巨人新1・2番コンビが生み出す“相乗効果” 背景にある浦田俊輔の盗塁量産…日常茶飯事の会話「うまく生きている」

巨人の浦田俊輔はリーグトップの32盗塁をマークしている【写真:イワモトアキト】巨人の浦田俊輔はリーグトップの32盗塁をマークしている【写真:イワモトアキト】

リーグトップの32盗塁…タイトル獲得なら藤村大介以来、球団15年ぶり

 巨人の2年目・浦田俊輔内野手は持ち前の快足と卓越した盗塁技術で打線を牽引している。

 ここまでリーグトップの32盗塁を記録し、タイトルへ向かって爆進する23歳の凄さは一体どこにあるのか。チームメートの松本剛外野手、亀井善行外野守備兼走塁コーチの言葉から、その驚くべき能力と知られざる裏側に迫る。
「怖いもの知らず。全く物怖じしない。思い切りとかは断トツにあるよね。まあ、そういう性格なのもあるんだろうけど」

 亀井コーチがそう評価するように、浦田の最大の武器は強い気持ちと抜群のスタートだ。2番を打つ松本も「本当にすごいなと思います。あれだけ勇気を持ってスタートを切れるのは。盗塁は大体スタートだと思うので、その前に思い切りよく切れるか、切れないか。盗塁が決まるか、決まらないかは、そこだと思うので」と、その驚異的な度胸に強い感銘を受けている。

 象徴的だったのが、21日の広島戦(東京ドーム)だ。1点リードの8回1死二塁、森下の隙を突いて2球目で三盗を成功。ヘッドスライディングで悠々と陥れた。橋上監督代行は「驚きました。やはり効果的ですよね。かなりリスクはあるんですけども、その分大きなリターンもある。あの辺はやっぱり勇気を持ってやってくれていることに称賛したい」と積極的な姿勢を評価していた。

 しかし、ただの“向こう見ずな暴走”ではない。その凄みを強固に裏付けているのが、徹底した準備と研究だ。

「全て勉強してきている。走ることにこだわりを持ってやってくれている。しっかりメモも取っている。ミーティングの時もそうだし、試合中に感じたことも書いている。試合前から勉強してきていて、『今日のピッチャーはこうだ』って自分の中で(盗塁で)走れる、走れないを把握している」(亀井コーチ)

 チーム全体のデータ分析に頼るだけでなく、個人で感じたことなどを徹底的にノートへ書き出す。自分の走力と相手のデータを照らし合わせ、確固たる根拠を持ってグラウンドに立っているからこそ、あの迷いのない思い切りの良いスタートが切れるのだ。

2番・松本とのコンビネーション

 松本は2番を打つことが多い。新1、2番コンビの間には、こんな会話が日常茶飯事で行われている。

 松本「ウラちゃん、今日行けそう?」

 浦田「行けそうです!」

 いつでも前向きに「行けます」と答える浦田に対し、松本も初球から安易に打たず、待って走るのをアシストするなど絶妙な駆け引きを行う。「僕も結構、打撃に制限をかけられた方がいいなと思う時もある。ウラちゃんが入っていると、うまく生きている」と松本。相性抜群のコンビが相手バッテリーに強烈なプレッシャーを与えている。

松本剛は2番打者として浦田を“サポート”している【写真:加治屋友輝】松本剛は2番打者として浦田を“サポート”している【写真:加治屋友輝】

 昨季まで所属した日本ハムで、松本は4度の盗塁王に輝いた西川遥輝外野手(現ヤクルト)と1、2番コンビを組むことがあった。「足のある打者の後ろを打っていた時の、そういう経験も生きているかなと思います」と語る。かつて快足打者の後ろで培ってきた知識や駆け引きの経験があるからこそ、浦田の足を最大限に生かすアシストができているのだ。

 亀井コーチも「剛はウラちゃんが走るか走らないかを話をして、打席内で待ってくれている。すごくいい影響を与えている」。33歳のベテランの存在が浦田の足を引き出していると分析している。

原辰徳前監督からの教え「根拠がないのに盗塁するな」

 盗塁成功ならチャンスを拡大できるが、一方で失敗すれば試合の流れも変えかねない。亀井コーチには、盗塁で走っていい「基準」があるという。

「ノーアウトの場合は100%セーフにならないとダメ。ワンアウトは80%、ツーアウトなら50%。最低50%で勝負してもいいと思っているから、ノーアウトでいく場合は、根拠がないとスタートを切っては欲しくないという考えはある」

 亀井コーチの現役晩年、当時の原辰徳監督が「根拠がないのに走るな。根拠がないのが一番ダメだ」とチームの走塁方針について厳しく言ったことがあった。一時はチーム全体が盗塁を狙うことに消極的になることもあったというが、浦田はその空気も超えてきている。亀井コーチはこう語る。

積極的な走塁でチームを活気づけている【写真:井上学】積極的な走塁でチームを活気づけている【写真:井上学】

「(浦田は)元々は、どんな状況でも『盗塁していいですか?』という選手。(成功率)50%でも行っちゃう選手だが、試合状況を読むことをこの1年で経験してきて、今は引く時、行く時が分かってきたかなと。そこは会話する中で変わってきたかなと思う」

「それでも、隙があれば行こうという姿勢を持ち続けてくれている。盗塁が決まれば大きなチャンスになる。紙一重のところだけど、相手も警戒する中で盗塁を成功させてくれるのはチームとしては大きいから」

 徹底的なノートで裏付けされた根拠と「成功率50%でも盗塁してやる」という度胸。この2つを両輪にして果敢に次の塁を狙う23歳から、しばらく目が離せそうにない。

(小谷真弥 / Masaya Kotani)

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