オリ宮城大弥の返答は「いや、ねえよ」 東松快征が後悔した“軽口”…気付いた甘さ「痛感しました」

プロ3年目で初勝利を挙げたオリックス・東松快征【写真:加治屋友輝】プロ3年目で初勝利を挙げたオリックス・東松快征【写真:加治屋友輝】

プロ3年目で初勝利の東松快征…今季は7登板で1勝1敗、防御率5.40

 突き抜けるような青空と、秋とは思えない強烈な日差しがグラウンドに照りつける宮崎。来季へ向けた熾烈なサバイバルが繰り広げられる「フェニックス・リーグ」のマウンドで、オリックスの若きサウスポーが闘志をむき出しにして腕を振っていた。プロ3年目のシーズンを終え、いよいよ勝負の4年目を迎える東松快征(とうまつ・かいせい)投手だ。

 転がり込んできたチャンスを、絶対に逃すわけにはいかない。今季、念願のプロ初勝利をマークした左腕は今、己と必死に向き合っている。プロ4年目となる来シーズン、先発ローテーションの座を奪い取るため、このオフは“無休”で自らをいじめ抜く覚悟を固めている。

 東松は愛知・享栄高から2023年ドラフト3位でオリックスに入団した。ルーキーイヤーからポテンシャルの高さを評価され、2年目の昨季に1軍デビューし、7登板で0勝2敗、防御率10.80。今季は7試合に登板(2先発)して1勝1敗、防御率5.40の成績を残した。シーズン開幕前には侍ジャパンのサポートメンバーにも選出され、トップレベルの選手の凄みを肌で感じた。さらなる飛躍が期待された1年だったが、現実は甘くはなかった。

「開幕から1軍に入って、5試合ぐらい中継ぎで投げてすぐに抹消されて。そこから5か月間ぐらい、ずっとファームにいました。活躍したいという気持ちがある中で、先発のチャンスもあると言われていたんですけど、なかなか自分が結果を出せなくて。ずっとモヤモヤしている感じでした」

 春先に見た1軍の景色は、一瞬にして奪われた。舞洲の2軍施設で調整を続ける日々。不甲斐なさに苛立ち、自信を失いかけることもあった。そんな時に野球観を根底から覆され、心を大きく突き動されたのが、チームの絶対的エース・宮城大弥投手の存在だった。

響いた宮城大弥の言葉「どうやったら近づけるかを考えています」

 ファームで調整を続けていた期間、東松は宮城と多くの時間を共にした。9月22日のロッテ戦で初勝利を挙げた後には、宮城からブランド物の財布をプレゼントされ「勝って4日後くらいに、くれました。本当に凄くて、優しい先輩です」と笑顔を見せるが、グラウンドで目の当たりにしたエースの姿は、想像を絶するものだった。

「宮城さんに『宮城さんって、天性のものがありますよね』と言ったんです。そうしたら『いや、ねえよ。俺もちゃんと努力して、こういう結果になっている』と返されました。僕は勝手に、感覚だけで抑えている天才なんだと思っていたんです。でも、全然違いました。誰にもないものを宮城さんが持っていて、それで抑えているのかと思ったら、誰よりも野球に向き合っていて、データもすごく見るし、練習もめちゃくちゃする。すごい人がこれだけ練習するから、ああなれるんだと痛感しました」

オリックスのエース・宮城大弥【写真:栗木一考】オリックスのエース・宮城大弥【写真:栗木一考】

 マウンド上で涼しい顔をして打者を制圧するパフォーマンスは、持って生まれた才能だけで発揮できるものではない。血のにじむような努力と、飽くなき探究心、圧倒的な練習量。軽口をたたいたことを心底後悔し、己の甘さを深く恥じた。

「僕は技術もないし、考える力もまだ足りない。そりゃあ、これだけの差が出るって思いました。だからこそ、どうやったら宮城さんに近づけるかを考えています。活躍する人は、野球に対して真っすぐで、自分への甘えが一切ない。そのレベルに到達するのは無理だと思ってしまいそうになりますが、それでもなりたい。だから、頑張るしかないんです。あの人の倍は練習しないと、ずっとこのままだと思っています」

