石川雅規と山本由伸に共通する「5分の1」 燕OBが明かす凄み…“小さな大投手”を支えた「生命線」

元盗塁王の飯田哲也氏が語る石川雅規の魅力「もの凄く勝ち気」
プロ野球で現役最年長だった46歳のヤクルト・石川雅規投手が3日、神宮球場で行われた中日戦で最後の登板を果たし、現役を引退した。ヤクルトで盗塁王を獲得するなど走攻守3拍子揃った外野手として活躍した野球評論家の飯田哲也氏は、同僚として、そしてコーチとして左腕の姿を見守ってきた。「25年もでしょ。よくやったよ。今はもう、ただただそう言ってあげたいですね」。167センチの石川が、プロで長く活躍できた秘訣を聞いた。
自由獲得枠で入団した石川は2002年の1年目から12勝をあげ、新人王に輝いた。飯田氏も「こりゃあ、やるなー」と即戦力の働きに驚いたという。ただ、当時から打者を圧倒するような球速はなかった。プロは相手から研究し尽くされるため、毎年その上を行かなければ生き残れない。弱肉強食の世界で、昨季までプロ野球新記録となる24年連続白星をマーク。通算の勝利数を188まで積み上げた。“小さな大投手”は、何が良かったのか。
飯田氏は、まず“ハートの強さ”を挙げた。石川は漫画サザエさんに登場するキャラクターに似ていることから、“カツオ”と呼ばれる優男だ。「ああ見えて、実はもの凄く勝ち気なんですよ。不甲斐ない時には、一人で怒っている。でも絶対に外には出さないし、向かわない。首脳陣に対しての受け答えはちゃんとしているし、チームメートとのやり取りも穏やか。だけど怒っている。僕は雰囲気で分かりました。責任感が強くてね。体調が悪くても、無理して投げてくれたり」。
“小さい”と言われる点にも触れる。飯田氏も大柄ではなかった。「僕は体の大きい、小さいは全く関係ないと思ってやってきた。石川もそうだと思います。でっかいヤツはでかいなりの、小さいヤツにもそれなりの武器がある。小回りが利くだとか。戦い方があるんです」と強調する。石川は、どんな形で戦ってきたのだろう。
「石川はですね、“これ”という絶対的なボールがないでしょ。それが逆にいいんですよ。それこそが武器。2分の1のタイプでなくて5分の1なんです」

石川の今後にも期待「伝えられることがある」
飯田氏はドジャースで活躍する2人の日本人投手を例に出し説明した。「大谷(翔平)といったら極端に言えばスイーパーとストレート。打者が狙い球を絞るとすれば、2分の1じゃないですか。山本(由伸)はカーブやスプリットに始まり、球種が豊富。5分の1ぐらいになっちゃう。石川は山本と同じ。持ち球が沢山あって制球がいいし、球のキレも素晴らしい。変幻自在にボールを操る。相手は簡単には対応ができません。もっとも、大谷は球威があって抑え込めちゃうんだけどね」。
球界の歴史を辿ると、石川だけでなく技巧派左腕の“長寿”が目立つ。50歳までマウンドに立った山本昌氏(元中日)、工藤公康氏(元西武など)、和田毅氏(元ソフトバンクなど)らだ。飯田氏は「左が多いのは何ででしょうね」と不思議に思いつつ、理由を推測する。「みんな剛腕ではないですね。剛腕だとスピードが落ちると終わり。右バッターが多い中、チェンジアップ、シンカーがないと多分厳しい。サウスポーの生命線だと考えます。現役では阪神の大竹(耕太郎)、日本ハムの加藤(貴之)がじわじわと長くできそうな気がしますね」。
飯田氏は、石川とはLINEで頻繁にやり取りしているという。8月27日の巨人戦(神宮)では、打ち込まれ負傷降板。時を置かずして本人から「決断」の連絡が届いた。
「そうか、来たか。来てしまったのか、と。僕は5、6年前からずーっと辞めるな、できる内は投げ続けろと言ってました。200勝までいって欲しかったけど……。スピードボールが全盛のなか、こんなに長い間、よく頑張りました。ピッチャーのお手本ですよ」
労うと同時に石川の今後も楽しみにしている。「彼だから伝えられることがいっぱいあると思います。あれだけの経験をしてきたのだから。苦労もあっただろうし。いいコーチ、指導者になりますよ」。
(西村大輔 / Taisuke Nishimura)