もう「ペライチ」と呼ばせない DeNA・古市尊が5年目のプロ初HR…西武時代の“師匠”から届いた愛あるメッセージ

人的補償で加入した古市尊が、雨の本拠地でプロ初アーチを放った【写真:井上学】人的補償で加入した古市尊が、雨の本拠地でプロ初アーチを放った【写真:井上学】

10日のヤクルト戦で念願の1発「人生で一番最高でした」

 桑原将志外野手のFA移籍に伴う人的補償として、昨季オフに西武から加入したDeNA・古市尊(ふるいち・たける)捕手が、新天地でアピールを続けている。好リードに首脳陣の評価はうなぎ上り。課題だった打撃もパワーアップし、日に日に存在感を増している。一方で、“師匠”と慕う西武の先輩捕手との交流が続いており、古巣へ感謝の気持ちを抱き続けている。

 10日に本拠地・横浜スタジアムで行われたヤクルト戦を、古市は「人生で一番最高でした」と振り返る。捕手として深沢鳳介投手の7回無失点の快投を引き出し、3回の打席では左翼席へプロ初本塁打となる1号ソロを放った。

 この日は、3歳上で2021年ドラフト同期の西武・古賀悠斗捕手の27歳の誕生日でもあった。古賀悠は支配下のドラフト3位で中大から、古市は育成ドラフト1位で四国アイランドリーグplus・徳島から西武入りしていた。

「古賀さんとは仲がよくて、いろいろ教えていただきました。僕の“師匠”だと思っています。ヒーローインタビュー後にはメッセージが届いていたという。

チームは快勝し、ヒーローに選ばれた(中央)【写真:井上学】チームは快勝し、ヒーローに選ばれた(中央)【写真:井上学】

「古賀さんのお陰で打てました、と(ヒーローインタビューで)言ったか?」

 嬉しい連絡に「『すみません、言っていません』と返しました」と明かした。「古賀さんの誕生日に1発打ててよかったです、とぜひ書いておいてください!」と記者に笑いかけた。

 昨季まで176センチ、74キロとやや線が細く、「ペライチ」と呼ばれていた。西武での4年間は1軍のみならず2軍でも本塁打を打ったことがなく(今季は2軍でも2本塁打)、それだけに1軍初アーチはなおさら感慨深い。

「実は昨年オフ、(香川県の)実家で食事の合間にも食べ物を口にして、体重を4キロくらい増やしました。餅をたくさん食べました」と明かす。「昨年のドラフトで西武がキャッチャーを1位指名した(明大の小島大河捕手)ということもあって、『やらないと終わる』と必死でした」と吐露。この増量がプロ初本塁打にも結びついたといえるだろう。

「昨年は1軍で打率も残せた(.444=18打数8安打)ので、力を付ければ何とかなるという思いがありました」と続け、「打球速度も、飛距離も上がりました」と手応えを感じている。もう“ペライチ”とは呼ばせない。

「スライダー、カットボールを狙ってくると予想して」カーブを要求

 そして年明けに思いがけず、人的補償としてDeNA移籍が決まった。5月に山本祐大捕手がトレードでソフトバンクへ移籍した後、1軍に初昇格し、出場機会を増やしている。特長はリード面。捕手出身である相川亮二監督は「バッターの狙い球、タイミングをよく観察していて、駆け引きの部分に良さがある」と古市を評価する。

 10日のヤクルト戦では、先発の深沢が7月18日の前回対戦で9回4安打完封していたことを踏まえ、試合前に配球の方針を練った。「前回はスライダー、カットボール中心で完封できた。今回は相手がそっち系を狙ってくると予想し、カーブを増やそうという話を(深沢)鳳介としました」と明かす。

 7回2死二、三塁のピンチでは、丸山和郁外野手に対し、カウント2-2から3球続けて116〜117キロのカーブを外角低めに集め、打ち損ないの投ゴロに仕留めた。「カーブは試合の序盤から良かったので、あの場面はカーブに懸けました」と笑みを浮かべた。

相川亮二監督は古市の“駆け引き”の上手さを評価する【写真:井上学】相川亮二監督は古市の“駆け引き”の上手さを評価する【写真:井上学】

 鶴岡賢二郎ベンチコーチは「鳳介のスライダーが決まっていなかったところで、カーブを多く使ったりして、普段と違うリードを見せてくれました。アクシデントや、いつも通りにいかない時に、引き出しがあるところが古市の武器だと思います」と高く評価した。

 古市は「もともと僕は打者の反応を見るのが下手でした。一昨年くらいから、西武の2軍バッテリーコーチをされていた中田祥多さん(現1軍バッテリーコーチ)に教えていただきながら練習してきました」と古巣への思いものぞかせる。

 現状では、打力で勝る2歳下の松尾汐恩捕手、プロ11年目・36歳のベテラン戸柱恭孝捕手と定位置争いを展開中。8〜10日のヤクルト3連戦では、1戦目に戸柱、2戦目に松尾、3戦目に古市が、それぞれ先発マスクをかぶった。

「チャンスだとは思いますが、力んでも結果は出ない。実力以上の力は出ないので、僕は僕らしく、与えられた役割をしっかりやっていけば、自ずと結果もついてくると思っています」。古市は自分に言い聞かせるように語り、足元を見つめた。

(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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