球界が揺れた“山本祐大トレード”の是非 OBが指摘した現実…「なぜ放出してしまったのか」

現役時代に捕手として活躍した野口寿浩氏が分析
今年の日本シリーズは4試合中3試合で延長戦にもつれ込む激闘だったが、ソフトバンクが試合巧者ぶりを発揮しDeNAに無傷の4連勝。2年連続の日本一を達成した。とりわけ、相手のDeNAから交換トレードで移籍したソフトバンク・山本祐大捕手が、シリーズ優秀選手賞に輝く活躍で古巣を見返したのは“胸熱”だった。
「ベイスターズファンの中には、いまだに『なぜ祐大を放出してしまったのか』と惜しんでいる人がいると思いますが、正直に言うと、僕もそう思っています。OBの1人として、“山本祐大のチーム”をつくっていった方がよかったのではないかという気持ちを拭えません」。こう心境を吐露するのは、現役時代に横浜(現DeNA)、阪神など4球団で捕手として活躍した野球評論家・野口寿浩氏だ。
山本祐は尾形崇斗投手・井上朋也内野手との1対2のトレードでDeNAから移籍してきた。一方、ソフトバンク時代に専らリリーフだった尾形は、DeNAで先発に転向し7勝3敗、防御率3.29をマーク。井上朋もレギュラーシーズンで2本塁打、スタメン出場した日本シリーズ第2戦では二塁打2本と気を吐いた。来季以降の活躍を含め、トレードの“損得”はまだわからない。
ただ、今回の日本シリーズで全4試合に出場(3試合に先発)した山本祐が、長所も短所も熟知するDeNAの各打者を好リードで封じ込め、4連勝の原動力となったことは間違いないようだ。
野口氏は「CSのMVPに輝き絶好調だった牧(秀悟内野手)には、第1戦の8回に同点ソロを食らったものの、結局4試合を通じてその1打点に封じ、打率.214(14打数3安打)に抑えました。祐大にとって“わからない打者”であるルーキーの成瀬(脩人内野手)には比較的打たれました(打率.273=11打数3安打)が、その他の打者には相手が嫌がる攻め方をしていました」と指摘。
「祐大が望んで出たわけではなかっただけに、ベイスターズには負けたくないという気持ちが強かったでしょう。捕手として第1戦の初球から第4戦の最後の球まで、そして打席に立っても、本当にいい顔をして野球をやっていました」と評する。

DeNAは松尾、戸柱、古市の3人体制でレベルアップへ
「ホークス側が強く望んだトレードだったと聞いていますので、望まれて行った祐大は幸せだと思います。元々、投手の良さを引き出すことに長けた捕手です。今回の日本シリーズでは、ベイスターズの投手陣もよく頑張ったと思いますが、やはりソフトバンクの投手陣の方が質的に1枚も2枚も上でした。質の高い投手をリードする面白さを感じているのではないでしょうか」とも付け加えた。
山本祐は打撃でも打率.364(11打数4安打)の猛威を振るった。特に第4戦で0-2の2点ビハインドで迎えた4回、2死一、二塁の好機に“逆方向”のライトへ起死回生の同点2点三塁打を放ち、続く柳田悠岐外野手の勝ち越し打につなげたのは圧巻だった。
野口氏にはDeNA時代の山本祐に関して、忘れられない光景があるという。「祐大が1軍に定着した頃、田代(富雄巡回打撃育成コーチ)と二人三脚で右方向へ打つ練習をしていました。『絶対に引っ張るな』と言われて、半分から右方向にしか打たせてもらえない時期もありました。ですから、右へ打つのがうまいのは当たり前だと思いますよ」と振り返り、「田代さんにとって祐大の働きは、複雑ではあるけれども感慨深いでしょうね」と目を細める。
チームづくりの中で、“扇の要”と呼ばれる捕手の存在は重要なポイントである。DeNAは山本祐を放出した後、22歳でポテンシャルの高い松尾汐恩捕手、36歳のベテラン・戸柱恭孝捕手、桑原将志外野手のFA移籍に伴う人的補償として西武から加入した古市尊捕手の3人が出場機会を分け合い、激しい競争を繰り広げながらレベルアップしている。
一方、2年連続日本一となったソフトバンクは今後ある意味で、DeNAが選択しなかった“山本祐大のチーム”になっていくのかもしれない。
(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)