「怪我なくプレーできているのが一番大きいというか…」
“偉業”を成し遂げた。DeNAの佐野恵太外野手が、15日の巨人戦(横浜)で4打点をマークし、7年連続50打点に到達した。2020年に首位打者、2022年に最多安打のタイトルを獲得したバットマンだが、年々研究されるプロ野球の世界で安定した結果を残し続けるのは至難の業。この記録には、佐野の凄みが凝縮されている。
「いやあ、何ですかね。でもやっぱり怪我なくプレーできているのが一番大きいというか。そこなのかなっていうのは改めて思いますね」
控えめに喜ぶが、今季は不調も経験した。6月は18試合で打率.206、0本塁打、5打点。それでも大崩れしないのが佐野の強みだろう。しかも昨季までは一塁で289試合、外野で719試合の出場だったが、今季は一塁で88試合、左翼で19試合に先発出場と内野に軸足を移しながら、変わらずバットでも牽引する。
「今までにもないような、体への反応だったりとかっていうのもありましたけど、もうたくさん試合に出させてもらっているので体的には慣れてきたかなって思っているところです。内野ならではの、外野と違う緊張感、試合に向かっていくのはすごくいい経験になっています」と胸を張った。
大村コーチも感嘆「地道なこと、派手じゃないことをずっと続けています」
9月は11試合で打率.306(36打数11安打)、2本塁打、10打点と好調。“爆上げ”のキッカケを明かす。
「8月の真ん中、終わりくらいにフォームを見直したのがあるかもしれないですね。あまり深くは言えないんですけど、タイミングの取り方とかを考えました」
そんな佐野を頼もしそうに見つめるのが、大村巌1軍打撃育成コーチだ。「やるべきこと、やろうと決めたことをずっと続けられる。己の決めたことを続けられる力は特に高いと思います。それが大崩れしない、多少不調でも元に戻せる理由だと思います」と賛辞を送った。
佐野がどんなときも、ずっと続けていることがある。ひとつは打席後にベンチでバットを磨くことだ。本塁打を打っても、チャンスで併殺に倒れても、ベンチの自席に戻れば表情を変えることなくバットを磨く。そして気持ちをリセットしたかのように、守備や次の打席に向けての準備を始める。
もうひとつが、試合後に室内練習場で行う打撃練習だ。いつも山本祐大捕手とともにバットを振っていたが、5月にソフトバンクへの電撃トレードでチームを去った。「寂しいですよ」と漏らしたこともあったが「でもプロ野球選手は結局ひとりですから」。今は一人で黙々とバットを振り、その日の課題と向き合ってから球場を後にする。
「人前や目立ったところでやるわけでもない。コーチに言われたからやるでもない。俺もいろいろな選手を見てきたけど、自分でやるべきことを確立してきた選手は強い。地道なこと、派手じゃないことをずっと続けていますよね」と大村コーチはうなった。
好調のチームは若手にも勢い「本当にいい刺激をもらっています」
メンタルの安定にも一目置く。「打席で浮き足立つことがないですよね。打ったあとも興奮もしない。うれしくても悔しくても、その場で終わっているというか切り替え力がすごい。ちょっと前に1週間くらい試合に(スタメンで)出ていないときがあったけど、落ち込んでいるかなと思って声をかけるけど、態度も顔にも出さない。恵太は本当に安定しています。かといって人を寄せ付けないとかもなく明るい性格だしね」。
一塁では安定した守備を見せる。一方で、一塁と三塁を守る筒香嘉智内野手、三塁の宮崎敏郎内野手も好調で、基本的には一塁と三塁を3人で回す形となっている。だから背番号7に慢心はない。大村コーチは「いい危機感があるんじゃないかな。主力だけど昨年から『俺はレギュラーで安泰だ』というような表情や態度を一回も見たことがないですね」と明かした。
佐野のバットと比例するように、チームも好調を維持している。「年下の選手も増えて試合に出るようになって、僕が当時の年齢のときよりも全然頼もしいなと思う選手がたくさんいますし、本当にいい刺激をもらっています。年下の選手、それから僕よりも全然先輩の選手も素晴らしいプレーをしていて、活気づいています」と手応えを口にする。
「僕の役割は別に何にも。まあチームを勢いづけられたらいいなとは思っています」。最後まで控えめながら、ニコッと笑った佐野。「続ける」という難しいことをやり抜いているからこそ、安定した結果に繋がっている。
(町田利衣 / Rie Machida)