涙のDeNA古市尊に寄り添った戸柱恭孝 「よう頑張った、でも」…ベテランが一番伝えたかったこと

ゲームセットの瞬間、天を仰いだDeNA・古市尊【写真:荒川祐史】ゲームセットの瞬間、天を仰いだDeNA・古市尊【写真:荒川祐史】

古市尊が日本シリーズ初出場、チームはサヨナラ負けで0勝3敗と崖っぷち

 DeNAは27日、みずほPayPayドームで行われたソフトバンクとの「SMBC日本シリーズ2026」第3戦に1-2でサヨナラ負けを喫し、対戦成績は0勝3敗と追い込まれた。

 先発したエースの東克樹投手が7回89球を投げ6安打無失点と粘りの投球。しかし1点リードの9回に登板した守護神のショーン・レイノルズ投手が同点に追いつかれ、延長10回にホセ・ルイーズ投手が正木智也外野手にサヨナラ弾を浴びた。

 0勝2敗から4連勝して日本一に輝いた2024年の再現へ、再び“下剋上”を誓って乗り込んだ福岡の地。しかしシリーズ初勝利が目前に迫りながらショックの大きい敗戦となってしまった。

 この日は古市尊捕手がシリーズで初めて先発マスクを被った。クライマックスシリーズ(CS)では2試合に先発し、ともに東を好リードして2勝を導いていた。

延長10回にホセ・ルイーズ投手がサヨナラ弾を浴びた【写真:荒川祐史】延長10回にホセ・ルイーズ投手がサヨナラ弾を浴びた【写真:荒川祐史】

ゲームセットの瞬間天を仰ぎ…ベンチに戻ると涙を流した

 初の頂上決戦でも、持ち味を発揮した。東は再三走者を許しながらもシリーズ最多5併殺と打たせて取る投球で本塁を踏ませない。打っても5回に先制の中前適時打を放つなど3安打とアピールした。

 しかし最終盤に悪夢が待っていた。掴みかけた待望の初勝利は、こぼれ落ちた。ゲームセットの瞬間、天を仰いだ古市。ベンチに戻ると大粒の涙を流した。「僕のせいで負けた」と責任を背負い込んだ24歳のもとに出向き、声をかけ、肩を抱いて寄り添っていたのが戸柱恭孝捕手だった。

「よう頑張った、とは言いました。でもね……」。戸柱が“一番伝えたかったこと”を明かした。

「これが4敗目で、(日本シリーズが)終わっていたならば、あれはいいかもしれない。でもまだ戦いは続いているから。悔しいのはわかる。でも例えば、明日もあるって切り替えようとしている選手がお前のそういう姿を見たらどうなのかって。だから、まだ明日があるだろうっていうことは言いました」

 崖っぷちに追い込まれた事実は変わらない。古市にとっては、受け入れがたい敗戦となってしまっただろう。でも戸柱が言うように、日本シリーズに敗れたわけではない。次の試合へ、1つの勝利へ、切り替えるのもプロとして必要なことだ。

ベテラン・戸柱恭孝が伝えたかったこととは【写真:黒澤崇】ベテラン・戸柱恭孝が伝えたかったこととは【写真:黒澤崇】

「出すのは全てが終わってからでいい。まだ終わっていないんですから」

 それはプロで11年戦い抜いた36歳だからこその言葉かもしれない。「失敗しまくってきたから。勝てない時期があったし、でもやらないといけない」。勝てば投手や打った選手がクローズアップされることが多く、一方で負けたときに注目を浴びがちな捕手というポジション。数え切れないほどの悔しさを味わってきた。だからこそ、失意の後輩にかけたい言葉があった。

「初めてだから、経験していないから仕方ない部分もあるとは思います。でもひとつのプレー、ひとつの試合ですごく落ち込んだり、浮き沈みが激しいから、そういうところはね。重みはもちろん受け止めないといけないけど、出すのは全てが終わってからでいい。まだ終わっていないんですから」

 今年1月に人的補償で加入した古市。山本祐大が5月に電撃トレードでソフトバンクに加入すると、松尾汐恩、戸柱とともに1軍で出場機会を増やした。1軍で戦える能力の高さは十分に示したが、まだ1軍での通算出場は72試合に過ぎない。ポストシーズンは自身初めての出場だった。

 捕手出身の相川亮二監督も「しっかりリードもあそこまで粘ってやってくれました」と称えつつ、「ただやっぱり最後1点、勝ち切って終わるというところはやっぱりできなかったので、そこはもうチームで反省するしかないので」と話していた。

 痛恨の1敗をどう生かすのか。古市はきっと、この経験を無駄にはしない。

(町田利衣 / Rie Machida)

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