今季81試合登板の西武・平井は何が凄いのか? パの強打者3人が鉄腕の特長を証言
日ハム大田、楽天浅村、ロッテ井上…右のスラッガーが平井を語る
21年ぶりにパ・リーグ2連覇を達成した西武。9日からは11年ぶりの日本シリーズ出場を懸けて本拠地でソフトバンクとの「パーソル クライマックスシリーズ パ」ファイナルステージに臨む。レギュラーシーズン143試合で計756得点と、圧倒的な攻撃力で混パを席巻したが、忘れてはならないのが、セットアッパー・平井克典投手の大車輪の活躍だ。2016年ドラフト5位でホンダ鈴鹿から入団すると、徐々に登板数を増やし、今年は81試合に登板。「神様、仏様、稲尾様」で知られる稲尾和久が1961年に残した1シーズン78登板という球団記録を更新した。
3年目にして初めて1シーズンをフルで投げ抜いた鉄腕は、主に試合終盤に颯爽とマウンドに上がると、パ・リーグの名だたる強打者たちと対峙し、きりきり舞いにしてきた。ここまで登板数を伸ばした理由は、もちろん本人が公言している“投げたくて仕方ない体質”や、首脳陣からの厚い信頼、故障知らずの強い身体……。挙げればキリがないが、1番はその巧みな投球術にある。“神様、仏様、平井様”は一体何がすごいのか。対戦してきた右の強打者たちの証言を紹介する。
「真っ直ぐの力があるから、スライダーも生きるんだと感じます」と、平井の投球を語ってくれたのは、今季の対戦成績が8打数1安打だった日本ハム・大田泰示だ。「ただ横に曲がるんじゃなくて、真っ直ぐの軌道に見えてスライダー。(打者からは)真っ直ぐに見えるけど、曲がる。サイドスローで、ああいう球を投げられるのは少ない」。MAX150キロの直球とスライダーのコンビネーションが特長だという。「真ん中からインコースの球はシュートしてくる。(直球を)内角にもしっかり投げられるし、内角のスライダーも投げられるから、ストライクゾーンを大きく使った幅広い投球が出来る」と内角攻めに長けた巧みな投球術を証言した。
次の証言者はリーグを代表する右の強打者、楽天・浅村栄斗だ。昨年はチームメイトとしてリーグ優勝の喜びを分かち合ったが、今季は“強敵”として西武投手陣の前に立ちはだかった。シーズンを通じ、西武に対しては打率3割超え。今季放った33本塁打のうちの11本が西武からと圧倒的な相性の良さを誇ったが、平井には7打数無安打に終わった。浅村は「打ちづらいっす……」とかつての同僚右腕の攻略に苦しんだようだ。「良いピッチャーですよ。コントロールもいいし、独特な投げ方もあって打ちづらい。内角にもスライダーを投げられるし、外からボール球になるスライダーも投げ分けられる」と大田と同様に、ホームベースの横幅を広く使った投球を平井の特長のひとつに挙げた。
そんな平井の“大ファン”だというのが、ロッテの主砲・井上晴哉だ。「どれだけ(継投の)計算をしても、後ろで絶対に出てくる。辻監督が(継投を告げるために)立った瞬間に、『ここは平井でしょ』『平井って言ってくれ!』と思っちゃうんですよ」と毎回の対戦を心待ちにしている様子だ。
2人の初対戦は2018年7月9日。この時は3球三振で平井に軍配が上がっている。それから対戦を重ね、2018年は9打数2安打。2019年は7打数2安打。井上は「対戦しすぎて、もう面白いですよ。普通のピッチャーとは全然違う。腕の振りっぷりがよくて、真っ直ぐが来るか変化球が来るかわからない。真っ直ぐも球速があるから、どっちも待つのは絶対に無理。カウントごとに、一生懸命、相手の動きを読み取る。まあ、僕の場合は対戦しすぎて心理戦になってしまいますが」と読み合いの勝負を楽しんでいるようだ。