川崎宗則はなぜこんなに愛されるのか? その秘密に迫る
イチローも驚く歓声の大きさ
その人気を知りたければ、1度、トロントに行ってみるといい。ブルージェイズの川崎宗則が、地元のファンからどんなに愛されているかが、すぐに分かる。
本拠地ロジャース・センターでファンから浴びる歓声はチーム一だ。そのボリュームは、2010年から2年連続で本塁打王に輝いたホセ・バティスタを遙かに上回る。ヒットを打とうものなら、球場内のボルテージは最高潮に達する。師弟関係で結ばれているヤンキースのイチローが「あれはジーターがニューヨークに帰ってきた時くらいの歓声だよね。信じられん。びっくりした」とチームメートのスーパースターに例えて表現したほどだ。
さらに、66番の背番号入りユニホームは、川崎が4月中旬にメジャー初昇格を果たすと、わずか1週間ほどでチームストアに並んだ。メジャーでは、ユニホームが売られている選手はごく一部。チームのスターが持っている「特権」なだけに、負傷したホセ・レイエスの穴を埋めるために昇格した川崎のものが作られたことだけで超異例と言える。
なぜ、瞬く間にこれほどの人気者になったのか。本人の言葉を聞くと、納得がいく。
「(ファンの声援は)本当にうれしいです。こっちにきて友達もいない中で、みんな友達になってくれて。チームメートもそうなんですけど、すごく感謝しているし、みんな優しくしてくれるので、ありがたいです。僕が愛されるより、僕が愛している。3倍くらい愛している」
そう。「愛」は一方通行ではないのだ。川崎自身がチームの力になろう、一部になろうと努力を続けている。地元TVに取り上げられれば、英会話の本や自ら記したメモ帳を片手に、必死に英語で自分の言いたいことを伝えようとする。そして、チーム内のかけ声である「ガーヒー!」という言葉(色んな人に聞いたが意味は不明)を連呼し、ほかの選手と盛り上がる。
「32歳で英語を勉強してるから、脳みそが固まってるんですよ。ちっちゃいとき勉強しておけばよかったって、後悔ばっかりですよ」と笑うが、その健気な姿が、またファンを引き付ける。