オリ育成マシューが“別人”のような風貌になったワケ 中嶋聡SDからまさかの一言…振り払った雑念、手にした「財産」

育成ドラフト2位から2軍で守護神を務めるまでになったオリックス新人のマシュー【写真:加治屋友輝】育成ドラフト2位から2軍で守護神を務めるまでになったオリックス新人のマシュー【写真:加治屋友輝】

オリックスの育成ドラ2ルーキー、マシューはリーグ2位の11セーブ

 2軍で守護神を務めた育成ルーキーが、充実のシーズンを終えた。オリックスの育成ドラフト2位ルーキー、マシュー(シャピロ・マシュー・一郎)投手だ。ファーム・リーグ西地区2位の11セーブをマークした23歳は「抑えを任されるとも思わなかったので、すごいいい経験させてもらった」と、充実感を口にした。

 150キロを超える直球と、多彩な変化球を交え、25試合に登板し0勝0敗11セーブ、防御率2.28の成績を残し、来シーズンの支配下登録に向け猛アピールした。だが、新人離れしているのは投球だけではない。もみあげから顎までを髭で覆うワイルドなスタイル。威風堂々とした風貌は、ベテランのような貫禄を漂わせている。

 新人選手の入団会見では長髪に、髭一つないスタイル。美肌が際立ち、本人も「シュッとした感じでしたよね」と口にするほど。国学院栃木高、国学院大、独立リーグの日本海リーグ・富山でも“ワイルド系”ではなかった。ではなぜ、この“トレードマーク”が誕生したのか。その裏には、プロ1年目らしい、どこかコミカルな葛藤があった。

「最初は本当に、(今季加入した助っ人)ボブ・シーモアさんに顔が似ているって言われたんですよ。マジで『ボブ』って呼ばれるくらい似ていて。僕自身は全然悪い気はしなかったんですが、相手が気を遣うんじゃないかなと……。僕はまだ1年目ですから区別をつけた方がいいんじゃないかみたいな空気があったんです」

“短髪髭”スタイルになったきっかけは…中嶋SDと先輩の一言

 転機は春季キャンプ。ケータリングで食事していた時のことだ。偶然、同じ席だった中嶋聡SD(前監督)から、ボソッと声をかけられた。

「お前、ちょっと髭生やせや」。思いがけない提案に「似合いますかね?」と問い返すと、「やってみなわからんやろ」と背中を押された。

 春季キャンプが終わると、長髪にも“指摘”が入った。今度は先輩投手から「髪切ったほうがいいんちゃう?」。さらに、日米通算258セーブ、204ホールドを誇り、今季限りで現役引退する平野佳寿投手兼任コーチから「長髪やったら投げ終わった時に帽子が取れるぞ」とアドバイスを受け、“短髪髭スタイル”が生まれた。

現在の風貌とまるで別人…新人入団発表記者会見でのマシュー【写真:産経新聞社】現在の風貌とまるで別人…新人入団発表記者会見でのマシュー【写真:産経新聞社】

「皆さんにアドバイスを受けたので(笑)。じゃあ、とりあえずやってみようかなと。短髪にして、髭を生やしたら『おもろいぞ』と言われて、このスタイルになりました」

 端正な顔立ちを隠すかのように髭を蓄え、泥臭くマウンドに上がる。見た目を気にする選手も多い現代のプロ野球界にあって、マシューは明らかに違う方向を向いていた。「見た目とかそっち系は気にならないし、しない方ですね」。そう笑い飛ばすが、勝負の世界において、風貌がもたらす“副産物”には気づき始めていた。

「自分では全く意識していなかったんですが、そういう威圧感みたいなものを感じる人と、感じない人が絶対にいると思うんです。でも、もし感じてくれる人がいるんだったら、それは武器になるのかなと。投げて少しずつ結果が出てきて、『雰囲気が出てきたな』と言われた時は、『おお、いいんじゃないの』と思いましたね」

1年目からタイトル争いを繰り広げ、手にした“財産”

 マウンドでの度胸と威圧感。それはクローザーとして必要不可欠なものだ。極限のプレッシャーは、実際にマウンドに立った投手にしかわからないものがある。シーズン終盤、マシューは2軍でのセーブ王争いに加わった。

「将来、自分がどうなるかはわからないですが、タイトル争いをしていく中で、自分を見失うか見失わないか。実際、9月に入って少し自分を見失いかけていた部分があったんです。どうしてもプロ野球なんで、シーズン終盤になってくると個人タイトルに目がいってしまうじゃないですか」

 疲労がピークに達し、フォームが崩れやすい時期でもある。投球の歯車を狂わせかけたが、そこから立て直す修正力が、守護神を任された育成ルーキーの真骨頂だった。

「いざ、もう一回マウンドに立って投げた時、戻ってきた感覚がありました。どっちかと言ったら『セーブを取れればいいや』じゃなくて、いい意味で内容を求めていったら、逆にいい方向にいったんです。個人タイトルがかかっている時でも、チームの勝利にしっかり貢献できれば、結果的にいい成績が出る。この1か月弱でそれを感じ取れたのは、一番大きかったですね」

迫力ある投球を見せるマシュー【写真:加治屋友輝】迫力ある投球を見せるマシュー【写真:加治屋友輝】

 誰の助けも借りられない孤独なマウンド。1点差の痺れる場面でも「いい意味で入り込めた」と語る口調には、確かな自信が宿っていた。タイトルには届かなかったが、ヒリヒリとする争いの中で得た収穫は、何物にも代えがたい「財産」となった。

 激動のレギュラーシーズンを終え、舞台はフェニックス・リーグ、秋季キャンプへと移っていく。充実のルーキーイヤーを過ごした右腕に「このトレードマークの髭はずっと継続するのか」と尋ねてみた。すると、屈託のない笑顔を見せた。

「その時の成り行きですね。自分の気持ちと気分で、気分転換するかもしれない。いきなりまた変わっているかもしれないですよ(笑)。ちょっと鬱陶しくなってきたら、サッと切ると思います。伸ばすのも、整えるのが面倒くさくて諦めた部分もあるんで」

 どこまでも自然体で、飾らない。だが、いざマウンドに上がれば、打者をねじ伏せる闘争心を剥き出しにする。眩しいほどのスポットライトを浴びる1軍の舞台を夢見て、背番号「002」は黙々と右腕を振る。

(橋本健吾 / Kengo Hashimoto)

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