果たして手書き謝罪文の効果は? Aロッドの巧妙な「戦略」に欠けているもの

手書き謝罪文は“賢い戦略”

 昨季1年を出場停止処分で過ごしたヤンキースのアレックス・ロドリゲスが、17日にファンに対して手書きの謝罪文を発表したことは、すでに日本でも話題になっていることだろう。

 禁止薬物使用関連としてはメジャー史上最長の出場停止処分から明けるのだから、キャンプインの際には地元ニューヨークのみならず全米から記者が押し寄せることは間違いない。記者会見なり囲み会見なり、何らかのメディア対応をした場合、おそらく記者から鋭い質問が矢継ぎ早に浴びせられるだろう。その時、ロドリゲス自身が落ち着いて大人の対応ができるかどうか。何度も突かれる禁止薬物使用の詳細について、ふてくされずに“逆ギレ”せずに回答できるか。おそらく無理だろう。そう考えた時に、キャンプインを目前にした今、ファンに宛てた謝罪文を発表したことは、非常によく練られた賢い作戦だと思う。

 手書きという体裁をとったことで、より真摯な気持ちがこもっている体になるし、「球団はヤンキースタジアムでの会見を提案してくれたが、次に本拠地に戻る時はピンストライプのユニフォームを身にまとった姿でいたい」と宣言することで、今季に懸ける思いを嫌みなく伝えることもできている。

「昨季を棒に振ったのもすべては自分の責任」「現時点で謝ろうが何を言おうがファンの大半に信じてもらえないのは仕方ない」と謙虚な姿勢をアピール。その上で「禊ぎを終えて、野球に専念する準備は整った」と、言外に「この謝罪文を出したのだから、キャンプが始まったら、この件には触れてくれるな」という牽制球を投げている。

 ロドリゲスの広報担当者は、よほどイメージコントロールに長けた人物なのだろう。メジャーリーグ機構、ヤンキース、スタインブレナー家、選手会、そしてファンに対して「I can only say I’m sorry(すみません、としか言いようがない)」と率直に伝えることで、質疑応答なくして正式な謝罪を済ませた、という事実を作った。

 あらゆる人物に謝罪を済ませたように見えるロドリゲスだが、実は忘れている人たちがいる。おそらく、本当は彼が一番謝罪しなければいけない人々、つまりチームメイトをはじめとする仲間のメジャーリーガーたちだ。実は、この点については18日付けのUSAトゥデイ紙でボブ・ナイチンゲール記者も触れている。

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