負傷したイチローの粋な計らいが話題に「彼の気が楽になるといいですよね」
交錯した相手のバーンズに仕掛けたいたずらとは…
マーリンズのイチロー外野手が21日(日本時間22日)、フロリダ州ジュピターで行われているスプリングトレーニングで負傷し、日米に速報ニュースが駆け巡った。フライ処理で声を掛け合う外野守備の練習中に、招待選手のブランドン・バーンズ外野手と接触。右膝の上部と腰を負傷した。メジャー生活17年間で一度しか故障者リスト(DL)入りしたことがない鉄人の負傷は大きな波紋を広げたが、傷心のバーンズにイチローが見せた粋な計らいが話題となっている。地元紙「オーランド・センチネル」が報じている。
守備練習でセンターに入ったイチローとライトに入ったバーンズは、右中間の打球を処理する際に交錯。バーンズは無傷だったが、イチローは痛みを訴えた。記事によれば、バーンズは「全く同じタイミングで、お互いが捕球するって叫んでしまったんだ」と振り返ったという。イチローがDL入りしたのは、2009年に第2回WBCへ出場した直後のこと。胃潰瘍を患い、シーズン開幕をDLで迎えたのが、メジャー17年で唯一の離脱だった。
これまで治療室に入ったのは、絆創膏を取りに行った時くらいで、実際に治療を受けたのは初めての経験だったとか。珍しい鉄人の故障にチームメイトは大騒ぎで、同僚のディー・ゴードンとマーティン・プラドは治療を受ける貴重なイチローの姿を、メディアばりに写真に収めようとしたが、背番号51は顔を覆ってしまったそうで失敗に終わったようだ。
一方、チームメートは“レジェンド”を負傷させたバーンズへのいたずらを大展開。バーンズのロッカーの荷物を全て片付けてしまい、イチローの直筆サインが入った「お前はクビだ!」と書かれた“解雇通告書”をゴードンが作成し、ロッカーに貼りつけておいたという。
ゴードンが提案した“バーンズいじり”に参加したのは、イチローの心遣いでもあったようだ。イチローは「これ(いたずら)で少しでも彼の気が楽になるといいですよね。だって、彼が申し訳ないと思っていることを分かっていますから」と通訳を介して話し、アクシデントとは言え、負傷の原因を作ってしまった若手の思い心中を慮ったという。そんな背番号51の粋な計らいに、バーンズは大感謝しているようだ。
いたずらとは言え、将来の殿堂入りが確実なイチローの直筆サイン入り解雇通告書は、同じものが2つとない貴重な“逸品”だ。バーンズは「これは最高だね。自分の部屋に飾ることにするよ」と話し、ベテランの心遣いが籠もったメモを大事に保管するとした。
自ら痛手を負いながらイチローが見せた粋な計らいを、バーンズは一生忘れることはないだろう。
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フルカウント編集部●文 text by Full-Count