阪神主砲の“傲慢”が招いた悪夢 軋み始めた肉体…パワー激減「ツケが来た」

横浜戦で三振を喫した阪神時代の八木裕さん【写真提供:産経新聞社】
横浜戦で三振を喫した阪神時代の八木裕さん【写真提供:産経新聞社】

1990年から3年連続20HR以上も…八木裕氏に増え始めた怪我

 元阪神4番打者の八木裕氏(野球評論家)は、プロ7年目の1993年から本塁打数が1桁台に減った。若き長距離砲としてプロ4年目の1990年から3年連続20本塁打以上をマークしていたが、一気に数字を下げた。原因は、守備で腰を痛めるなど故障が増えたことだった。「今、考えれば、コンディションをうまくやらなきゃいけないという認識が低かった。(それまでの)ツケが来たんだと思います」と唇を噛んだ。

 八木氏はプロ6年目の1992年に阪神の主力として優勝争いを経験した。9月11日のヤクルト戦(甲子園)ではサヨナラ2ランと判定されながら「フェンス下部に当たってスタンドインした」とのヤクルトからの抗議に、審判団が誤審を認めてエンタイトル二塁打に訂正する“幻の本塁打騒動”の当事者にもなった(試合は延長15回3-3引き分け 抗議中断も含めて6時間26分の最長ゲーム)。

 それでも阪神の快進撃は続き、首位を奪取。9月22日からの長期ロードに向かう時には2位に3ゲーム差をつけており、ビジター13試合を5勝8敗でも有利とみられていたが、まさかの3勝10敗でヤクルトにひっくり返された。なかでも10月7日のヤクルト戦(神宮)で3-4の逆転サヨナラ負けを食らったのが痛かった。「あの日が(事実上の)決戦だったんでね。異様な緊張感の中、試合をやっていました。前の日は寝られなかったんですよ。そんなことも初めてでした」。

 最終的には巨人と並んで2位に終わったが、まさにあと一歩のところで優勝を逃したシーズンだった。当然、“この悔しさは翌年に”の思いだったに違いない。だが、うまくいかなかった。ヤクルトに連覇を許しただけでなく、阪神は4位と成績を下げた。オリックス・松永浩美内野手との交換トレードで放出した野田浩司投手の穴が大きかったと言われた。八木氏も本塁打数が1992年の「21」から、1993年は「9」に激減した。

「この頃からちょっと怪我が多くなったんです。その年(1993年)は腰。試合の守備でボールを追っかけてフェンスの辺にガーッと。当たってはいないけど、変な体勢で捕球しようとして……。もともと腰が悪くて、分離症なんで疲れたりすると出るから気をつけてはいたんですけどね」。そのため6月に戦列を離れた。7月に復帰したものの、病み上がりで本来の状態ではなかった。9本塁打中、7本は8月下旬以降に放ったものだった。

阪神で活躍した八木裕氏【写真:山口真司】
阪神で活躍した八木裕氏【写真:山口真司】

1994年に三塁で球宴ファン投票選出も怪我で辞退…受けた腱移植手術

 当時の考えが甘かったという。「普通にやっていれば(試合に)出られるだろうと思っていましたからね。トレーニングとかケアとかいろいろやらなきゃいけなかったんでしょうけど、あまりやっていなかったから……。もうちょい腹筋とかをビシッとやっているとか、体幹を鍛えたりとか、マッサージをして足の辺をちょっとリラックスさせてたりすると怪我もしなかったかもしれない。その辺がわかっていなかった。若いから大丈夫だろうとね」。

 続くプロ8年目の1994年は開幕スタメンからも外れた。八木氏が守っていた左翼にはオリックスからFA加入の石嶺和彦外野手が起用された。それでも与えられた役割を懸命にこなした。開幕3戦目の4月13日の中日戦(甲子園)からは「3番・三塁」で出番となり、4月は打率.321、4本塁打と結果も出した。「あの時は調子がよくてね、一応、オールスターゲームもファン投票(三塁手部門)で選ばれたんですよ」。だが、それも怪我のために出場辞退となった。

 球宴6日前の7月13日の横浜戦(横浜)でのアクシデントだった。「(三塁守備で)打球に飛びついた時、グラブの親指部分が人工芝に引っかかって、親指のところの靱帯が切れちゃったんです。打球が低かったこともあるんですけど、まぁ、下手だったんで……。最初は保存治療でいったんですけど、なかなか治らなくて『手術しますか』って言われて。よく考えれば、トミー・ジョン手術なんですよ。肘をやるのと同じように移植するんで……」。その年はそれで終わった。

「手術を受けたのは9月だったかな、大阪で。あとはリハビリでした。大きい怪我だったし、当然、不安もありましたね。何とか次の年(1995年)のキャンプには間に合いましたけど、筋力とかは落ちていたと思います」。長距離砲として順調に進んでいた野球人生の“流れ”が怪我によって急激に悪くなった形だった。しかも……。“悪夢”は、さらに続いた。

(山口真司 / Shinji Yamaguchi)

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