“山川外し”で3連覇、王者ソフトバンクの真の凄さ 小久保監督の巧みな采配、他球団との差

前田悠と正木が投打の「立役者」…山川の不在が目立たず
長かったレギュラーシーズンが終了し、10日からCSファーストステージが開幕。パ・リーグで3連覇を果たしたソフトバンクは西武-日本ハムの勝者と対戦する。2位の西武に11.5ゲーム差をつけて独走した絶対王者は果たして何が凄いのか。盗塁王を獲得するなどヤクルト、楽天で走攻守3拍子揃った外野手として活躍し、現役引退後はソフトバンクでもコーチを務めた野球評論家の飯田哲也氏が優勝の要因を探る。
飯田氏は「シーズン前は正直、大丈夫かな? って思っていました。嬉しい誤算でした」と振り返る。先発投手陣の軸だった有原航平が日本ハムへ移り、リバン・モイネロもWBCに参加した影響などで出遅れた。それでも前田悠伍、大津亮介、松本晴、上茶谷大河らが奮闘した。中でも、開幕から12連勝をマークした高卒3年目のサウスポー前田悠を「立役者になりました」と絶賛する。
「ボールに力がありますし、四球もそんなに出さないから大崩れしない。“荒れながら、まとまっている”みたいなピッチャー。味方打線が強力なので、少ない失点で抑えていけば勝てるというのがありました。勝ちが付けば自信もついてくる。でも彼の場合、1試合1試合を必死に投げただけだと思う。一生懸命さが伝わってくる。白星が増えても変に色気づかなかったし、そこが良かったんじゃないでしょうか」
投手陣の「立役者」が前田悠ならば、打線は誰なのだろう。飯田氏は「正木(智也外野手)でしょう。正木様様ですよ」と断言する。右のスラッガー候補が大卒5年目にして28本塁打、出塁率.372、OPS.888と花開いた。
「ホームランをあれだけ打つし、本来は1番バッターのタイプじゃない。小久保(裕紀)監督が打順の組み方を色々やってみたら、正木が結果を残した。それで変えられなくなった感じがします。だけど四球も取れて出塁率が高いので、1番の役割もきちんと果たしていますからね」
小久保監督は1軍の指揮官3年目で3連覇。飯田氏は、采配の変化をその正木の台頭に見る。「山川(穂高内野手)から正木にスパッと切り替えました」。実績がある山川に対し、昨シーズンは不調の時期も辛抱強く起用した。しかし、今季は違った。
「山川を外して2軍で調整させるというのは、他の監督ならなかなかできない。小久保監督の考えを代弁するならば、やっぱり山川は右の長距離砲で居て欲しい。本当は使いたい。それでも2軍に落としたのは、『このままじゃいかん』『はい上がってきてくれ』と山川へのメッセージ。山川が打っていれば、正木は出てきてないかもしれない。山川の1軍不在が長くても目立たなかったのが、ホークスの凄さです」

CSルールが変更…2勝のアドバンテージは「余計に重圧かも」
主力だけでなく、次から次へと好選手が出現するソフトバンク。豊富な陣容が際立つ。ところが、飯田氏は「他のチームは、『あれだけの戦力があれば強いよ』と思っている内は駄目。ホークスに勝てないですよ。戦力だけじゃありません」と強調する。どんな点なのか。
「何でも当たり前の事を当たり前にやる、できるんです。例えば走塁。柳田(悠岐外野手)、牧原(大成内野手)らベテラン、中堅でも一生懸命走る。若手の手本になる。伝統ですよね。よそのチームは、右中間に打球がいったら最初から『ツーベースでいいや』みたいな走塁をしている事がいっぱいある。ホークスは三塁まで狙う姿勢を見せ、実際にいく。そりゃあ、点が取れますよ。変な言い方をすると、できるのにやらないチームが多い。他球団の監督、コーチも見ていて『あれだよな』と彼我(ひが)の差を痛感しているはずです」
ソフトバンクにとって独走Vの意義は大きい。クライマックスシリーズ(CS)は、今年からファイナルステージのルールが改定された。ファーストステージを勝ち上がったチームが1位と10ゲーム差以上離れている場合、1位のアドバンテージが「1勝」から「2勝」に増えた。だが、飯田氏はCSは全く別物と捉え、王者といえど難しい戦いと考える。
「短期決戦は、本当にわからないです。特にCSは。これまでもリーグ優勝したチームは、『優勝したのに日本シリーズに出れないと……。負けられない』と重圧も懸かっていたでしょう。ホークスはプラス1勝のアドバンテージで、余計に『負けられない』気持ちが強くなるかも。日本シリーズの方が楽しいのでは。優勝チームがシーズンを通して一番“しびれる”のは、CSだと思いますよ」
(西村大輔 / Taisuke Nishimura)