高校では控え、Honda時代に左肘を2度手術…昨年ドラフト4位でプロ入り
オールドルーキーが、持ち味を発揮し始めた。DeNAの27歳左腕・片山皓心(ひろみ)投手。高校、大学を経て社会人野球のHondaに5年間在籍し、2025年ドラフト会議で4位指名を受けて念願のプロ入りを果たした。1年目の今季、7試合に先発し3勝2敗、防御率2.65の好成績をマークしている。
18日のヤクルト戦(横浜)に先発した片山は、6回まで4四死球を与えながら、打たせて取る投球でノーヒットに抑えていた。7回先頭のホセ・オスナ内野手に三遊間へ内野安打され、“ノー・ノー”は途切れたが、7回114球を投げて2安打無失点の快投を演じたのだった。
ストレートの最速は146キロだが、チェンジアップ、スライダー、カーブ、ツーシーム、カットボールを駆使した。アマチュア時代の長いキャリアから得た投球術に、相川亮二監督は「それほど球速は出ないが、怖がらずにストレートを投げ込めるし、緩急も使える。打者と駆け引きができる投手ですね」と感嘆する。
プロ入りまでに、長く険しい道のりを歩んできた。茨城・日立一高時代は控え投手。桐蔭横浜大で成長したが、4年生の春、新型コロナウイルスの感染拡大により神奈川大学野球リーグが中止となった。秋には6勝1敗、リーグトップの防御率1.39をマークし、最優秀投手賞に輝いたが、プロには届かなかった。「もし春のリーグがあれば、プロ入りも考えられたかな……という思いはありました」と振り返る。
Hondaでは、1年目の夏に日本選手権で左のエースとしてベスト4入りに貢献。しかし、その後に左肘の手術を2度受け、5年間在籍することになる。症状について、こう説明する。
「上腕骨の疲労骨折でした。1度目は社会人1年目の終盤で、2年目にドラフト解禁が控えていたので、なるべく早く復帰できる手術を選んでいただきました。骨をスクリュー(医療用のネジ)でつなぐものでしたが、結果的に骨が付かず、3年目の5月に腰の腸骨を移植する大きな手術を受けました」
プロ初登板で7失点炎上も…2軍で球種を増やして再昇格
病院で2度目の手術を勧められた時には、チームに持ち帰って検討した。「チームに残れなくなるかもしれないと思いましたから」というほど追い込まれた。「当時の監督の開田(ひらきだ)成幸さんに手術を許可していただき、チームに残していただいたことがありがたくて、しばらくはHondaで活躍できるようになることだけを考えました」。
2度目の手術後は8か月間ボールを投げられず、実戦登板には社会人4年目の4月まで1年近くを要した。現役引退後もHondaに残り、定年まで全うする人生設計もちらついていた社会人5年目の10月、DeNAから4位指名を受けた。「プロ入りは自分ではコントロールできません。自分が行きたいと言っても、選んでもらわないと行けないものだとしみじみ思いました」と感慨深げだ。
プロ初登板は4月25日。本拠地での巨人戦だったが、先発して2回2/3を9安打7失点と打ち込まれた。翌26日に出場選手登録を抹消され、7月19日に再び1軍へ呼ばれるまで84日間かかった。小杉陽太1軍チーフ投手戦術・育成コーチは「データを分析したところ、球種を増やした方がいいということになり、2軍の入来(祐作2軍チーフ投手戦術・育成コーチ)さんの下で取り組んでもらいました」と明かす。
片山自身「今の球種の数ではキツイとアドバイスをいただき、5月くらいからツーシーム、カットボールを本格的に投げ始めました」とうなずく。「球種の選択肢が増えると、相手打者は何が来るのかと迷いますし、大きく変化しなくても、回転が違うだけでも、打者を『あれ?』と思わせることができます」と効果を実感している。
小杉コーチは「決してコントロールは悪くないのですが、1軍に来ると、『いいところに投げないと』と意識して1試合に3~4個の四球を与えてしまう。それが減れば、球数をマネジメントすることができて、もっと長いイニングを投げられると思います」と課題を挙げる。
さらに「ルーキーといっても、年齢的に育成対象の選手とは違う。1年目からやってもらいたいと期待していましたし、実際によくやっていて、このままパフォーマンスを維持してほしいと思っています」と続けた。1年目から結果を求められる立場であることは、片山本人も自覚している。
新車購入2週間で念願のドラフト指名「人間が変わったと言われたくない」
5年間在籍したHonda製の車で、今も“通勤”している。「昨年のドラフト1か月前くらいが車検の時期で、買い換えることにしました。新車で買ってから2週間くらいで、ドラフトにかかることができました」という縁起のいい車である。
「気に入っていますし、Honda時代の同僚に『人間が変わっちゃったな』と言われたくないので、なるべく長く乗りたいと思います」
ハンドルを握るたびに、社会人時代の苦労と教訓を頭の中で反芻しているのだろう。
(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)