大谷翔平に起きた“異変” 12戦0HRの裏で急落した数値…明らかになった肉体の不調

ドジャース・大谷翔平【写真:ロイター】
ドジャース・大谷翔平【写真:ロイター】

8月後半は「振る力」を維持…直近では高速スイングも急減

 単なる打撃不振だけでは、説明しづらくなってきた――。ドジャース・大谷翔平投手は4日(日本時間5日)の本拠地ナショナルズ戦でもスタメンを外れた。怪我を理由とした2戦連続の先発落ちは移籍後初。8月18日(同19日)のロッキーズ戦で30号を放って以降、移籍後最長の12試合、60打席で本塁打がなく、期間中の打率は.130。負傷者リスト(IL)入りの可能性も残るなか、打撃の“中身”にもこれまでとは異なる変化が表れている。

 不振の入り口は、むしろ好調の直後だった。8月17日(同18日)のロッキーズ戦では4安打2本塁打、翌18日にも一発。ところが、その後は12試合連続ノーアーチ。さらに時期をさかのぼれば、大谷は8月8日(同9日)に投球プログラムを再開し、ブルペンや実戦形式の投球を重ねる一方で、打撃成績も低迷していった。

 もっとも、当初は肉体的なパワーダウンを疑わせる数字ではなかった。米データサイト「FanGraphs」に掲載されたスタットキャストのバットトラッキングを集計すると、8月19~30日の10試合では平均バットスピード75.4マイル(約121.3キロ)。直前10試合の8月9~18日も75.4マイルでほぼ変わらず、75マイル以上の「高速スイング」の割合も57.1%から56.0%と大差はなかった。変化が表れていたのは、振る強さではなく“当てる精度”だった。

 計測対象のスイングに占める「Squared-Up」の割合は、直前10試合の28.6%から15.5%へほぼ半減。バットスピードと投球速度から算出される最大打球速度の80%以上を引き出したスイングを示す指標であり、いわば持っている出力を、どれだけ効率よくボールへ伝えられたかを示す数字だ。

 強く振る力は残っている。それでも芯で捉えられない――。8月後半までの大谷は、タイミングやインパクトのズレが不振の中心にあるように映っていた。

 ところが、直近では様相が変わった。9月1、2日のカージナルス戦2試合で計測された18スイングの平均バットスピードは約73.0マイル(約117.4キロ)。高速スイングは4度だけで、割合は22.2%。8月19~30日の56.0%から半分以下まで落ち込み、「Squared-Up」は18スイングで一度も記録されなかった。

 特に2日(同3日)は、自己ワーストに並ぶ4三振。平均バットスピードは72.3マイル(約116.3キロ)で、今季平均74.6マイルを2マイル以上下回った。高速スイング率も21.4%と今季通算49.1%の半分以下。Squared-Up率、さらに強いスイングと効率的なインパクトを組み合わせた「Blast」の割合も、ともに0%だった。これまで維持されていた“振る力”にまで異変が及んだ。

ドジャース・大谷翔平【写真:黒澤崇】
ドジャース・大谷翔平【写真:黒澤崇】

異様だった最終打席…指揮官も「身体をかばっている」

 そして、その数字と重なるように肉体面の問題が表面化した。象徴的だったのが、2日(同3日)の最終打席だ。99.4マイル(約160キロ)の直球に対し、体全体を使えず、手打ちのようなスイングで空振り三振。直後には右腕を振る仕草を見せていた。当然、指揮官の目にも“異変”は見て取れた。

 デーブ・ロバーツ監督は試合後、「明らかに自分のスイングができていない。間違いなく、少しばかり(身体を)かばっている」と指摘。翌3日(同4日)には「上腕二頭筋、首、その一体の感覚がすべてよくない。彼の思い通りに動かせていない。だから、昨日顔をしかめたり、腕が震えている場面があった」と状態を説明した。

 わずか2試合の数字だけで、スイング出力そのものが恒常的に落ちたと断定することはできない。9月1日は平均バットスピード75.3マイルを記録しており、直近2試合の平均値は4三振を喫した2日の数字に大きく引っ張られている。それでも、これまで保たれていた部分にまで変化が表れたタイミングで、指揮官も実際のスイングに異変を感じ取った。データと現場の感覚が重なる。

 大谷は6月頃から左膝や右上腕二頭筋に不安を抱えながらプレーを続けてきた。投手としては7月3日(同4日)を最後に登板せず、8月8日(同9日)に投球プログラムを再開。復帰へ向けてブルペンや実戦形式の投球を重ねたものの、状態を鑑みて8月30日(同31日)の復帰登板は見送られ、投手復帰プランはいったん白紙となった。

 投手調整と打撃不振の時期が重なっているのも事実だ。投球再開後は93打数19安打の打率.204、OPS.704、32三振。ただし、これだけで「投球練習が打撃を崩した」と結論付けることはできない。8月18日(同19日)には35球のブルペン投球を行った同じ日に30号を放っており、投球を再開した瞬間から打撃が崩れたわけでもない。

 それでも、肉体面を切り離して考えることは以前より難しくなった。左膝、右上腕二頭筋、そして新たに浮上した首の問題。9月3日(同4日)の休養を経ても、翌4日(同5日)のスタメン復帰は見送られた。ロバーツ監督はIL入り回避について「希望は持っているが、確信とまでは言えない。期待はしている。様子を見ることになる」と説明。今後数日の状態を見て判断する段階に入っている。

 8月後半は「強く振れるのに、芯で捉えられない」。直近2試合では「芯で捉えられず、強く振る割合まで落ちた」。そして今は、2試合続けてスタメンを外れている。技術的なスランプなのか。万全ではない身体がスイングの再現性を奪っているのか。それとも、その両方なのか――。

 現時点で原因を1つに絞ることはできない。ただ、ロバーツ監督が身体をかばう動きを認め、IL入りまで選択肢に浮上した今、打率や本塁打だけを見て「不振」と片付ける段階ではなくなった。焦点は「なぜ打てないのか」だけではない。「大谷らしいスイングができる状態なのか」に移りつつある。

 短期的な休養で本来の動きを取り戻せるのか。それとも、IL入りを含めて一度身体をリセットする決断が必要なのか。8月末まで維持されていた“振る力”まで失われた直近の数字は、その判断を迫る一つの材料にも映る。大谷、そしてドジャースにとって、いま問われているのは打撃の修正だけではない。

(新井裕貴 / Yuki Arai)

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