ヤンキースの“エース”黒田博樹 安定感を発揮できるワケ

あと数年はメジャーで出来るのではないか

 今季序盤の5月17日のオリオールズ戦では、通常よりも速度が遅く落差は小さいが、より低めにコントロールすることができるスプリットに試合前のブルペンで手応えを感じ、すぐに取り入れた。その成果が存分に出て、8回2安打無失点と快投。岩隈久志やダルビッシュ有など後輩の日本人投手と会えば、変化球の握りについて教えを請うこともあるという。とにかくどん欲に、しかも謙虚に自らを成長させている。

 38歳にして全盛期とも思わせるピッチングを続けるために、陰で相当な努力をしていることは想像に難くない。試合を見ていれば、肉体の衰えはないようにも見えるが、黒田は「結果的にはそうなっていますけど、やっている方はいっぱい、いっぱいですし、20代の頃に比べると、体力的というか、コンディションを整えるのも時間がかかるというか、難しさは感じています。(周りの人には)見えないだけで、見えないところでけっこう自分ではきつい思いをしているので」と笑う。

 そうは言いながらも、その努力を決して表には出さないところが、いかにも黒田らしい。「ユニホームを着てグラウンドに立てば、やっぱり年齢は関係なく、若い選手たちと戦っていかなければならないので、それは見せている場合じゃない」のだという。超名門球団で、チームメートや厳しい地元メディアからも一目置かれる理由がよく分かる。

 1年1年が勝負と考える右腕は今季、単年契約を結んでいる。ただ、これだけ計算できる投手を、ヤンキースはオフに手放すことは出来ないだろう。今年の活躍を見ていると、あと数年はメジャーで出来るのではないかと思ってしまう。

本人の頭の中に、常にプロの原点である広島への復帰があることは間違いない。ただ、義理堅く、男気のある右腕が、メジャーの猛者たちをねじ伏せていく姿を、もう少し見ていたい。これだけの進化を目の当たりにすると、黒田の完成形を見届けたくなるのだ。

【了】

RECOMMEND

KEYWORD

CATEGORY