ドラ1指名から3年、オリ横山聖哉が直面した苦悩 「焦りと迷い」の日々から救ってくれた“金言”…定まった覚悟

ドラ1指名から3年、葛藤の中でも己を信じ抜く【写真:加治屋友輝】ドラ1指名から3年、葛藤の中でも己を信じ抜く【写真:加治屋友輝】

2023年ドラフト1位の横山聖哉は今季、9試合出場で打率.095

 ドラフト1位という“肩書き”に縛られることなく、自らが信じた道を突き進む。周囲からの羨望と、期待の眼差し。その重圧をはねのけるには、結果が求められる。強い日差しが降り注ぐ宮崎で、オリックスの横山聖哉内野手は泥にまみれながら試合を重ねていた。

 横山聖は上田西高で通算30本塁打を放った強打、柔らかいグラブ捌きと俊足を生かした守備を武器に、2023年ドラフト1位でオリックスの門を叩いた。福良淳一GMから「トリプルスリーを狙える素材」と評価され、1年目から1軍を経験。12試合に出場し、6安打を放った。順風満帆に見えたが、現実はそう甘くはなかった。

 今季は1軍で9試合に出場し、打率.095(21打数2安打)。3年間の1軍通算成績は23試合で打率.127(63打数8安打)、0本塁打、0打点、OPS.283と、厳しい数字が並んでいる。一方、2軍では1年目から“強化指定選手”として3年連続で300打席以上を与えられてきた。以下は3年間の2軍成績だ。

・2024年:86試合、打率.223、1本塁打、22打点、OPS.523

・2025年:96試合、打率.217、2本塁打、35打点、OPS.552

・2026年:92試合、打率.219、7本塁打、28打点、OPS.631

焦る気持ちを抑えることができた高橋信二打撃コーチの存在

 数字だけを見れば、プロの壁に阻まれ抜け出せずにいる。

「春先から、今年で何かを掴もう、1軍で活躍できるきっかけを作れるような年にしようと思って練習してきました。でも、数字的には1年目からあまり伸びていないのが現状です」

 今年の春先には怪我にも見舞われた。体を大きくしたことによる影響ではないと本人は否定するものの、スタートダッシュでのつまずきは痛手だった。それでも、横山聖は自身の現在地から目を逸らさない。

「自分なりに工夫して1試合1試合をやっていく中で、色々と気づくこともたくさんありました。後半は数字ではなく、次の自分の打席に繋がるような打席にどんどんしていくこと。結果だけにならないよう心掛けてやっていました。1、2年目では気づけなかったような考え方など、成長はしていると思います」

 ファームでの本塁打数は1年目の1本から、2本、そして今季は7本へ増加した。持ち味の長打力は徐々に開花しつつある。だが、結果が伴わない日々の中で、打撃スタイルを見失いそうになった時期もあった。

「結果がついてこない時に、大振りせずにコンパクトに行こうと色々考えたりもしました。でも、それじゃつまらないなと。自分のスイングをして、なおかつボールを捉える。そこは変えたくないと思いながらも、小さくなったり、色々と試行錯誤していたので、すごく難しかったです」

ファームでは92試合に出場し、打率.219、7本塁打をマーク【写真:加治屋友輝】ファームでは92試合に出場し、打率.219、7本塁打をマーク【写真:加治屋友輝】

 プロの世界で生き残るため、スタイルを変えることを考えた時期もあった。だが、それでは自分の持ち味が消えてしまう。葛藤の中で、己のスイングを信じ抜く覚悟を決めた。

 最大の敵は「焦り」だ。ドラ1の看板に対するプレッシャーについて問われると、「あるかもしれないですけど、あまり感じていない」と冷静に答える。しかし、1軍の舞台が遠のく中で、無意識のうちに結果を欲しがる自分がいた。そんな泥沼から救い出してくれたのが、高橋信二打撃コーチの存在だった。

「周りと比べて自分より上だとか下だとかを見るのがいけない」

「今、結果を出すためにやるんじゃなくて、来年、再来年に向けて今できる取り組みがある。結果にこだわりすぎてごちゃごちゃになるより、未来に繋がる取り組みをしっかりやろうと、信二さんと話しました。僕自身、焦って結果を欲しがって、すぐに違うことをやったりしていたので。『そうじゃないよ』と、しっかり話をしてもらいました」

 技術以上に徹底的に叩き込まれたのが、プロとしての「思考法」だった。

「自分を過小評価するな、と。自分をダメだと思うのが一番ダメなところで、周りと比べて自分より上だとか下だとかを見るのがいけない。自分の能力は周りが見てくれているし、自分で決めることじゃないから、自分をマイナスの方向に持っていかないように。そういった考え方を色々と教えてもらいました」

 結果が出ないと、どうしても下を向いてしまう。コーチからの金言は、横山聖の心に深く刺さり、揺るぎない土台となっていった。精神的な成長は、現在参加しているフェニックス・リーグでの打席にも表れている。テーマは極めて明確だ。

「シーズン中、ファームでも1軍でも三振の数が多かったので、ファーストストライクからどんどん振っていって、2ストライクまでに仕留めるというのが目標です。1軍では甘い球が少なく、何球も打てる球が来ません。その上で捉えていかないといけない」

フェニックス・リーグに参加し鍛錬を重ねている【写真:橋本健吾】フェニックス・リーグに参加し鍛錬を重ねている【写真:橋本健吾】

ポジションは「出られるところなら…こだわりは正直ないです」

 一方で、追い込まれてからの引き出しも増やしている。カウントが悪くなればノーステップ打法に切り替え、粘り強くボールを見極める。

「今年のシーズン最後の方からやってみて、四球の数もすごく増えていると自分でも思っています。追い込まれて苦しいバッティングにはなりますが、四球を取れているのは自分の中でも良いこと。良い結果に繋がるように工夫しています」

 バットだけではない。オフには昨年に続き、多くのプロ野球選手が指導を仰ぐ「野球内野守備コーチ兼・ディフェンスデザイナー」の武拓人氏の指導を受ける予定だ。「その場その場で対応できる力がついた」と守備への自信も深めている。遊撃手というポジションへのこだわりを尋ねると、横山は首を横に振った。

「出られるところならセカンドでも、ショートでも、サードでも。こだわりは正直ないです」

 なりふり構わず、まずはグラウンドに立つ。過去の栄光も、ドラフト1位という肩書きも、今の横山聖には関係ない。もがき苦しみながら自らの現在地を受け入れ、前だけを見据えている。

「数字はまだついてきていないですが、今の結果に執着しないで、先を見て満足せずにやっていく」

 南国の空の下、泥だらけのユニホームが誇らしい。3年間の苦悩を糧に、未完の大器が殻を破る瞬間は、着実に近づいている。

(橋本健吾 / Kengo Hashimoto)

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