特大弾を打っても「本調子ではない」 分析のプロがDeNA助っ人を“不調”と断言する理由

DeNAのタイラー・オースティン【写真:荒川祐史】
DeNAのタイラー・オースティン【写真:荒川祐史】

巨人で20年以上スコアラーを務め、2009年WBCでも侍ジャパンチーフスコアラーだった三井康浩氏

■DeNA 6-0 巨人(18日・横浜)

 DeNAのタイラー・オースティン内野手が、18日の本拠・巨人戦で巨人先発の戸郷から右中間席へ特大の6号3ランを放った。2点リードの3回無死二、三塁から、22打席ぶりの一発。大きな当たりだったが、本調子とはまだ言い難いと元巨人チーフスコアラーだった三井康浩氏は分析した。相手打者を分析する時の観点からすると、まだ投手に分があると言う。分析のプロは一体、どこを見て判断しているのだろうか。

 三井氏は巨人で20年以上、スコアラーとして長嶋茂雄監督や原辰徳監督ら多くの指揮官に仕えた。スコアラー退任後は外国人の獲得調査などの編成にも携わった経歴を持つ。この日のオースティンの特大弾については「あの1球だけはバッチリと捉えられていたのでよかったですが、逆に言えば戸郷の出来がよくなかった。1打席目はファウルばかり。ちょっと前後の打席の内容が悪いですね」と言い切る。

 ストレートに振り遅れている印象がある。「インコースが上手いバッターですが、体が開いているから、インコースを捉えられていない。体の中でボールを捌けるようになるとミスショットはしなくなると思う」と指摘。しかし、問題なのは上半身ではないという。

「打つ時に下半身がずれていますね。前足がずれていると安定してきません。いい腕の使い方しようとするならば、しっかりと土台になるように下半身がどっしりしていないと、バットは出てこない」と現状の不安定ぶりだと、外の変化球などの揺さぶりに対応ができない。そう分析できるため、スコアラーとしては投手がコントロールミスさえしなければ、この打者には“打たれない”という判断となり、チーム内に共有される。インコースのストレートで見せながら、ファウルでカウントを稼ぎ、最後は外への変化球や、高低や奥行きを使った縦の変化球で打ち取ることができる。

「(オースティンは)アウトコースやインローのボール球に手が出ていたところを見ると、まだ自分のストライクゾーンができてない。ゾーンが広がっているのは、下半身がぶれている結果だと思うので、本調子ではないと思います」

 巨人バッテリーがオースティンに打たれたヒットはこの1本のみ。このことから見ると、戸郷の制球ミスが生んでしまった本塁打だった。スコアラーは試合だけでなく、練習の時からこのような視点で選手の状態や弱点を見つている。試合後は反省をしながら、次戦以降の対策を練っている。自軍の選手たちへいかに有益な情報を持っていけるか、目を凝らす戦いが、シーズンを通して行われている。

(楢崎豊 / Yutaka Narasaki)

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