「最後に勝ち越せていたらいい」 オリックス来田涼斗が描く“ライバル撃ち”…6年目の覚醒生んだ決断

高卒6年目で初めて4番を任されたオリックス・来田涼斗【写真:加治屋友輝】高卒6年目で初めて4番を任されたオリックス・来田涼斗【写真:加治屋友輝】

来田はプロ入り初の4番に座るなど打率.286、8本塁打、42打点をマーク

 苦しいチーム状況のなかで、“覚醒”の時を迎えようとしているのが、オリックスの来田涼斗外野手だ。高卒6年目にして4番を任されるまでに成長した23歳は今、かつてない手応えとともにグラウンドに立っている。かつては“代名詞”でもある豪快なフルスイングでファンを魅了してきたが、プロの分厚い壁に跳ね返されることも少なくなかった。しかし今季、プレースタイルには明らかな「変化」が見て取れる。

 明石商高(兵庫)時代から誰もが認める長打力を誇っていたが、プロの1軍投手の精密なコントロールと鋭い変化球に対して、バットを振り回すだけでは通用しなかった。不利なカウントに追い込まれ、空振り三振に倒れるたびに、己の未熟さを痛感。プライドを捨てて自らの打撃を見つめ直した。

「もう、とことん追い込まれてからフルスイングして、やられてきたんで。そこはちょっと成長しようと思って、アプローチの仕方を変えました」

 初球から積極的に振りにいくスタイルは変えず、2ストライクに追い込まれてからは相手投手に合わせて狙い球や、スイングのアプローチを変えていった。そこにはもちろん、昨秋や今春のキャンプで取り組んだ技術面の向上も加わっている。直球を捉えきれずファウルにし、不利なカウントから相手の得意球で空振り三振に終わるケースは極端に減った。

アプローチを変え、打撃の確実性を高めた【写真:加治屋友輝】アプローチを変え、打撃の確実性を高めた【写真:加治屋友輝】

三振率の改善がもたらした「4番の座」、キャリアハイへの手応え

 数字にも表れている。昨年は28.1%(135打席38三振)だった三振率が、今年はここまで17.6%(278打席49三振)と劇的に減少。3.5打席に1回から、5.7打席に1回に改善されたことで、“事を起こす”回数は自然と増えた。理想の打球を追い求めても、結果を残さなければ1軍でのチャンスは減っていく。高卒6年目で感じ取った危機感も成長に繋がっている。

 今は必死に食らいつき、野手の間に落ちるテキサスヒットでも納得できる――。打席での取り組みを変えたことで、ここまで85試合に出場し打率.286、8本塁打、42打点と全てにおいてキャリアハイの成績を残している。しかも、得点圏打率はチームトップの.395。まさに4番打者に相応しい活躍をみせている。

 打順が変わっても、決して己を見失うことはない。プロ入り初の4番に座った4日のロッテ戦(京セラドーム)でも気負うことなく快音を響かせ、2安打を放った。

「基本はもう変わりなくやってます。まだまだチームを背負えるような立場ではないので。これから、もっと実績を重ねて、もっと自信がついてから、そこは考えていきたいなと思います」

 そんな来田にとって、特別な意味を持つ対戦がある。ロッテの中継ぎとして躍動する同級生、中森俊介投手との勝負だ。明石商高時代、ともに甲子園を沸かせた盟友。高校野球ファンなら誰もが知る投打のスターは今、プロの1軍という最高峰の舞台で、お互いの意地とプライドを懸けて火花を散らしている。

 マウンドに立つ中森を見つめる時、来田の目つきは一層鋭さを増す。「同級生なんで楽しみですよ」と、笑みをこぼしつつも、グラウンドに立てば一人のプロ野球選手としての闘争心がむき出しになる。来田と同様に中森も6年目の今季はチームに欠かせない存在になっている。ここまで34試合に登板し4勝1敗16ホールド、防御率1.89とキャリアハイの成績を残し“勝利の方程式”の一角としてブルペンを支えている。

明石商高時代の来田涼斗(左)と中森俊介【写真:編集部】明石商高時代の来田涼斗(左)と中森俊介【写真:編集部】

明石商高時代の同級生・ロッテ中森と対決「本当にいいライバル」

 4日と5日の試合で、直接対決が実現。4番打者として中森と対峙するも結果は左飛、空振り三振に終わった。昨年の初対決を含め、計4度の対戦で無安打2三振。“ライバル撃ち”はお預けとなったが、悲観する様子は全くない。むしろ、楽しみが増えたような表情を見せていた。

「あんまり目の前、目先の結果にこだわらず。結果、最後に勝ち越せていたらいい。本当にいいライバルだと思ってるんで。いつか“スコ打ち”できたらいいなと思います(笑)」

 プロの世界で生き残るため、互いにしのぎを削る日々。だが、ユニホームを脱げば、当時の無邪気な高校生に戻る瞬間がある。試合前のグラウンドでは言葉を交わし、シーズンオフには2人揃って母校へ足を運ぶという。

「中森とは毎年のように、一緒に(明石商高の)狭間(善徳)監督のところに挨拶に行ったりしています。結構2人で行きます」

 激しい競争社会に身を置く2人にとって、高校時代のグラウンドの匂いを感じられる時間は、何よりの心の支えになっているのだろう。恩師は直接球場に足を運ぶことはないが、テレビの画面越しに教え子の成長を見守っている。その“無言のエール”に応えるためにも、来田はさらにバットを振り続ける覚悟だ。

「もっと頑張ってアピールしたいなと思います。もう来年に向けてのアピールもありますし、そこはしっかり、下積みしていって、やっていきたいなと思います」

 プロの厳しさに直面し、もがき苦しんだ過去を乗り越え、自らの殻を破りつつある23歳。泥臭く、誰よりも熱い情熱を胸に秘め、背番号「38」は今日も打席へ向かう。甲子園を沸かせたかつての輝きは、プロの舞台でさらに凄みを増し、新たな伝説の幕が開けようとしている。

(橋本健吾 / Kengo Hashimoto)

RECOMMEND

CATEGORY