「プロに入って5年間悔しかった」 試合開始7時間前の球場入り…“練習の虫”西武・仲田慶介がお立ち台で涙した理由

どん底から這い上がってきた西武・仲田慶介、5年間の苦悩の先にはファンからの大声援が待っていた【写真:小林靖】どん底から這い上がってきた西武・仲田慶介、5年間の苦悩の先にはファンからの大声援が待っていた【写真:小林靖】

適時三塁打、犠飛、適時三塁打でチーム全3得点を稼ぐ活躍

「本当に苦しい時期が多くて……」。思わず声が震え、涙があふれた。2024年オフにソフトバンクから戦力外通告を受け、育成選手として入団した西武で1軍に這い上がってきた仲田慶介内野手が、野球人生初のお立ち台に上がったのは今月25日。本拠地ベルーナドームで行われた日本ハム戦の試合後だった。

 この試合に「9番・二塁」でスタメン出場し、0-0で迎えた5回に中堅の右を抜く先制適時三塁打。6回には左犠飛、8回には右翼線を破る、この日2本目の適時三塁打を放ち、チームの全3得点を稼いだ。内外野どこでも守れるユーティリティとして重宝され、代走や守備固めでの出場が多いが、前日24日の同戦でスタメンに抜擢されて2安打を放ち、2試合続けて結果を出したのだった。

「プロ野球に入って5年間、ほとんどが悔しい思いだったので……。お立ち台に上がることを目標の1つにしてやってきましたが、プロ野球人生で上がれないかもしれない、という思いもありました」。ヒーローインタビュー中に涙を抑えられなかった心境を、こう説明する。

 福岡県出身で福岡大大濠高、福岡大を経て、2021年育成ドラフト14位でソフトバンクに入団した。3年目の2024年3月には支配下登録を勝ち取り、1軍では24試合出場、打率.214(14打数3安打)に終わるも、ファームで打率.403(77打数31安打)をマーク。翌年以降へ大きな期待を抱かせた。

 ところが同年オフ、ソフトバンクからまさかの戦力外通告を受ける。育成選手に戻ってチームに残ることもできたが、声をかけてくれた西武への移籍を決断した。こちらも育成契約だったが、「環境を変えてやってみたいという気持ちがありました」。こうして得た新天地で昨季、開幕前に支配下登録を結び、1軍で60試合に出場。打率.230(87打数20安打)の数字を残し、今季年俸は1200万円に上がった(金額は推定)。

今季も厳しい競争の中で、与えられた役割に全力で取り組んでいる【写真:加治屋友輝】今季も厳しい競争の中で、与えられた役割に全力で取り組んでいる【写真:加治屋友輝】

「打撃の調子が良くて自信もあったが、1か月間1打席もなかった」

 今季も開幕1軍入りを果たしたが、昨年オフにFAで桑原将志外野手と石井一成内野手、新外国人としてアレクサンダー・カナリオ外野手、林安可外野手らを補強したチームにあって、出場機会を増やすことは容易ではない。

 今季は4月30日と8月10日に2軍降格を経験し、いずれも1軍に這い上がってきた。「特に6月(3日)に2軍から上がってきた時は、打撃の調子が良くて自信もあったのですが、それから1か月間、1打席もなかった。そこは正直言って悔しかったです」と明かす。「自分としては準備して、やるしかないですが、どれだけ準備しても、自分でコントロールできない部分もあります」とも。実績のない選手が1軍でチャンスを得て、ものにすることはそれほど難しい。仲田がお立ち台で「5年間ほとんどが悔しい思いだった」と口にした背景には、こうした状況があった。

 それでも仲田は、ソフトバンク時代から「努力の塊」「練習の虫」と呼ばれてきた。出場機会が与えられなかったとしても、腐るようなところは一切ない。午後6時開始のホームゲームの場合、全体練習開始は同2時だが、仲田は午前11時には球場に姿を現し、ストレッチ、ピッチングマシンをスローボールに設定しての打ち込みなど、人一倍の練習を弛まず続けている。

 守備では昨季、二塁、三塁、遊撃、左翼、右翼の5つのポジションに就いた。今季は遊撃に就いていないが、一塁を守ったことがあり、昨季同様5つをこなしている。試合前に必ず内・外野でノックを受け、「(フリー打撃中に)打球を捕ることも大事にしています」と語る。

 本拠地ベルーナドーム周辺は丘陵地帯で、西武には都内に住む選手も多いのだが、仲田は球場から車で約10分のところに居を構える“職住接近”ぶり。「福岡から来て、あまり事情がよくわからなくて、取りあえずベルーナの近くで探しました」と笑う。

プロで生き残るため、左打席では拳ひと握り分を開けて打席に立つ【写真:加治屋友輝】プロで生き残るため、左打席では拳ひと握り分を開けて打席に立つ【写真:加治屋友輝】

左打席では87センチの長いバットを、拳ひと握り以上空けて短く持つ

 打撃でも工夫を加えている。大学時代からスイッチヒッターで、今年5月に2軍落ちしていた時、左打席ではそれまでよりバットを短く持つようにした。グリップエンドから拳ひと握り分以上空けており、NPBでこれほど短く持つ選手はなかなか見られない。

「これくらい短く持った方が、1軍の投手に対応しやすいと感じています。もともと他の選手より2センチほど長い87センチのバットを使っていて、長いバットを短く持ってコンパクトに打つようにしています」と説明する。一方、右打席では少し長く持ち、バット自体も違う。「プロに入ってからなかなか見せられていませんが、右打席の方が長打力はあると思っています」とアピールする。

「スタメンで使っていただいた時には、なんとか爪痕を残さないといけない。1試合でもタコってしまうと(無安打に終わると)、使ってもらえなくなるという危機感があります」と表情を引き締める。地道に努力を続ける27歳には、少ないチャンスをものにし、もっともっとスポットライトを浴びてほしい。

(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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