南国の強烈な日差しが、ジリジリと肌を焼く。来季への熾烈なサバイバルが繰り広げられる「みやざきフェニックス・リーグ」のマウンドで、オリックスの2年目右腕・寺西成騎投手は、自身の現在地と静かに向き合っていた。
宮崎・清武第二球場で20日に行われたJRPB選抜戦。先発した右腕は4回無失点の好投を見せた。それでも、安堵の表情はない。「ランナーが出たところが課題ですね。ランナーがいない状態は何とか掴みつつあるんですが……。出てからの課題が残っている感じがします」。額の汗を拭いながら発した言葉には、来季にかける並々ならぬ決意が滲んでいた。
プロ2年目の今季は、「激動」の1年だった。ロングリリーフ、先発としてスタートを切ったもののチーム事情からショートイニングのリリーフへ配置転換。その後、再び先発に戻るという目まぐるしい日々を過ごした。今季は27試合に登板(6先発)し、4勝3敗9ホールド、防御率4.17。先発としての感覚を掴みかけていた矢先の8月15日の日本ハム戦(京セラドーム)で左大腿二頭筋を損傷し、戦線離脱した。その後、1軍のマウンドに戻ってくることはなかった。
フォームをマイナーチェンジ、一流投手から学んだルーティン
「苦しいことは1個もなくて。リリーフとしてすぐ1軍に呼んでもらって、すぐ1軍で投げられて、しかも勝ちパターンで投げさせてもらった。すごい良い経験になりましたし、そこで出力も上がって、全部良い方向につながっているんで、良い経験だったかなと思います」
1イニングにすべてを出し尽くし、目の前の打者をねじ伏せる。先発では無意識にセーブしていたリミッターを外し、出力を飛躍的に向上させた。「勝手に(出力が上がった)。別に上げようとかしてなくて、その場面の状況的に気持ちが上がるところなので、自然と上がったんじゃないかなと」。痺れるマウンドでの経験は、確かな血肉となっている。
フォームのマイナーチェンジも断行した。先発復帰のタイミングで、厚澤和幸投手コーチからの「一回やめてみようか」という助言を受け、2段モーションを封印。「今はもう全く違和感はないんで、良い感じです」。柔軟に変化を受け入れ、自らのものにしていく吸収力も、急成長を支える要因だ。
何より、1軍という最高峰の舞台は、技術面だけでなく、プロとしての“思考”を劇的にアップデートさせてくれた。「1軍にいるとみんな練習しますし、会話のレベルもしっかり高いレベルで話している。そういう環境になれるというか、それが当たり前になってきたというのはあります」。九里亜蓮投手をはじめとする先輩の登板前からの入念な準備を目の当たりにし、一流のルーティンを肌で学んだ。
また、チームの柱である宮城大弥投手や曽谷龍平投手との対話は、何よりの教科書になっている。
「去年、1年目は宮城さんと遠征が被ったりしていたから、ご飯の席で色々喋りました。野球の話になると、結構真面目に話しますね。こないだの試合、ここ困ったなと思ったら、こういう時どうしていましたか? みたいに聞いたり。答え合わせじゃないですけど、『やっぱこうしないといけないですよね』『でもこういう方法もあるんじゃない?』と。なんでも教えてくれます」
星稜高の1学年先輩、奥川恭伸に抱く憧れ「さすがでした」
偉大な先輩たちからの金言を胸に引き出しを増やしているが、刺激を受けているのは自チームの投手だけではない。星稜高時代の1学年先輩であり、ヤクルトで数々の試練を乗り越えてきた奥川恭伸投手の存在は、寺西にとって特別な意味を持つ。
「(登板は)テレビでは見ていました。意識はしていましたね。最初はあの人が、僕が4勝を挙げた時にまだ5勝とかで、『ついていこう』と思っていたんですけど、無理でしたね。さすがでした」
高校時代から眩しい光を放ち続ける先輩への思いを問われると、少しだけ表情を和らげた。
「意識しますよ。ライバルとかじゃなくても『憧れ』なんで、そういう目で見ていますね。いつか、追いつけ追い越せじゃないですけど……というのはあります。一番意識するかもしれないですね、自チームのピッチャーよりも。憧れとして。怪我がありながらも、あそこまで今年も投げて盛り返してくるのは、さすがですよね」
シーズン中は互いに気を遣い連絡を控えているというが、だからこそ結果で応えたいという思いは強い。奥川は度重なる怪我を乗り越え、プロ7年目で初めて規定投球回に到達。2度の完封を含む7勝(11敗)をマークした。憧れの背中を追いかけ、いつか肩を並べるために――。
チームは先発不足が懸念も「そこはチャンスでもあるんで」
視線はすでに、来季のマウンドへと向いている。今季13勝で最多勝に輝いたアンダーソン・エスピノーザ投手の去就が流動的で、チームは来季も先発不足が懸念されている。だが、寺西にとってはチャンスでもある。
「思い描いているよりも投げられていますし、すごい経験ができているんで、来年が勝負ですね。来年もやっぱり戦力として、宮城さんやペータ(山下舜平大)も最初はいないんで。そこはチャンスでもあるんで、しっかり自分の立ち位置を掴んでいきたいと思っています」
先発であれ救援であれ、求められた場所で腕を振る覚悟はある。だが、勝負師としての“本能”は、まっさらなマウンドを強く渇望している。来季の目標を問われた右腕は、力強くこう口にした。
「先発したいですね。目指すは開幕ローテーション。あわよくば開幕投手。チャンスなんでね。目指すのは自由なので。頑張ります」
激動のシーズンを糧に、逞しさを増した。怪我を乗り越えた背番号「13」が、勝負の3年目に備える。