川崎宗則はなぜこんなに愛されるのか? その秘密に迫る

トロントでは、川崎のことを知らない人はほとんどいない

 もちろん、グラウンド内でも川崎は魅力を振りまいている。

 打率は9月6日時点で2割1分9厘。メジャーの内野手の中に入れば、守備力も決して上位にはランクしない。昇格直後には、地元記者からジョン・ギボンズ監督に「守備範囲が狭く、肩も決して強くない川崎をこのまま使い続けるのか?」と厳しい質問が飛んだこともある。ただ、それを帳消しにするだけの長所がある。

 打席では、出塁するためにすべての力を振り絞る。川崎にとって、それは別にヒットでなくてもいい。死球でも、その後に本塁まで生還すれば、「何とかして塁に出たかったから、本当によかった。とにかく点につながったのはよかった。デッドボールだったけど、うれしかった。得点に絡んだって事は最高です」と喜ぶ。

 守備でも、自分のできることだけを懸命にこなす。もちろん、走塁だって同じだ。「毎日、絶好調です。野球ですから、ヒットも楽しいですけど、それ以上に楽しいこともいっぱいありますよ」。その全身から、米国で野球をできるうれしさがあふれ出ている。ギボンズ監督も「彼はチームにパワーを与えてくれる」と言う。高校球児がそのまま大人になったような男だから、見守るファンは肩入れし、熱烈に後押しするのだ。

 メジャーとマイナーの行き来を2度繰り返した川崎は、8月14日に「再々昇格」した。その際、公式HPのニュース記事では、川崎の名前の前に必ず「ファンのお気に入りの」という一言が付けられていた。やはり、トロントに一度、行ってみてほしい。そして、道端で見知らぬ人に聞いてみてほしい。「カワサキを知っていますか?」と。ほとんどの人が「彼を知らない人はいない」と答えてくれるに違いない。

【了】

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