【イチロー4000本安打の価値】イチローの言霊(前編)

1本のヒットを打つことの難しさ

――1本のヒットを打つことの難しさについてはどう考える?

「プロの世界でやっていると、これはどの世界でも同じだと思うんですけど、結局、記憶に残っているのはうまくいったことでなく、うまくいかなかったことなんですよね。その記憶が強く残るからストレスを抱えるわけですよね。アマチュアで楽しく野球をやっていれば、いいことばっかり残る。楽しいだけだと思うんですよね。皆さんも同じだと思うんですよね。そのストレスを抱えた中で瞬間的に喜びが訪れる。で、はかなく消えていく。それがプロの世界の醍醐味であると思うんですけど、もっと楽しい記憶が残ったらいいのになと思っていますけど、きっとないんだろうなと思います」

――積み重ねとしての4000本ということについては?

「4000を打つには3999が必要なわけで、僕にとっては4000本目のヒットもそれ以外のヒットも同じように大切なものであると言えます」

――これまでフィールドに立つまでの準備を大切にしてきた。そのことに対する思いは?

「それは当たり前のことですよね。そこにフォーカスが行くこと自体、おかしいと思いますけど。それがあまりにもないということじゃないですか。それを証明しているんじゃないですか、それが」

――レフトへのきれいなヒットで決めた。

「1打席目が一番、奇麗だなと思っていた。また(相手投手のディッキーは)ややこしいピッチャーですから。元チームメイトなんですけど、まあ、ややこしかったですよ。どんなヒットも僕らしくなるとは思っていた。レフトスタンドへのホームラン以外は僕らしいとは思っていましたけれど、こうやってみなさんが注目してくれている中で内野安打とかだと、また文句言う人もいるし。ま、良かったと思います」

――まだ通過点だと思うが、これから見据えていくものは?

「これからも失敗をいっぱい重ねていって、たまにうまくいってという繰り返しだと思うんですよね。バッティングとは何か、野球とは何か、ということをほんの少しでも知ることが出来る瞬間というのは、きっとうまくいかなかった時間と自分はどう対峙するかによるものだと思うので。なかなかうまくいかないことと向き合うことはしんどいですけれど、これからもそれを続けていくということだと思います」

【中編に続く】

フルカウント編集部●文 text by Full-Count

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