引退の広島天谷、伝説のフェンスよじ登り美技に「その時の自分にありがとう」

広島・天谷宗一郎【写真:編集部】
広島・天谷宗一郎【写真:編集部】

17年間で一番の思い出は「黒田さんと2人でお立ち台に上がったこと」

 広島の天谷宗一郎が4日に引退会見を行った。今シーズン限りでの引退を表明していた天谷は、同日に1軍登録され、巨人戦で最後の出場をした後、試合後には引退セレモニーが行われる。

 会見場に現れた天谷は、球団関係者や首脳陣、チームメイト、スタッフ、そしてファンに感謝を述べた。「今年1年、チームの戦力になりたいと思ってキャンプからやってきたが、一度も1軍に呼ばれずに潮時かな、と思った。丸や野間がケガをした時にも呼ばれることがなかったのが一番大きかった」と、引退を決意した理由を語った。

 チームは球団史上初のリーグ3連覇を達成したが、マツダスタジアムで優勝が決まった瞬間、その場にいることができなかった。天谷は「いいチームメートと戦えたことはよかったが、3連覇の胴上げの輪の中に入れなかったのは悔しさを感じた」と心情を明かした。

 17年間のプロ生活の一番の思い出は「3年前、25年ぶりの優勝をした年に、開幕カードで黒田さんと2人でお立ち台に上がったこと」と振り返ったが、ファンにとっては、2010年の横浜戦で外野フェンスによじ登ってホームラン性の当たりをスーパーキャッチしたシーンが印象深い。「今やれと言われたら、やれるかどうかわからない。その時の自分にありがとうと言いたい」と笑顔を見せた。

 ドラフト9巡目の入団で初めて規定打席に達したのが7年目と、順風満帆とは言えないプロ生活だった。それでも「ほとんどが苦しい時期だったが、野球が好き、ということが一番だと思う」と17年間プレーできた理由を話し、「いい時も悪い時も、声援を送ってくれたファンの声援のおかげ。ヤジを受けた時も、なにくそ魂というか、見返してやろうと思って頑張れた」と、ファンの存在が原動力となった。

「野球小僧がそのまま大人になったような選手だったが、毎日が充実した時間だった」と、最後のその表情は爽やかだった天谷。チームの長い低迷期を支えた選手が、また一人、グラウンドを去ることになる。

(大久保泰伸 / Yasunobu Okubo)

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