エースが浮かべた涙…最後まで気遣った相棒 4年の答え合わせに必要だった“6分”

立命館大の有馬と西野、ともに2位指名でプロ入り
幾多の修羅場をくぐり抜けてきた2人にとって、長く重い時間だった。「有馬伽久(ありま・がく)」の名前が呼ばれた瞬間、隣に座っていた立命館大の西野啓也は何度もガッツポーズを繰り返した。自身が広島からドラフト2位で指名されてから約6分後のことだった。
「プロ野球ドラフト会議 supported by リポビタンD」が22日に行われ、立命館大の有馬伽久投手がソフトバンクから、西野啓也捕手が広島から、ともに2位で指名を受けた。同大学のキャンパスで記者会見に臨んだ有馬は「ホッとしたというのが一番大きい」と安堵。「どの順位でも受け入れる覚悟はできていた。指名がないんじゃないかと不安な部分もあったのでうれしいです」と、素直な胸の内を明かした。
隣に座っていた西野は、有馬に続き「(自分が)どう評価されているのかなど、最後の最後まで不安でしたが、2位で指名されたことに感謝しています」と広島からの指名に喜びの声を届けた。続けて「ファンのみなさんに愛される選手になり、長く野球がしたい」とプロ入り後の姿を描いた。
4年間、苦楽をともにした2人にとって“最高の結果”に終わったドラフトだが、会場が拍手喝采に包まれるまで、なんともいえない空気が支配した時間があった。西野が広島からドラフト2位に指名されたとき、有馬の名前はまだ呼ばれていなかった。

大学3年で注目を浴びた有馬、4年で飛躍した西野
バッテリーとして、最初に注目を浴びたのは有馬のほうだ。3年春のリーグ戦で4勝2敗、防御率1.79で最優秀投手を受賞。秋の明治神宮大会では、1回戦で10者連続奪三振をマークし、関大・山口高志氏の大会記録を53年ぶりに塗り替えた。この年、大学日本代表にも選ばれたが、4年になると思うような結果を残せず伸び悩む時間が続いた。
一方、飛躍したのが西野だ。4年春に打率.348で首位打者を獲得し、3季連続でベストナインを受賞。夏には大学日本代表に選ばれるまでに成長した。「入学当初は体も細くて野球は下手くそ。続けること、コツコツが大事だと学んだ。それがこういう結果につながったと思います」と、4年間での成長を実感していた。
成長曲線は違えど、2人はチームの中心だった。練習も最後までグラウンドに残り、良い結果も悪い結果も糧にして、バッテリーとしての成熟度を高めていった。そして迎えたドラフト当日。会見場に座った有馬は、場内に設置されたドラフト会議の中継映像を、開始直後からほぼ表情を変えずに見守った。対照的に西野は、各球団から1位指名選手が発表されるたびに、驚き、顔をしかめ、時には笑顔で拍手も送った。
ドラフト2位指名が始まり、2人のうち先に名前が呼ばれたのは西野。待望の指名に部員は大歓声をあげたが、西野は笑顔だけで喜びを表し、有馬は険しい表情のままだった。それから約6分後、ソフトバンク2位で有馬の名前が呼ばれると、会場はこの日一番の盛り上がりを見せ、西野も両腕をあげてガッツポーズを見せた。隣には涙を浮かべる“相棒”がいた。
「4年間一緒にやってきて、(有馬と)一緒の順位で呼ばれたのはうれしかったです」と、会見で西野は心境を語った。ドラフト開始から2人の名前が呼ばれるまで、西野の見せる笑顔がとにかく印象的だった。もしかすると、緊張で一睡もできなかったという有馬を安心させるものだったのかもしれない。
(真田一平 / Ippei Sanada)