限られた戦力で最激戦区のア・リーグ東地区を席巻するレイズ 名将・マドンの手腕とは?

マドンの松井に対する思い

「彼がアメリカに来てから成し遂げたことは、殿堂入りにも値する能力があってのことだ。もし、アメリカでプロのキャリアを始めていたら、銅像を立てるかどうかの話し合いになるよう選手だった。彼は大舞台に強い選手だと思うし、ここ一番に強い選手。彼は常に自分自身をコントロールできる人間だったし、対戦相手としては、得点圏に走者を置いた状況では迎えたくないバッターだった。守備でも攻撃でも、やるべきことが分かっている安定した選手で、監督として彼がチームにいたことは、私にとっても得がたい経験だった。彼はとても責任感が強く、真っ当で正直な人間だ。彼と共有できた時間は、とても楽しかった。私は、彼に大いなる敬意を抱いている。ちょっとじゃない。大いなる敬意だ。私は今でも、彼の中に“生命”を感じているし、彼が終わったとは思わない。私はそのことも彼に話したんだ」

 そして、最後に質問が途切れると日本メディアに対してこう話しかけた。

「もう終わりでいいのかい? これが最後になるかもしれない。だから何でも聞いてほしい。みなさんと一緒に仕事をできて本当に楽しかった。さみしくなる」

 マドンという父親の元で、子供たちが思う存分に野球を楽しんでいる。レイズを見ているとそんな印象を受ける。だから、ここぞという場面で1つにまとまり、落とせないゲームはチーム一丸でものにする。昨年は、得点数より失点数が多くても勝ち越していた時期があったなど、データでは表せない強さがあるのだ。

 実は、チームには勝利の直後の恒例行事がある。クラブハウスを真っ暗にすると、ミラーボールのような照明器具を持ち込み、音楽を大音量で流して、どんちゃん騒ぎをするのだ。クラブハウス内部は、まるで「クラブ」のようになる。ミラーボールは敵地にも持ち運ばれ、時には、移動の飛行機の中でも騒ぎが続くこともあるという。チームの一体感は、こんなところから生まれている。

 プライス、マット・ムーア、アレックス・カッブ、クリス・アーチャーら、今季の先発陣は例年以上に充実している。プレーオフに進出すれば、ますます期待は高まるだろう。岩村明憲を擁した2008年はワールドシリーズまで進みながら、フィリーズに敗れた。初の世界一へ、「マドン・レイズ」には5年前よりも大きなチャンスが訪れている。

【了】

フルカウント編集部●文 text by Full-Count

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