出場60試合中、先発は34試合…代打、代走、守備固めでの出番も
数字で見る成績では表せない貢献度がある。DeNAの林琢真内野手は、まさにそんな選手かもしれない。
今季の出場はここまで60試合。そのうち先発したのは34試合で、守備位置は二塁が15試合、三塁が1試合、遊撃が18試合。代打で13試合、代走で5試合、守備固めで8試合と本当にさまざまな役割を担っている。
打率.225、1本塁打、16打点、6盗塁。派手な活躍は少ないかもしれないが、試合の節目節目で欠かせない仕事を遂行していることが多い。
「みんなそうだと思うんですけど、いい成績を残したいとか、いろいろあるじゃないですか。もちろん自分にもあったんですけど、そこを1回忘れようかなと思って。忘れようというか、気にしないと言った方がいいのかな。その1日、1試合をどうしたら勝てるか、そこを考えて過ごしています。やっぱり勝ったほうがうれしいですから」
難しい役回りへの“準備”について、林はこう明かす。しかしここにたどり着くまでには葛藤もあった。
「このまま年を取っていいのか、みたいな。家族の生活も懸かっていますし」
昨季は自己最多の95試合に出場。レギュラー奪取を誓った4年目の今季、遊撃候補の一人としてスタートし、牧秀悟内野手が右太腿裏の肉離れで4月25日に出場選手登録を外れてからは二塁で先発出場を続けていた。しかし打率.234だった5月15日、2軍落ちを告げられることになる。コンディション不良はなかった。7月15日に再昇格するまでの約2か月間、2軍で過ごした日々について率直な思いを語る。
ちょっと心折れていましたよね。ちょっとどころじゃないかも。最初は難しかったですし、つらかったです。正直、最初はまずやる気が出なくて……って感じだったんですけど、いろいろと考えて、このまま年を取っていっていいのか、みたいな。家族の生活も懸かっていますし、そこの気持ちでプレーのやる気がなくなるのは違うなって。もちろんレギュラーを目指していますけど、ちょっとずつでもチームに貢献しないといけないなと思いました」
2軍でも試合に出たり出なかったりの日々。モチベーションの維持に苦労しながらも、徐々に“気持ち”を取り戻していった。
そんな26歳に影響を与えたのは、人気野球漫画「MAJOR」の主人公・茂野吾郎だ。「アニメを一気見しました。茂野吾郎はチームの勝利のためにプレーしているんです。そういう姿って、やはりチームに伝染する。それを見て、こういう姿勢が大事だなって思って、インスパイアされたみたいな感じです」と晴れやかに笑った。
そして林なりに「チームの勝利のためになること」を考え、実践した。「スタメンで行くときだったら、8番とか7番だったら上位打線にどう回すか、この投手は早く降板させたいからとにかく球数を投げさせようとか。漠然と打席で自分の打ち方で打ちに行くのではなく、試合に勝てるためというところに結びつくようになりました」。
遠ざかった野球ノートも「もう一回、そういうところからちゃんとやろう」
打てる日も、打てない日もある。どんなに準備しても、出番すらこない日もある。それでも今はチームの勝利のために動き、「きょう、何かしら自分の成長に繋がることをしよう」と毎日を過ごしている。
もともと付けていた野球ノートは、2軍降格後「それもやりたくなくなっちゃって……」と一度は開くことすらやめてしまった。しかし「もう一回、そういうところからちゃんとやろうと思いました」と再びペンを取った。
その日できたこと、できなかったことを綴り、翌日やるべきことを記す。「簡単に書いているだけですけど、反省点をクリアにして、明日これをやろうみたいにしています」。頭を整理して翌日に臨むことは、心技体の安定と成長にも繋がっている。
9月6日の阪神戦(甲子園)後には、球団公式X(旧ツイッター)で「#腕太め」として投稿された写真が話題を呼んだ。「年々太くなっている実感はあります」とうなずくように、たくましさを増す肉体は何よりの努力の証でもある。
「これからもチームが勝つために、というところに自分は全力を注ぎます。スタメンで行こうがベンチスタートであろうが、それは変わりません」。勝ち投手やド派手な本塁打で試合を決める選手だけではない。林のような働きができる男もまた、勝利を目指すチームを支えている。
(町田利衣 / Rie Machida)