【田澤純一コラム第8回】 思いがけぬ昇格に感謝 田澤純一が明かす現在の心境「他人とは違う経験している」

エンゼルスに移籍し、大谷翔平の同僚となった田澤純一【写真:Getty Images】
エンゼルスに移籍し、大谷翔平の同僚となった田澤純一【写真:Getty Images】

2度クビを経験も…「拾ってくれた球団があることに感謝」

 こんにちは。エンゼルスの田澤純一です。9月1日にメジャーに昇格しました。マイナー契約だったので、昇格は全く予想していませんでした。8月31日の試合前に昇格を告げられ、翌日の朝、遠征地のヒューストンでチームに合流しました。もう1か月、野球ができるチャンスを与えてくれた球団には本当に感謝しています。

 エンゼルスと契約したのが7月13日。それから1か月ほど、アリゾナ州にある球団施設で与えられた投球プログラムに沿ったトレーニングを続けました。動作解析プログラムを使いながら、またメジャーで効果的なボールが投げられるようになるためには、体のどの部分を上手く使えばいいのか。そのためにはどんなトレーニングが必要なのか。エンゼルスで与えられたプログラムは、その指示が出される理由付けがしっかりされていて、僕にはとても合っています。

 昇格して最初の登板ではホームランを打たれてしまいましたが、2戦目以降は無失点に抑えられました。もちろん、結果が出ることに越したことはありませんが、今季だけ結果が出ればいいという付け焼き刃なものでは意味がありません。エンゼルスが用意してくれたものは、この先の野球人生を見据えたプログラムなので、これを信じて継続していこうと思います。僕もまだまだ投げ続けていきたいですから。

 練習で意識しているメカニックの修正を、いかに試合で意識せずに投げられるか。試合になると、どうしても昔の悪いクセが出てしまいます。練習で成功しても試合でできなければ意味がない。だからこそ、昇格して9月に投げさせてもらう意味は大きいです。3Aのままシーズンを終えていたら、試合で確認しながら修正を加えることはできません。

 ここ数年はずっと打たれている感覚が自分の中にあります。こういう時こそ基本に立ち返ってみようと、マウンド上で考えているのは、とにかくキャッチャーの構えたところに投げること。これだけです。ピッチャーがマウンド上でできることは、手に持った1球をキャッチャーが構えたミットに投げること。これはどのレベルで野球をやっていても変わりません。

 今年は3球団でプレーするという慌ただしいシーズンになってしまいました。2度クビになるなんて滅多にない経験ですし、もちろんならない方がいい。でも、そんな僕を拾ってくれた球団があり、野球を続けられることに、心から感謝しています。正直、かなり落ち込んだこともあります。ただ、「なんでこうなったんだろう?」「どうして?」と考えてみても、起きてしまったことは仕方ない。それよりも、これから先をどうしていくか、どう前に進んで行くかに目を向ける方が大切。どんなことも全部ひっくるめて、僕は他人とは違う経験をさせてもらっています。そういう野球人生を歩ませてもらっていることにも感謝です。

 応援して下さっている皆さんにご心配をお掛けすることの多かった今季ですが、これも僕に与えられた人生。来年、再来年と活躍するための準備期間だとプラスに捉えて、最後まで気を抜かずに投げ続けていきたいと思います。

(佐藤直子 / Naoko Sato)

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