秋季高校野球神奈川大会は10月1日に決勝が行われ、慶応が横浜を5-4で下し、10年ぶり6度目の優勝を飾った。慶応と横浜は10月17日から群馬県で開催される関東大会に出場し、来春選抜をかけた戦いに挑む。
8月20日まで夏の甲子園を戦い、さらに新チームのキャプテンである川上慧とエースの小林鉄三郎がU-18日本代表に選ばれ、全体の始動が遅れる中で「関東大会出場」というひとつの結果を出すことができた。県内の連勝記録は43で止まったが、次のステージには進める。
「この学年は入学してからまだ(県内で)負けていなかったので、初めて負けたので、これを生かすも殺すも自分たち次第。ぼく自身も悔しさが今こみ上げてきているんですけど、またそれで強くなれればいいなと思っています」
「鉄(小林鉄三郎)は投げることはいいですけど、フィールディングでアウトにしていれば何でもないプレー。あとは、気負ってブレーキになる選手もいて、(主力が)機能しないときに、誰が機能するかというところがちょっと弱かった。チームの弱さがすごくはっきりとわかった秋季大会でした」
3-0で迎えた4回裏の守りで、小林がバント処理で2度続けて悪送球を放り、取れるアウトを取れずに2失点。5回裏には、慶応の渡辺英亜に逆転2ランを打たれ、主導権を失った。
今大会、村田監督が何度も口にしていたのが「徹底」というキーワードだった。やるべきことをやる。決勝前のミーティングでも、「徹底したものが勝つよ」と伝えていたが、徹底しきれなかった。
大会を通して、村田監督のコメントを聞く中で、もっとも印象に残っているのが準決勝の武相戦だ。5番に入った脇山魁音が3打席目に同点適時打、さらに4打席目に武相を突き放す適時打を放ち、夏の甲子園経験者としてチームをけん引した。
が、試合後に脇山の成長について尋ねると、先に口をついたのが第1打席の凡退のことだった。初回2死一、三塁、先制のチャンスで回ってきたが、初球インコースのストレートに差し込まれサードゴロに終わっていた。
「脇山はもう1個、スタートを早くしてほしい。初回は、真っすぐをいけと言っていたんですけど、中途半端なバッティングでサードゴロ。スタートの入りが弱い。そこが非常に弱いなと思います」
脇山自身も2度の適時打よりも、1打席目の内容を悔いていた。
「正直、あの1打席目がすべて。ふがいない結果に終わってしまって。1打席目で勝負ができないと勝ち続けられない。1打席目でいけなかったことは、すごい後悔というか、準備不足というか、まだまだです」
チームが求めるレベルは高い。甲子園で勝つことが基準になっている。
慶応との決勝でも、チャンスで甘いファーストストライクを仕留め切れずに後手に回る場面があった。
前チームから続く「先手必勝」を、今後どこまで体現できるか。指揮官は「入りの強さ」を求め続ける。
主将・川上慧「敗因は気持ちの持ちよう」
新チームは、主力がいないところから始まっている。チームの底上げを狙って、川上と小林をあえて「U18アジア選手権」に送り出した。神奈川高野連の配慮もあり、横浜のみ3回戦スタートで、しかも2人の帰国を待って、平日に試合が組まれた(3回戦は2人ともに試合には出場せず)。
「甲子園だけがすべてではないので。内心、組み合わせ抽選はヒヤヒヤしていたんですけど。代表に行った2人と、新チームで練習している選手たちがお互いにWinWinの関係になれればいいと思っていました」(村田監督)
新主将の川上は攻守でチームを引っ張り続けた。準決勝では5回を終えて0-1の劣勢だったが、6回裏に先頭の川上が追い込まれてからセンター前ヒットを放ち、センターのファンブルを逃さずに好走塁で二塁へ。これをきっかけに逆転に成功し、村田監督は「あのプレーがすべてだった」と称えた。
決勝での敗戦後、川上は「敗因は気持ちの持ちよう」と悔しさを滲ませていた。
「武相に勝って、気が1個抜けてしまったというか、そういう部分が見受けられた。入学してから県内でも負けたことがなかったので、勝てるもんだと思って入ってしまった。本当に悔しい」
川上自身は、この代の特徴をどのように感じているか。
「2年生の仲の良さがいい部分ではあるんですけど、それが違った方向にいったら一瞬で崩れるチームだと思います。良い方向に持っていければ爆発力があるというか、波に乗っていけると思っています」
「違った方向」とはどういう意味か。
「なれ合いにならないように、どれだけ厳しく言い合えるか。そういうところを、自分が中心になって引き締めていかないといけないと思っています」
渡邉陽介コーチが興味深いことを話していた。「阿部葉太世代、小野舜友世代とはまた違う川上世代の良さは?」と尋ねると、こう教えてくれた。
「川上が超真面目なので、規律に関してはかなり良くなると思います。副キャプテンの大矢(球道)もしっかりと言える選手です」
徹底と規律。勝ち続けるチームを作るうえで、大きなカギを握るのは間違いないだろう。
エース小林鉄三郎が国際舞台で得た学び
小林鉄三郎は、決勝でこそ自らの守りのミスもあって崩れたが、準々決勝、準決勝では連続完投を果たし、実力の高さを見せた。特に準々決勝の桐光学園戦では、8回(完投)を被安打4、奪三振13、与四球1とほぼ完ぺきなピッチングを見せた。
「ストレートも変化球も過去イチ良かったかなと思うぐらいの出来でした」
桐光学園戦で印象に残るのが、4回表一死一塁、1ボール2ストライクから右打者の近藤陽太に投じた1球だ。外に沈む128キロのチェンジアップ。そこまで、チェンジアップを操れていなかったが、この1球からキレ味が増し、7回にも近藤からチェンジアップで空振り三振を奪った。
「序盤は(チェンジアップが)あまり良くなかったんですけど、4回の三振をきっかけに結構まとまってきたかなって。浮いてもいいので、ストライクゾーンに腕を振って投げることを意識しました」
U18アジア選手権で韓国の強打者と対戦する中で、「ストレートを張っている打者に、チェンジアップはより効果がある」と実感したという。
決勝の慶応戦では疲れもあったか、このチェンジアップがなかなか決まらずに、右打者を抑えるのに苦しんだ。
5回裏、渡辺英亜に打たれた逆転2ランは、1ボール2ストライクから外に投じたチェンジアップを見極められたあと、インコースを突いたストレートが甘く入り、完璧に捉えられた一打だった。
8日間で3試合目の先発で、秋にしてはタフな日程になったが、村田監督はエースを起用した理由を明かす。
「今日はエースで優勝する試合。投げたことで課題が見えて、鉄(小林)もまた成長できる材料が出たので、投げさせて良かったなと思います」
決勝では右打者のときに、スライダーが武器の右腕・福井那留をワンポイントで起用したが、ここまでの使い方を見ると、関東大会でも小林が中心になるだろう。
「関東大会で2つ勝つ。勝ち切れないと甲子園には行けないというわかりやすい順位なので、しっかりと準備をしていきたいと思います」
県大会2位通過の順位を考えると、選抜出場には関東大会ベスト4入りが必須。ここからの2週間で、やるべきことをいかに徹底できるか。悔しい敗戦を糧にして、関東大会に臨む。