同学年の鷹・前田悠伍との差を痛感「足元にも及んでいません」

 21歳の胸の内を燃やすのは、強い向上心だけではない。同世代のライバルの存在が、強烈な刺激となっている。同じ高卒左腕のソフトバンク・前田悠伍投手は、今季12勝を挙げてブレークした。

 1軍で白星を積み重ねていく姿に「自分はこのままじゃダメだなっていうのはありました」と、悔しさを口にする。それでも冷静に自己分析し、前田との“差”を埋めるための努力を惜しまない。

「めちゃくちゃリスペクトしていますし、同級生でも本当にすごいなと思います。あのツラ構えというか、マウンドで安定している感じがものすごくある。投げ合いたい気持ちもありますが、まずは自分がローテーションに入ることが先決です。僕なんて、まだ足元にも及んでいません。でも、これから追い抜いていく。自分には目標があるので、そこに向けて頑張りたいです」

今季12勝を挙げてブレークしたソフトバンク・前田悠伍【写真:栗木一考】今季12勝を挙げてブレークしたソフトバンク・前田悠伍【写真:栗木一考】

 来季のオリックスは、先発ローテーションを巡る競争がかつてないほど激化する。トミー・ジョン手術を受けた宮城や山下舜平大投手は開幕に間に合わず、今季最多勝のアンダーソン・エスピノーザ投手は去就が流動的だ。若手にとってはかつてないほどのチャンスといえる。

「首脳陣からもチャンスだと言われています。1勝できてきっかけも掴めましたし、手応えも少し感じている。絶対にこのオフ、誰よりも練習して来年からローテーションに入りたい」

「周りと同じことをしていたら一生、追い越すことはできない」

 地道な下積みの成果は、フェニックス・リーグの登板でも確かに表れている。22日のハヤテ戦(生目第二)では、直球を中心に力強い投球を見せて3回無失点。球速は常時140キロ台後半を計測し、確かな手応えを感じている。

「1軍で投げていて真っすぐが通用しないと、だいぶきつい時がありました。変化球ばかりになると苦しくなる。困った時に真っすぐで押して、相手が真っすぐだと分かっていてもファウルが取れる。それが1軍では一番大事なことだと思っています。まだまだ自分の出力には満足していません。ウエートトレーニングもガンガンやって重量も上がってきているので、もっと出力を上げて、常時150キロぐらいを投げられるように目指しています」

 試合を終え、帰阪する前には平野佳寿投手コーチに呼び止められ、声をかけられた。

「『来年こそは自分が活躍するんだと思いながら、チャレンジャーの気持ちでやらないとダメだよ』と言われました。どんどん練習して、どんどん技術を上げないといけない。やることは明確です」

フェニックス・リーグの登板で地道な下積みの成果は表れている【写真:橋本健吾】フェニックス・リーグの登板で地道な下積みの成果は表れている【写真:橋本健吾】

 サポートメンバーで侍ジャパンの活動に参加した際に知り合ったエンゼルス・菊池雄星投手、自チームの宮城ら一流選手と過ごした貴重な時間は自身の糧となっている。「皆さん『オフシーズンこそが、シーズンだよ』と同じことを言っていた。この期間にどれだけ成長できるか。周りと同じことをしていたら一生、追い越すことはできない」。

 その言葉の重みを、身をもって理解し始めている。厳しい冬を越え、肉体も精神も限界まで追い込んだ先にしか、思い描くマウンドは待っていない。

「ある程度、オフに何をすればいいかという手応えはこの3年間で分かってきました。1年目より2年目、2年目より今年の方が練習しようと思っていますし、やはり練習量が一番大事ですから」

 己の未熟さを認め、絶対的エースの背中を死に物狂いで追いかける。言い訳や甘えは捨て去った。静かに闘志を燃やす若きサウスポーの逆襲劇は、まだ幕を開けたばかりだ。

(橋本健吾 / Kengo Hashimoto)

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