「マシンガン打線の生みの親」の最大の悔い 横浜DeNAの筒香嘉智は球史に名を刻む打者になれるか
「一番悔いが残っているのは筒香ですよ、筒香」
横浜の「マシンガン打線」の生みの親である髙木由一氏(64)が26年の指導者人生で最も悔いを残していることがある。自身が横浜DeNAベイスターズに在籍中に筒香嘉智内野手(22)を大成させられなかったことである。
大洋ホエールズ時代から選手として16年、指導者として26年同じ球団に在籍してきた髙木氏は数々の名選手と出会ってきた。1997、98年と2年連続で首位打者を獲得した鈴木尚典を始め、その手で手掛けてきた選手も数多い。その中でも特に衝撃を受けたのが、横浜高校から09年のドラフト1位で入団してきた筒香だった。
「私の中でやり残したことは、いっぱいありますよ。あの選手をもっとこう指導すればよかったとか、もっと厳しくやればよかったかとかね。そりゃ、いっぱいある。その中で一番悔いが残っているのは、筒香ですよ、筒香。この選手だけは何とかしたかった。冗談抜きに。これだけのポテンシャルを持った選手にはそうお目にかかれないですからね。遠くに飛ばすだとか、パワーだとか、バットを振る能力には関しては、非常に長けている選手。それを一人前にできなかったというのは非常に悔いが残る。彼はできるはずなんですけど……」
昨季限りで42年間在籍した球団を去ることになった髙木氏はそう胸中を明かす。
横浜高で1年から4番を務めた逸材は、高校通算69本の本塁打を記録。入団1年目にはファームで26本塁打、88打点で2冠を達成している。だが、その後は思うような結果を残せず、入団3年目の12年シーズンは怪我で出遅れながら、自己最多の10本塁打を放ったものの、2割1分8厘と規定打席到達者の中で最下位に終わった。そして昨季、1軍での出場は23試合にとどまっている。
昨季2軍のチーフ打撃コーチとして筒香を指導してきた髙木氏は、筒香の問題点をこう指摘する。
「彼は長距離バッターじゃないですか。長距離バッターというのは、ポイントを少し前において、引っ張れるボール、左バッターだったら右方向に大きなボールを打とうとするもの。でも、彼はそういう打球を打たないんですよ。反対方向にばかり打つ。本人は反対方向に打てたら安心感があります、と言うけれど、チームが望んでいるのは2割5分でもいいからホームランを30本、40本打てるようなバッター。彼はそういうポテンシャルを持っているんだから、そうなってほしいという思いはありました」