5月以降に38本塁打のロッテ山口航輝 球団記録を更新した「幕張の和製大砲」覚醒のワケ

113試合の出場ながら、シーズン最終戦まで本塁打王獲得の可能性を残した
ロッテの山口航輝外野手がシーズン38本塁打を放ち、最終戦までタイトル争いを繰り広げる活躍を見せた。113試合の出場ながら、本塁打王に輝いたソフトバンクの栗原陵矢内野手とは2本差。驚異的な数字が今季の山口の“特異性”を物語っている。
高卒3年目の2021年に1軍デビューを果たし9本塁打を記録し、2022年は102試合で16本塁打をマーク。2023年には初の規定打席に到達して14本塁打と着実に実績を重ねた。しかし2024年は51試合で2本塁打と不振に苦しみ、2025年も35試合の出場にとどまった。それでも2025年は8月19日から21日にかけて4打席連続本塁打を放つなど、112打席で7本塁打24打点を記録し、限られた打席でインパクトを残した。
迎えた2026年、自己最多の倍以上となる、38本塁打を放つ進歩を遂げる。2004年にベニー・アグバヤニ氏が記録した35本を塗り替え、千葉移転後の球団最多本塁打記録を更新した。豪快なアーチを幾度となく描いただけでなく勝負強さも際立ち、シーズン終盤は1番や2番での起用が増えたなかでリーグ4位の81打点を記録。年間4度のサヨナラ打を放つなど、主砲として打線を力強くけん引した。
長打に関する指標では軒並みリーグトップの数字を記録
数値の面でも劇的な成長が表れている。今季の長打率は.602と、キャリア平均の.441を大幅に更新。長打率から単打の影響を省いた「ISO」はリーグトップの.325と抜群の水準にあり、長打力においてはまさに右に出る者がいなかった。
本塁打を1本打つのに必要な打数を示す「AB/HR」も、リーグトップの10.84を記録。栗原のAB/HRも13.48と優れた成績だったが、山口はそれを2.5打席以上速いペースで本塁打を量産した。
選球眼に関する指標では、打率と出塁率の差を示す「IsoD」が通算.062、四球を三振で割った「BB/K」も.307と控えめな水準にとどまる。2024年以降は両指標ともに低い数値となっており、積極的な打撃スタイルを取り始めていることがわかる。今季もIsoDは.052、BB/Kは.252と好球必打のスタイルを貫きながら、打率は自己最高の.277をマーク。出塁率もキャリア最高の.329へ向上させた。
長打率の上昇と出塁率の改善により、OPSはキャリア平均(.743)を大幅に上回る.931を記録。規定打席到達者ではソフトバンクの近藤健介外野手、日本ハムのフランミル・レイエス外野手に次ぐ3位とトップクラスの生産性を発揮した。インプレーとなった打球が安打になる割合「BABIP」は、キャリア平均.272と、基準値とされる.300を大きく下回っている。BABIPは運に左右されやすい指標であると考えられているだけに、運に恵まれない側面があることが示されている。
右打者で力強くバットを振り抜くスタイルは内野安打が少ない傾向にあり、本塁打になった打球はBABIPの計算に含まれない点は考慮する必要がある。だが、今季のBABIPも.283と基準値を下回る状況にありながら、本塁打のみならず打率に関してもキャリアハイを記録したことが打者としての大きな成長を物語っている。
5月以降だけで38本塁打…最終盤に見せた怒涛のラストスパート
月別成績を見ると、4月終了時点では本塁打0本、打率.077と苦しんでいた。しかし5月に17試合で6本塁打、OPS.967と復調すると、そこから6か月連続で5本塁打以上を記録。5月以降だけで38本塁打と驚異的なペースで量産した。
OPSも5月以降は6か月連続で.800以上を維持し、そのうち9月を除く5か月で.960以上と極めて高い打撃生産性をキープした。特に8月は月間10本塁打、打率.302、OPS.979の活躍で自身初の月間MVPを受賞。10月には6試合で5本塁打、打率.308、長打率.885、OPS1.218と圧巻のスパートを見せ、タイトル争いを最後まで盛り上げた。
ロッテのチーム本塁打数は昨季の73本から今季は131本と急増したが、山口の大活躍が本塁打の劇的増加に大きく貢献したことは論を待たない。慢性的な日本人スラッガー不足に悩まされてきたチームにとって、山口が今季果たした長足の進歩は、チームの文化を変えうるほどに大きな意味を持つものとなったことだろう。
まだ26歳と伸びしろを残す「幕張の和製大砲」。5月以降に見せた圧巻の打棒をフルシーズン発揮できれば、念願の個人タイトル獲得も現実味を帯びてくる。
(「パ・リーグ インサイト」望月遼太)
(記事提供:パ・リーグ インサイト)