WBCで一般的に知られるようになった「球数制限」 縮まってきた日米の意識の差

日本とアメリカで異なる球数への意識
日本とアメリカで異なる球数への意識

WBCが契機となり日本に知れ渡った球数制限、メジャーで先発投手の100球超えはほぼなし

 野球に「球数制限」という特別ルールがあることが、日本で一般的に知られるようになったのは、2006年から始まったWBC(World Baseball Classic)がきっかけともいえる。

 アメリカのリトルリーグ、ポニーリーグなど少年野球では、子どもの健康被害を予防するために、「球数制限」「登板間隔制限」が導入されている。しかし、MLB、MLB傘下のマイナーリーグでは、投球数、登板間隔に関するルールはない。

 マイナーリーグには、10代後半の選手も在籍しているが、公式戦では「球数制限」は行っていない。必要がないからだ。「勝利」よりも「育成」が優先され、目先の勝利のために、投手を酷使することはあり得ない。チームの多くは、MLB球団とは別の経営になっており、MLB球団と契約をした選手を預かっている。マイナーの投手が登板過多で故障したりすれば、チームや指導者がMLB球団からペナルティを受けたり、場合によっては契約解除されることもあり得る。このためにマイナー各球団は投手の投球数を厳しく管理しているのだ。

 また、メジャーの試合でも「球数制限」は行われていない。しかし、先発投手が100球を大きく超えることはほとんどない。完成されたメジャーの投手も含め「投手の肩は消耗品」という意識が浸透しているのだ。

 MLBではPAP(Pitcher Abuse Point)という指標が重視されている。PAPは1試合で投げた球数から100を引いてそれを3乗したもの。これを毎試合加算する。この数値の合計がシーズンで10万を超えれば故障の可能性が高く、20万を超えればいつ故障してもおかしくないとされる。100球以下の試合はカウントしない。NPBでは、毎年、PAPが20万を超える投手が数人いるが、MLBでは、PAPが5万を超す投手はほとんどいない。

 さらにMLBでは「25歳以下の投手の場合、投手の投球回数は、前年より(あるいはキャリアハイより)30イニングス以上増やすと故障のリスクが高まる」ともされている。これは、考案したスポーツジャーナリストの名前を取って「ベルドゥーチ効果」と言われている。この考え方も広く浸透しており、球団、指導者は若手投手の起用に際しては非常に慎重になっている。

 MLBで「球数制限」がないのは、リーグや機構がこうしたルールを導入しなくても、球団、指導者が自主的に規制を行っているからだ。しかしWBCでは、厳格な「球数制限」「登板間隔制限」が導入された。これは、選手を派遣するMLB球団の要請によるものだ。

WBCで厳格化された球数制限、最初は違和感も次第に日本にも順応

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