マートンと相川の乱闘に見る正捕手のあるべき姿
キャッチャーへのタックルは「共通認識」
事件は9月14日、神宮球場でのヤクルト―阪神戦で起きた。
6回2死二塁、阪神の二塁走者・マートンが福留孝介のセンター前ヒットで本塁を狙った。185センチ、99キロの巨体が、ヤクルト捕手の相川亮二を目がけて猛突進する。本塁クロスプレーの結果はアウト。だが、殺人的なタックルを受けた相川は収まらなかった。激高しながらマートンに詰め寄ると、両軍が入り乱れる騒ぎとなった。
両者が退場となった試合後、相川は「自分がエキサイトしただけだった」と反省し、マートンも「けがをさせるためにやったわけではない」と自然の流れの中で起きたプレーだったことを強調した。翌日のコミッショナー裁定ではともに厳重注意と制裁金15万円、さらに今季2度目の退場処分となったマートンには1試合の出場停止が科された。
問題のプレーは激しい体当たりではあったものの、捕手はベースの上に立っていたために、マートンの走塁を「仕方がない」とする見方も強い。一方で処分は、マートンの方が重いものだった。このプレーを見たある球団の外国人選手は「どうしてマートンの方が悪者になっているのかがわからない。MLBでは当たり前のプレーだ。日本にタックルをしてはいけないという規則があるなら、納得はいくけれどね」と首を傾げている。
米国では、明らかにタイミングがアウトの状況でもタックルにいくシーンがよく見られる。結果的にボールがこぼれるケースもあるからだ。日本ではメジャーほどあからさまではないにしても、外国人選手が日本の捕手を突き飛ばすことは決して珍しくない。つまり、そのような行為は誰もが「共通認識」として持っていなくてはならないとも言える。
ベテランである相川も、その意識はあったはず。なのに、なぜあそこまで激高してしまったのか。それには伏線があった。