オリ内藤鵬が抱えた葛藤「獲りたかった」 待望の昇格も心残りの“1本”…絶望を知る和製大砲が得た収穫と課題

オリックス・内藤鵬【写真:加治屋友輝】オリックス・内藤鵬【写真:加治屋友輝】

今季はファーム・リーグL西地区2位の11本塁打、同1位の53打点

 どこまでも遠くへ、美しい放物線を描いていく。それが、オリックス・内藤鵬内野手に与えられた使命だ。プロの世界へ足を踏み入れてからの日々は、苦闘の連続。度重なる怪我や手術に直面し、リハビリの期間が多くを占めた。それでも、未完の大器はバットを振り続け、自らの力で分厚い壁を打ち破ろうとしている。

 内藤は日本航空石川高から2022年ドラフト2位で入団。プロ1年目の2023年に左膝鏡視下外側半月板縫合手術を受けた。2024年の春季キャンプ中には左肩を脱臼し、左肩鏡視下バンカート修復術と烏口突起移行術を余儀なくされた。プロの世界で羽ばたこうとする矢先に、幾度もメスを入れるしかなかった。野球ができない苦しさは、誰よりも理解している。

「本当にしんどかったですね。膝を手術した時はまだ1年目でしたし、野球ができないのは嫌でしたけど耐えられました。でも、2回目の手術の時は、膝が治って『やっとできる』というタイミングだったんです。だから最初は『手術はしません』と言っていたんですよ。でも福良(淳一GM)さんに呼ばれて話をして。入院中は牧田(勝吾編成部副部長)さんがずっとメッセージをくれて、それでリハビリを頑張ろうと思えました。今からできるとなった時にまた怪我だったので、2回目が気持ち的に一番しんどかったです」

 苦難を乗り越え、今季は2軍で97試合に出場。打率は.220(345打数76安打)にとどまったものの、自身初の2桁となる11本塁打を放ち、53打点でファーム・リーグ西地区の最多打点者賞に輝いた。ようやく積んだ「1年間戦い抜く」という経験。その裏には、無心でバットを振り続けた執念があった。

鷹・山川穂高とのタイトル争い「ホームラン王、獲りたかったですね」

「去年初めて1年間野球をやりましたが、2軍でホームランは3本だけ。いろいろと課題もありました。やはりホームランを期待されて入団していますし、たった3本で打率も2割ちょっとでは、全然使えないし1軍にも呼ばれなかった。今年は、1年戦う体力のしんどさをすごく感じたので、とにかく練習量を増やして、1年間しっかりバットを振れるように取り組みました。技術云々よりも、まず1年間通して『しっかり振れた』ということが、去年と少し違うところかなと思います」

“今季、2年ぶりに1軍出場を果たし、2軍では11本塁打を放った【写真:加治屋友輝】”今季、2年ぶりに1軍出場を果たし、2軍では11本塁打を放った【写真:加治屋友輝】

 確かな手応えを胸に、シーズン終盤に待望の1軍昇格を果たした。6試合に出場し、プロ初打点こそマークしたものの、打率.182(22打数4安打)、0本塁打。レベルの高さを痛感する結果となった。しかし、その過程で、大砲としてのプライドと葛藤が入り混じる出来事があった。

 ファーム・リーグでの本塁打王争いだ。同西地区1位はソフトバンク・山川穂高内野手の12本。内藤は1本差で涙をのんだ。

「ホームラン王、獲りたかったですね。僕が11本で、山川さんが12本。あと1本というところで僕は1軍に呼ばれたんです。あと1本打ちたいけれど、1軍にも行きたいし……という複雑な気持ちでした。でも、選ぶなら間違いなく1軍です。2軍でいくら打っても、給料は上がりませんから。でも、2軍で打たないと1軍には上がれない。両方大事ですね」

 現在のオリックスにおいて、一振りで試合の空気を変えられる“和製大砲”は喉から手が出るほど欲しい存在だ。周囲の期待を、本人が感じていないはずがない。

二塁の守備にも挑戦「色々プラスになることもあるので」

「毎年期待していただいているのはすごく感じています。僕は守備もうまくないし、足も速くない。やはりホームランしか期待されていないと思うので、期待されている以上のホームランを打ちたいです。今年は1軍で4番にも座らせてもらいましたが、下位打線を打っている時よりも気持ちが入るというか、試合中でも自信が出ました。だからこそ、そこはしっかり結果を出して、奪いにいきたいですね」

“来季に向けて二塁手にも挑戦【写真:加治屋友輝】”来季に向けて二塁手にも挑戦【写真:加治屋友輝】

 来季へ向けた戦いはすでに始まっている。「毎年守備や走塁で迷惑をかけているので、最低限できるようにしっかりやる。実戦の中でしか試せないことを掴んで、体に染み込ませたい」と足元を見つめる。何よりも大きいのは、怪我なくシーズンを完走したという揺るぎない事実だ。

 フェニックス・リーグでは二塁の守備も経験するなど、新たな取り組みもスタートさせている。「ノックを受けたりして、体の動きを高めたり。がっつり二塁ではないですけど、色々プラスになることもあるので」。全ての経験を糧にし、1軍の舞台に立つ準備を進めている。

「結果が出なくても、1年間ちゃんと通して野球をやれば、課題も分かるじゃないですか。でも怪我をして野球ができなかったら、課題も何も分からない。1年怪我なくやるというのは、本当に大事だなと思います」

 傷だらけのルーキー時代を経て、22歳はアーチストへの階段を上り始めた。絶望の底で知った野球ができる喜びと、1軍で味わった不完全燃焼の思い。プロ5年目となる来季は、そろそろ結果を求められる。すべてを原動力に変え、未完の大器は逆襲のアーチを描いていく。

(橋本健吾 / Kengo Hashimoto)

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