「驚異のルーキー」ソニー・グレイがポストシーズンを沸かせる
ソニー・グレイって誰?
またも「驚異のルーキー」がポストシーズンを沸かせた。地区シリーズ第2戦でアスレチックスのソニー・グレイが8回4安打無失点とタイガースの強力打線を抑え込み、チームのサヨナラ勝ちを呼び込んだ。球界を代表する右腕のジャスティン・バーランダーを相手に1歩も引かず、これで1勝1敗のタイに。前日にパイレーツを救ったゲリット・コールに続き、今季デビューの右腕が躍動した一戦を米全国紙USAトゥデーは「ソニー・グレイって誰?」と題して大きく報じた。
90マイル台中盤の速球に落差のある変化球を効果的に織り交ぜた。オースティン・ジャクソン、トリー・ハンター、ミゲル・カブレラ、プリンス・フィルダー、ビクター・マルティネス。相手は1番から5番に強打者が並ぶ驚異の打線だが、この5人との対戦ではカブレラに1安打を許したのみ。タイガースの名将ジムー・リーランドは「ソニー・グレイについて最も大きな問題だったのは、我々が彼についてテレビで見た以外はあまり知らなかったことだ。それに彼は“クソ”よかったよ」と脱帽した。
グレイは、コールが全体1位で指名された2011年のドラフト1巡目(全体18位)でアスレチックスに入団。その年にいきなり2Aミッドランドで5試合20イニングに登板し、防御率0・45と抜群の成績を残した。しかし、2012年は同じ2Aですべて先発として26試合に登板して防御率4・14と低迷。トッププロスペクト(有望選手)のリストから外れ、コールとは違って注目の存在ではなくなっていた。
ところが、今季は3Aで20試合に先発して10勝7敗、防御率3・42。打者優位とされるパシフィックコースト・リーグでイニング数と同じ118三振を奪い、7月にメジャー初昇格を果たした。2度のリリーフ登板の後に8月から先発ローテに定着し、5勝3敗、防御率2・67と活躍して地区優勝に貢献。同紙では、こういった経歴も詳しく紹介している。それだけ、全国的には無名の投手の快投劇だったわけだ
ちなみに、グレイは高校時代にアメリカンフットボールでテネシー州2連覇を果たしたチームのクオーターバックだったという。抜群の運動神経を生かしたフィールディングにも定評があり、投手としての総合力は高い。
この日の最強右腕と無名新人のしびれる投手戦に対しては、今ポストシーズンで最高の試合との声が早くも出ている。劣勢と見られていたアスレチックスは、これで勢いを取り戻して敵地に乗り込める。コール、そしてグレイ。怖いもの知らずのルーキーが、波乱を呼ぶかもしれない。
【了】
フルカウント編集部●文 text by Full-Count