けていくことが難しい。
北川:やっぱり時間が経つにつれ、意識は薄れてきます。そこでどうするかといえば、その都度、言い直すしかないんです。去年の11月から新チームが動き出して半年以上経っていますが、同じことをずっと言い続けるのが役割だと思っています。
木南:今年は4月のJABA四国大会で優勝して、都市対抗の南関東予選も第1代表で勝ち抜けられた。理想とするチームに近づいている実感はありますか?
北川:僕が言ったからとかではなく、みんなが「ヤバい」という危機感を持ってやってきたのが、春先は良い形で出たと思います。ただ「凡事徹底みたいな話は、もう終わりにしたい」とも言っているんです。次のステップに進みたいので。どれだけ一生懸命声を出して全力疾走しても、最後はヒットを打って、投手が抑えないと勝てない。それでもまだ、点差が開いたら声を出さなくなったり、ポジションまでしっかり走らなかったり、ボロが出ます。まだ道半ばという感じです。
社会人選手が考える自分たちの“需要”「利益を生むわけではない」
北川:自分は羽田空港支店の配属ですが、上司や同僚から受けるサポートの熱量は1年目から変わりません。ずっと応援してくれているんです。ただ、最近は休廃部になる企業チームが出てきて、自分たちの“需要”について考えるようになりました。僕らは直接利益を生むわけではないですし、応援してくれる人と同じくらい存在価値に疑問を持つ人もいると思います。高校や大学からプロに行けない時点で引退する人が多い中、今も野球に打ち込める環境があることに、もう感謝しかありません。あとは都市対抗ですよね。あの舞台に立たないと、僕らは何の価値もないとつくづく思います。
木南:プレーヤーとして、1年目と11年目を比べた時に、何か変化はありましたか?
北川:根っこはそんなに変わりません。守備も走塁も小技も、野球を一通りうまくやりたいとずっと思っています。ただ、失敗をたくさんしてきた分、負けにくくするためにどうするかを考えるようになっています。若い選手に言っているのは、ちゃんと相手目線でプレーしてほしいということですね。試合になれば相手がいる。自分の準備は試合が始まる前までに終わらせておかないと。
木南:自分と同じような失敗を、他の選手にしてほしくないのはあるよね。
北川:試合では、相手が嫌がることをする引き出しが必要です。ピッチクロックもあるので20秒に1球、試合は進んでいくわけです。普段から考えることに慣れておかないと、そのスピードについていけない。頭を使ってやろうと、日頃から言っています。

優勝チームのOBが試合前から絶好調…「知っている人に置き換えて」
木南:日本通運は都市対抗にずっと出ているものの、優勝が遠いという現実があります。今回はどういう大会にしたいと思っていますか?
北川:実は「優勝」という話は全く出ていないんです。とにかく初戦にすべてをぶつけるため、その日までに自分たちの限界値を上げていきたい。予選が終わった時も「もっと野球をうまくなろう。あと2か月で限界値を上げないと、目標に届かない」という話をしました。あと「とにかく試合に出ることにこだわってくれ」とも言っています。社会人で野球するのは、都市対抗の舞台でやるためですから。
木南:個人もチームも限界値を上げて、一戦に集中していく。その積み重ねが優勝というスタイルだね。31日の1回戦で対戦するNTT西日本は手ごわい相手です。
北川:野球がうまい選手が揃っていると思います。派手さより負けにくさがあるチーム。向こうも、ずっと都市対抗出場を逃していないはずなんです(12回連続出場)。しぶとさを持っているので自滅は期待できません。地力を示さないと勝てない相手だと思います。
木南:そういう相手に勝って優勝したいというのが、一番の原動力になるのかな?
北川:会社にとって野球部とは何かと考えた時、まず応援してくれる人を増やさないといけない。そして、その人たちを楽しませるには、やっぱり1試合で終わっちゃダメなんですよ。去年の決勝をスタンドで見ていて、優勝した王子OBの皆さんが試合前に決起集会をしたのか絶好調で、すごく楽しそうだったんです。「こんなになるんや」って、ちょっと想像以上でした。その姿を自分の知っている方々に置き換えて想像してみるのが、モチベーションの一つになっています。何とか叶えたいですね。
木南:僕たちOBを絶好調にさせてください。全力で応援しています!
(Full-Count編集部)