Aロッド騒動から見えた、メジャーと薬物問題
徹底抗戦の構えを見せる、アレックス・ロドリゲス
今年のメジャーで最大のニュースとなったのは「薬物スキャンダル」だった。マイアミのクリニックが2009年から選手に禁止薬物を提供していたと地元メディアが報じ、大騒動へと発展した一連の問題だ。7月には計14人の選手に出場停止処分が科され、1つの区切りがついた。
11年にナ・リーグMVPに輝いたブルワーズのライアン・ブラウンは事実を認め、今季終了まで出場停止に。また、レンジャーズで主軸を任されるネルソン・クルーズは「言い訳をすることはできない。間違った判断をしてしまった。球団とチームメート、ファンの信用を取り戻したい」と涙ながらに謝罪し、ほかの選手も次々と処分を受け入れた。
そんな中、現役最高の実績と年俸を誇るA・ロドリゲスだけは徹底抗戦に出た。薬物使用の事実に加え、証拠隠滅を図ったことが悪質と判断され、最も重い211試合の出場停止処分を科されたが、これを不服として異議申し立てを行ったのだ。
股関節の手術で開幕前から離脱していたAロッドは、最終処分が出るまでは試合に出ることが可能となったため、まさに処分が発表された8月5日のホワイトソックス戦で戦列復帰。この絶妙なタイミングに注目が集まり、現場は騒然とした雰囲気に包まれた。
シカゴのUSセルラーフィールドには米メディアが集結。クラブハウスに約150人の報道陣が詰めかけ、選手の居場所がなくなるほどごった返した。ほとんどの選手が報道陣の目が届かない場所に隠れてしまったほどだ。禁止薬物の使用は許さないという全米中の声が騒ぎを大きくさせた。
記者会見を開いたAロッドは「この数ヶ月は人生で最もつらい時間だった」と時折、声を詰まらせながら話したが、汚れたスターへのファンの反応は厳しかった。試合が始まると、スタジアムは大ブーイングに包まれ、この日の「主役」に対して容赦なく「ステロイドコール」が響いた。デッドボールの時には大歓声が沸き起こるという異様な雰囲気だった。