阪神・福島圭音が忘れられぬ“代走・植田” 韋駄天が味わった屈辱…練習の鬼が描く成長曲線「まだまだ途中ですから」

クライマックスシリーズを経験した阪神・福島圭音【写真:井上学】クライマックスシリーズを経験した阪神・福島圭音【写真:井上学】

CSでは3試合に出場したが“爪痕”は残せず

「やっぱりピリピリしますね」。阪神・福島圭音(けいん)外野手は初めて身を置いたクライマックスシリーズ(CS)の空気を、そんな言葉で表現していた。

「いい緊張になってくれればいいんですが、雰囲気も違いますし、シーズン中とは違うものを感じています」

 球団史上初のリーグ連覇を果たした阪神の一員として臨んだDeNAとのCSファイナルステージ。だが、結果はまさかの4連敗に終わった。17日の第4戦(甲子園)に5-8で敗れ、日本シリーズ出場という財産を逃した。

 藤川阪神にとっても、福島自身にとっても厳しい秋だった。第1戦では9回に坂本誠志郎捕手の代走として出場。第2戦では8回に高橋遥人投手の代打として打席に立ったが空振り三振。第3戦でも8回に代打で起用されたものの、伊勢大夢投手の前に空振り三振に倒れた。

 3試合に出場し2打数無安打2三振。持ち味の快足を生かす場面も限られ、爪痕を残すほどの存在感を出すことは叶わなかった。ただ、その結果だけで福島の2026年を評価することはできない。

 2023年育成ドラフト2位で阪神に入団。今春に支配下登録を勝ち取り、初めて1軍の舞台に立った。レギュラーシーズンでは71試合に出場し打率.228、7盗塁。先発出場だけでなく代打、代走、守備固めと、さまざまな役割を経験した。

4月に守備で連係ミス、7月にはまさかの代走を告げられた

 大きな転機となったのは4月28日のヤクルト戦(神宮)だった。故障で離脱した近本光司の代役として「1番・中堅」でスタメン出場。2回には右翼・森下翔太外野手との連係がうまくいかず、右中間への飛球を安打としてしまった。

右中間の打球が捕れなかった福島圭音(左)と森下翔太【写真提供:産経新聞社】右中間の打球が捕れなかった福島圭音(左)と森下翔太【写真提供:産経新聞社】

「自分に求められていることを考えると、やってはいけないプレーだった」。当時の福島は深く反省した。だが、5回には左中間フェンス直撃の適時二塁打、9回にも中前打を放ち複数安打を記録。守備での苦い経験と打席で結果を残す喜びを同じ試合で味わった。

 そして7月24日の巨人戦(甲子園)。当時の現在地を象徴する場面が訪れた。1点を追う9回1死から代打で安打を記録したものの、直後に藤川球児監督は福島に代えて植田海内野手を代走に送った。俊足を武器に育成からはい上がってきた福島に、同じく足を武器とする植田が代走として起用されたのだ。

 テレビ解説を務めた岡田彰布オーナー付顧問も「福島に代走かあ。変わらんけどなあ。経験かな」と、その采配に言及した。

 単純な走力の比較ではない。スタートの判断、投手のクセを読む力、相手バッテリーへの重圧。勝負どころで走塁を任されるには、速さだけでは足りないという現実を突きつけられる場面でもあった。

前を向く“練習の鬼”…2027年の躍動へ

 その植田はCSでもダブルスチールなどで存在感を示した。先輩のプレーについて尋ねられた福島は「今までの自分の経験を活かしてプレーできればと思います」と反応した。続けて「今シーズンはレギュラーシーズンで沢山、いろんな経験をさせてもらいましたから。練習でやった事、試合で経験した事しか出せませんから、自分の出番が来ればその経験を活かしてプレーに出せればと思っています」という言葉を残した。大舞台だからといって、突然できなかったことができるようになるわけではない。だからこそ、日々の練習と実戦での経験が重要になる。

来季は飛躍の1年に【写真:栗木一考】来季は飛躍の1年に【写真:栗木一考】

 甲子園特有の外野の風への対応についても、福島の答えは一貫していた。「そういうのも練習でやった事をしっかり出せればと思っています」。その言葉が示した通り、福島にもCSで出番が与えられた。しかし、思うような結果を残すことはできなかった。

 レギュラーシーズンで重ねた短い経験だけでは、まだ届かないものがある。若手、中堅、ベテランと長い年月をかけて信頼を積み重ねて、数々の名選手たちは成長を遂げてきた。“練習の鬼”と言われる福島も進化の途上にある。次のチャンスをつかむための積み重ねを毎日、コツコツ――。

「CSや全てが終わってから、いいシーズンだったなと思えるように頑張ります」

 日本一への道は甲子園で途絶えてしまった。本人が望んだ形で2026年を締めくくることはできなかったかもしれない。それでも育成から支配下へ、1軍へと駆け上がった1年の価値が失われるわけではない。

 ピリピリする大舞台の勝負どころで仕事を任せられる存在になれるのか。初めてのCSで味わった悔しさも、福島にとっては新たな経験だ。「まだまだ途中ですから」。その言葉の続きを、来季はグラウンドで見せてほしい。

(楊枝秀基 / HideKi Youji)

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