ヤンキースの“エース”黒田博樹 安定感を発揮できるワケ

黒田の柱となっている老獪さ

 柱となっているのは、やはり老獪さと言えるだろう。黒田が持ち味をより発揮するのは、同地区のチームとの試合。つまり、対戦回数が多い相手にこそ、つけ入る隙を与えない。

「分かっている(知っている)バッターがいるというのは、僕のピッチングスタイルからしたら攻めやすいというか、勝負しやすい。ただ、そうは言っても向こうは研究してくるわけなので、その上、上を行かなければいけない。6年もこっちでやっていればある程度のデータは出ていますし、そういうものから逃げられないので、常に自分が先に先に行かないといけないなと思っています」

 相手の狙いを見極め、読みや駆け引きで上回る。これこそが黒田の真骨頂だ。これまで対戦した打者1人1人に関して独自の分析をノートに記し、クラブハウスでは次の相手の映像と何時間も向き合う。

 そんな緻密さに、今季、開幕当初に女房役を務めていたフランシスコ・セルベリも「彼は打者全員に対して投球プランを持っている。これは驚くべきことだよ」と舌を巻く。しかも、その日の気候や球場、自身の調子によって、プランを変更する修正能力も持ち合わせる。数々の修羅場をくぐり、なおかつ頭が切れるからこそ出来る芸当だ。

 一方で、ベテランらしからぬ一面も、その投球を支える大きな土台となっている。38歳にして、向上心は尽きない。傲慢さのかけらもなく、成長するためには人のアドバイスも素直に聞き入れる。投球練習の時には、ラリー・ロスチャイルド投手コーチから身ぶり手ぶりを交えた指導を受けることも多々ある。これに真剣な表情でうなずき続ける黒田は、いい意味でベテランらしさを感じさせない。

「年齢はもう38歳ですけど、まだまだ気付くことはたくさんありますし、まだまだ自分のものにすることもたくさんある。日々、そういう繰り返しですね」と右腕は言う。

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